軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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牙狼の迷宮を討伐した後、迷宮管理棟で三時間ほど捉まり、迷宮内の情報提供や持ち帰った 大魔力石(ダンジョンコア) や収穫祭への参加要請、迷宮討伐の褒賞などについて話し合った。

特に地下二十一階以降の大雨が降るフィールドダンジョンについては、踏破方法や次の階層へ降る階段の位置など詳しい情報提供を求められたが、階段の位置はまだしも踏破方法に関しては伏せさせてもらった。

とは言え、装甲歩兵輸送車を使用し踏破したなどと言っても、何も理解できないだろうが。

そして、夕暮れを目前に控えた東の森の林道で、それはやってきた。

馬鎧を着せた完全武装の黒馬に跨る黒騎士、まだこちらとは距離があるが、両手に巨大な漆黒の槍斧を持ち、こちらへと全力で駆けてくる。

その速度が更に上がる。不自然なほどの加速に加え、槍斧の穂先をこちらへ向け、人馬一体のランスチャージが迫ってきた。

その進路から僅かに横にずれてみると、黒騎士もまた軌道を僅かに修正し、間違いなく俺に向けて突撃をしてきている。

大きい――迫り来る黒馬は普通の馬に比べて随分と大きな馬だった。俺よりも高い位置に頭がある……そしてその上に跨る黒騎士もまた巨躯であり、兜も含め黒い全身鎧に包まれていた。

黒騎士のランスチャージを引きつけ、軌道修正がきかないであろう距離でサイドへスライドジャンプし、その突撃を躱した。交差する瞬間、黒騎士のフルフェイスの兜の奥に光る目と、視線が合った気がした。

黒騎士の全身鎧は、巨大なショルダーアーマーと兜に、禍々しいほどに突き出る角の意匠が付けられ、全体的な装飾も、どこか魔獣を模したような獣風の鎧だった。胸には魔石だろうか? 土色に光る大きな宝石が付いているのが見えた。

俺がいた場所を突き抜けていく黒騎士から視線を外さず、オーバーコートからスミス&ウェッソン E&E トマホークを両手に握る。

黒騎士も駆け抜けていくことなく、方向転換し再び俺と向かい合った。

「一応、聞いておこう。人間違いではないのだな?」

「”黒面のシャフト”、我らの覇道に落ちる小石よ、マスターの命により貴様を粉砕する」

「 覇王樹(サボテン) か……わざわざ俺が迷宮から出てくるのを待っていたのか。いいだろう――お前達の覇道、横切らせてもらう」

林道で向かい合い、トマホークを握る手に力が入る。向こうも完全に殺る気できている。あの巨躯から繰り出される槍斧の一撃は、どれほどの威力を持つか想像がつかない。

それに、気のせいだろうか? 黒騎士だけでなく、跨る黒馬までもが荒い息を吐き、闘気を漂わせるかのような風格をだしていた。

黒騎士が黒馬の腹を蹴る。

それに従うように、黒馬は一歩踏み出し、次の瞬間には俺の視界から消え――

「なっ!」

黒馬と黒騎士は、その場から俺の真上へと飛び上がっていた。黒馬の前足が俺の頭上へと降ってくる。そのあまりの機敏な動きに一瞬気をとられたが、すぐに後退し前足を躱した。

林道に叩きつけられる前足が、腹に響く程の重厚な打撃音と共に地割れを起こすほどの衝撃を林道に与えていた。

だが、それに気をとられている訳にはいかない、黒騎士の槍斧が降ってくる。

二本のトマホークを頭上で交差させ、右手一本で振り下ろされる巨大な槍斧を受け止めた――までは良かったが、その衝撃は想像以上に強く、重く、俺の両足が林道を砕き、足首まで埋まる。

「受け止めるか、ならばこれはどうだ」

黒騎士の左腕が腰に引かれ、俺には届かない距離で正拳突きのように振りぬかれた。

「『剛波翔』!」

俺には全く届かない距離で振りぬかれたはずの拳が、俺の胸部に直撃する。正確には、振りぬくと同時に発動したスキルによって、突きの威力を乗せた衝撃波が俺の胸を打ちぬいた。

胸を打ち抜かれた衝撃に、言葉にならない声を吐いた。足が林道に埋まっていた為、力を逃がす事もできずに、その威力をすべてもらってしまった。

胸を打つ衝撃が足にまで走り、そのまま仰向けに倒れこんでしまった。足首は土中から抜けたが、この態勢は不味い――視界に映るのは後ろ足だけで立ち、前足を大きく振り上げる黒馬の姿。

