軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第266話 エル「無理無理」

「いやー、よく来てくれたな。本当はこっちから訪ねるのが筋なのにすまない」

ゲオルクが謝ってくる。

「いや、鍛冶師が忙しいのはわかってるし、これだけの人間の指導をしていれば時間が取れないのはわかる。そんなに遠くないし、俺達もこういうところに来たことがなかったから勉強になる」

「そうかぁ? お前、ジークだっけ? 王都のエリート錬金術師」

こいつも新聞を読んでるし。

「王都から来たのは確かだな」

「ふーん……いや、すまない。お前の言う通りでちょっと手が離せなくてな。それと昨日はこいつを役所に連れていってくれて助かった」

ゲオルクがディルクの背中をバシバシと叩く。

「いや、こちらにも関係することだ。やはり鉄と銅が不足しているのか?」

「ああ。今はまだストックがあるが、それがなくなったら厳しい。あちこちから受注が来ているのにまったく対応できなくなる。ウチが廃業になってしまうな」

そこまでいったら役所が動くから廃業にはならないと思うが、かなりの赤字が出るだろうな。

「役所が民間のアトリエに声をかけるとは言っていたが……」

「無理だ。あいつらは聞きやしないし、何よりももうほぼ終わって、すでにインゴットは別の町らしいぜ」

あー……インゴットは簡単だし、さっさと納品してしまったのか。

だからルーベルトが言い淀んでいたんだ。

「それは厳しいな」

「ああ。協会でなんとかならんか?」

なるわけないだろ。

ウチを何だと思っているんだ。

そっちとは何の関係もない錬金術師協会だぞ。

「今朝、ウチのトップに連絡したが、他所の町でも似たようなことが起きている。そっちもだろうが、協会も鉄や銅がなくなるのはマズいし、問題になっている」

「他所の町もなのかよ……チッ! 戦争か!」

さすがにわかるらしい。

「それっぽいな」

「ハァァ……さっさと終われよ」

皆、そう思うが、こちらは攻められている側だし、戦わないと侵略を受けるから軍も必死なんだがな。

まあ、普通に暮らしている庶民にはわからんだろうし、ましてや、ここは戦地から離れている南部の平和な辺境の町だ。

「そこは何とも……それで仕事は?」

「ああ。ちょっとこっちに来てくれ……お前ら、サボるなよ!」

「「「うーっす!!」」」

すげー体育会系だな。

こんなところで働くなんて無理、無理。

ゲオルクが建物を出て、通りの奥に進んでいったのでついていく。

すると、通りの奥が広場になっており、フライパンや剣などの廃品が山になっていた。

「ここは?」

「見ての通り、ゴミの山だ。ウチは物を作るが、それと同時に廃品を回収している。修理したり、溶かしたりして再利用するためだ」

へー……まさかとは思うが……

「これをどうするんだ?」

「現状、足りていないのは鉄と銅。特に鉄は死活問題になる。そう考えた時にここに鉄が大量にあることに気付いた。戦争が原因と言われると黙るしかないし、こちらでどうにかしなければならない」

あ、予想が当たったっぽい。

「まさかと思うが、俺達にこの山から鉄を抽出しろってか?」

「それが頼みたい仕事になる。俺達も溶かすことはできるが、この山にあるものは純粋な鉄を使ったものが少ない。何かしらのコーティングがしてあるし、鉄との混合物もある。錬金術はそういう混合物の分解や抽出ができると聞いたことがある」

できるな。

「この山をか?」

「できる範囲でいいんだ。さすがにお前達にはお前達の仕事があるだろうし、人数が少ないのは百も承知している。俺達もすがる思いでこの仕事を頼みたいんだ」

俺達も?

「この山はゲオルクのところの鍛冶屋だけじゃないのか?」

「さすがにウチだけでこれだけのものは集まらん。ここは共同の置き場なんだ。昨晩、組合で話し合いをして、まとめて錬金術師協会に頼むことに決めた」

一応、組合はあるのか。

「ウチか? 民間は?」

「あいつらに頼むと、高額になる。それとわかっていると思うが、俺達は錬金術師が嫌いだ。だからあいつらに頼むことに多くの反対が出た」

まあ、高くなるのはわかる。

足元を見てくるのが民間だし。

「いや、俺達も錬金術師だぞ」

「協会は別と考えた。お前達が少人数で頑張っていることも知っているし、多くの者が新聞を読んでお前が町のために尽くしてくれているのも知っている。それにお前達はキルシュの薬屋を助けていただろう? それも皆が知っているし、やはり公的機関になら頼んでも良いんじゃないかという結論になった」

おー……マルティナとギーゼラさんというストレス案件が協会の評判アップにちゃんと繋がっていたのか。

マルティナが実技試験に来たら鼻で笑うのをやめようと思う。

ちゃんと評価して、落としてやろう。

「仕事は大歓迎だが……ちょっと相談させてくれ」

「ん? ああ」

俺達はゲオルクから距離を取り、顔を合わせる。

「どうする?」

「受けた方が良いと思います。皆さん、困っているようですし」

「私も。せっかく上がった評判を逃がしたらダメだよ」

「断ったら確実に関係性にヒビが入るわよ。今後のことを考えても協会は頑張ったっていう評価にしておいた方が良いわ」

確かにな。

俺もそう思う。

「混合物の分解や抽出はできるか?」

「学校で習いました」

「欲しいのは鉄でしょ? だったらできる」

「私もできると思うわ」

混合物の分解や抽出は試験にも役立つし、良い勉強にもなるか。

「わかった。受けよう」

頷くと、3人も頷いたのでゲオルクのところに戻る。

「相談は終わったか?」

「ああ。依頼料はいくらだ?」

「逆に聞きたいんだが、相場はいくらだ?」

知らねーのかよ。

そりゃ民間に頼めんわ。

民間相手にその質問をしたらボラれるぞ。

「1キロ 1万エルってところだ」

「そんなものか?」

「物はそっちのものだし、鉄を取り出すだけならそんなところだ。あ、でも、これらを支部に運ぶのは頼むぞ」

空間魔法も魔法のカバンもあるが、さすがに量が多い。

それにこの山から廃品を取ると、崩れてきそうで怖い。

「わかった。どれくらいできそうだ?」

「俺達も他の仕事があるからな……」

うーん……すごい量だな……

さすがに俺達4人では厳しい……

「全部は無理か? いっそ処分したいと思っているんだが」

その気持ちはわかる。

「本部に掛け合ってみる。できるだけのことはしよう」

「頼む」

マルティナでも呼ぶかー……

あいつでも鉄の抽出くらいなら……あ、無理そうだ。