軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第265話 聖女エーリカ

電話が終わったので席に戻り、コーヒーを飲むと、ちょっと考えてみる。

「ジークくーん、3日前?」

あ、忘れてた。

「ああ。3日前だそうだ。だから俺はお前達より2日前にここを出る」

「一緒に行かなくて大丈夫? 寂しくない?」

なんでだよ。

「ヘレンがいる」

よしよし。

「そっかー。じゃあ、そんな感じでホテルを取っておくよ」

「頼むわ。多分、今回は仕事もないと思うし、長々といることはないと思う」

うんうん。

「なんか長々といることになりそうですね……」

「なんとなく、そうなっちゃいそうよね……」

まあな……というか、レオノーラをレストランに連れていかないといけないし、ちょっと休んでもいいかもしれないな……

「レオノーラ、とりあえず、泊まり始めはそこだが、どのくらい泊まるかは未定だ。最短でも試験の翌日までは泊まろう」

「わかったー。ホテルの人に言っておくよ」

その後、少し考えをまとめると、物を作っていく。

「ジークさん、何を作っておられるんですか?」

エーリカが聞いてきた。

「ちょっとな……」

「んー……ん? ジークさん、ディルクさんですよ」

エーリカがそう言って、受付の方を見たので俺も見てみると、確かに昨日のディルクがいた。

「何だろ……」

立ち上がり、受付に向かう。

「こんちわーっす」

「ああ。おはよう。どうした?」

「実はあれから戻って、親方に報告したんっすよ。そしたら親方が協会に仕事を頼みたいそうです」

仕事?

「何だ?」

「詳しいことを話したいから来てほしいそうです。実は親方は火を見ないといけないからちょっと外せないっすよ。時間がある時で構わないから来てくれって」

鍛冶屋も大変そうだしな。

「俺達が行ってもいいもんか?」

「そりゃ呼んでるんですから来てくださいよ。せっかくだし、見学でもしてください」

ふーん……そんなに錬金術師に対する嫌悪感がないのか?

「ちょっと待ってろ」

ディルクを待たせると、共同アトリエに戻った。

「何かありました?」

エーリカが聞いてくる。

「鍛冶屋が仕事を頼みたいらしい」

「鍛冶屋ですか? 今までそんな仕事はなかったんですが……」

エーリカがこの支部に来てから一度もないわけだ。

まあ、鍛冶屋が仕事を回してくることなんてないしな。

「鉱石不足関係だと思う。それで鍛冶屋に来ないかって言っているが、どうする? 俺1人でもいいが」

「あ、私も行きますよー」

「私も、私もー」

「じゃあ、せっかくだし、私も……」

全員ね。

「じゃあ、行くか」

俺達は支部長に一声かけると、受付に向かう。

「ディルク、今から行こう。どういう仕事かわからんが、話を聞いてみる」

「あざっす。じゃあ、案内します」

俺達は支部を出ると、ディルクを先頭に歩いていく。

「鍛冶屋ってどこにあるんだ?」

「町の西っすよ。山の方です。あの辺に鍛冶屋が固まっているんですよ」

鉱山が近いからか。

「エーリカ、知ってるか?」

「子供の頃に何回か行ったことありますよ。お父さんについていった感じです」

お父さんが船大工だからか。

俺達が歩いていくと、徐々に町の雰囲気が変わり始め、住宅が少なくなった。

代わりに装飾店や武器や防具を売っている店がちらほら見える。

「知らなかったが、リートはこういう一面もあるんだな」

立派な職人街だ。

「海だけじゃなく、鉱物が採れる山もありますからね」

「へー……」

というか、鉱物屋もチラホラあるな。

いつも利用している支部近くにあるあそこだけじゃなかったのか。

知らなかった。

もしかしたら出遅れたと思っていたが、さがせばまだ鉄鉱石や銅鉱石があったかもしれない。

結果的には良かったが……

「こっちっす」

ディルクが右に曲がったのでついていく。

すると、心なしか気温が上がったような気がした。

そして、そのまま進んでいくのだが、建物ではチラホラと火を焚いている窯が見えるし、熱した鉄を叩いている音が聞こえてくる。

「なんかすごいねー。アデーレ、ビビってる?」

レオノーラがにやにやしながらアデーレの腕をつつく。

「なんでよ」

「火が怖いんでしょ」

「さすがに距離があれば大丈夫よ」

アデーレがレオノーラの頬をぎゅーっと突き返した。

「ここっすね」

ディルクが周りよりひときわ大きい平屋の建物の中で立ち止まった。

扉もない倉庫のような建物なので中が見えているが、中は鍛冶場であり、多くの鍛冶師と共に窯があってちょっと壮観だった。

さらにはカンカンと鉄を叩く音、怒鳴り声、火による熱気が暑苦しさを感じる。

「すごいな」

「ですねー」

「とても私達が働けそうにない職場だ」

「1日も持たないわね」

多分、俺もそう……

「ははっ、錬金術師さんはキラキラしてますもんね……親方ー!」

ディルクが呼ぶと、若い鍛冶師の指導をしている筋肉隆々のおっさんがこちらを向いた。

顔も怖く、いかにも強そうな人だ。

そんな親方は若い鍛冶師に一言二言告げると、こちらにやってくる。

「錬金術師協会の連中か?」

「ええ。皆さんで来られました」

「そうか……俺はこの鍛冶場を取り仕切っているゲオルクだ」

親方がそう言って手を伸ばしてきたので握手する。

手の大きさも厚みも俺とは段違いだ。

「錬金術師協会リート支部のジークです。こちらはエーリカ、レオノーラ、アデーレです」

紹介していくと、3人がおずおずと頭を下げた。

「んー? エーリカ? どっかで見たことあると思ったらモーリッツのところのチビか?」

ゲオルクがエーリカを見る。

「あ、父ですね。子供の頃に何回か父に連れられて、ここに来ました」

「やっぱりか! あの時の子供が大きくなったんだな! 美人に育ってるし、錬金術師協会か! モーリッツも鼻高々だろうな!」

ゲオルクががははと笑う。

「そんなことないですよー」

エーリカがえへへと笑う。

なんか空気が明らかに和らいだし、さすがはエーリカだと思った。