再び振り下ろされる前足を横へ転がるようにして避け、すぐに立ちあがり更に後方へとスライドジャンプして距離をとった。

まだ体が痺れる感覚がする。何度もトマホークのグリップを握る手に力を入れ、痺れが少しでも引くのを待つ。しかし、黒騎士はそれを許してくれそうもない。

距離が開いてことで、再び穂先をこちらへ向け、ランスチャージの態勢に入っていく。

軽く周囲を確認すると、いつのまにか黒騎士が東の森を背に、俺は開けた街道を背にしていた。せめて林の中か、更に進んだ森に引き込めれば、馬の運動性能は落ちるだろうが。

今更林の中へ進むのを許してはくれないだろう、ならば……。

黒騎士はランスチャージの態勢に入り、『ダッシュ』と思われる不自然な加速で走り始める。それを確認し、更に後方へとスライドジャンプし、腰のポーチからM84フラッシュバンを取り出し、突撃してくる進路に放り投げる。

黒騎士は俺の投げたM84に気付いているようだが、意に介さず突き進んでくる。

そして爆音と閃光が轟く。

「むぅ――!」

黒騎士は突撃の勢いそのままに前方に転げていく黒馬から飛ぶように離れ、なんとか着地こそしたが、足が覚束ないようでふらふらと後ろへと後ずさっている。

その頭部に、二本のトマホークが直撃した。しかし、その直撃音は甲高い金属に弾かれるような音だったが――。

仰向けに倒れていく黒騎士を横目に、M84の効果を目の前で受けた黒馬へM67破砕手榴弾を転がし、まずは厄介な足を潰した。

オーバーコートに手を入れ、残り二本のトマホークを握る。頭部へ直撃させたトマホークの音……単純な打撃ダメージしか与えていないだろう。パワードスーツにアシストされた投擲で破れない金属鎧の装甲――腰に挿すウェルロッドver.VMBの9×19mmパラベラム弾でも貫通はしないかもしれない。

となると、背に隠すAS_VALの9×39mm弾がどこまで通用するか――そこが一つのキーポイントだろう。

まずは……ポーチに残るもう一つのM67破砕手榴弾を、倒れる黒騎士の腹に投げる。

ピンを抜き、放物線を描くように投げたその先で、黒騎士の上半身が少し起き上がり、その黒い兜の奥の目がこちらを見ていた。

黒騎士の胸に光る土色の宝石――いや、魔石が光る。呼応するように黒い全身鎧から黒い粒子が浮かび上がり、一瞬で収束していく。

俺の投げたM67破砕手榴弾が黒騎士の眼前で炸裂した。爆音と黒騎士に直撃する多数の連続した金属音、破砕手榴弾の中に詰め込まれた破片が黒騎士を叩いているのだが……。

「効かないか――」

トマホークが直撃したはずの兜にも、目の前でM67破砕手榴弾が炸裂したはずの全身鎧にも、ともに傷一つ付いていないように見える。

立ち上がる黒騎士を見ながら、次の手を考えていくが……手持ちの武装では厳しいかもしれない……。装備の換装を行ないたいが、一瞬で行えるわけではない、その隙を黒騎士が見逃すとは思えない。

こちらを警戒しながらも完全に立ち上がった黒騎士が、一歩、また一歩と前進してくる。その途中で、まだ息はあるが、両足をぐちゃぐちゃにされた黒馬の横で立ち止まった。

そして、振り下ろされる槍斧によって黒馬の首が断たれ、絶命した。

「どうやら、とるべき仇が増えたようだな、”黒面のシャフト”よ」

「貴様は一緒に逝けなかったようだな。その鎧、随分と堅いようだが馬には作ってやらなかったのか」

「残念ながらな……馬用の 魔法防具(マジックアーマー) なぞ聞いた事もない」

「魔法防具――か」

「”黒面のシャフト”よ、貴様はこの魔鎧” 混沌の大地(テロカオッソ) ”の護りを突破できるかな?」

足は潰した。しかし、どうやらもっと厄介なのは、黒騎士の魔鎧だったようだ……。紅く燃える空の下で、闇ギルド”覇王樹”の刺客との第二ラウンドが始まる。