軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第263話 原因

「おーい、お前らー」

ん? 支部長だ。

「どうされました? もう帰るんですか?」

「いや、まだ14時だろ」

下手をすると、午前中で帰るのがあなたです。

「何かあったんですか?」

「例の鉱石不足の件だ。町で聞いてもたいした情報が入らなかったから王都にいる昔の知り合いに聞いてみた」

軍の関係者だろうな。

「原因がわかったんですか?」

「ああ。何と言うか……ジーンの町が各町に材料を寄こせと言っているらしい。飛空艇や武器なんかの大量生産を始めた」

ジーンって……

「王妃様案件ですか……」

ウチの支部の錬金術師を引き抜き、次は材料かい……

「ああ。北の戦地での資材不足を補うために輸送用の飛空艇製作の受注案件をジーン支部が取ったらしい」

「王都の本部は?」

普通、あそこだろ。

「その辺はまあ……」

口に出してはいけないやつね。

談合というか、王妃様の鶴の一声だ。

「王妃様は何をしているんですか……というか、陛下」

「ここには俺達しかいないし、お前らも誰にも言うなよ。王妃様は何も考えていない」

そうなんだ……

「じゃあ、王妃様のご実家ですか?」

「ああ。バルシュミーデ家だな」

知らねー。

「知ってるか?」

レオノーラとアデーレに聞く。

「もちろん。領地貴族としては最大だね」

「昔から強い家で貴族の力が落ちつつあると言われている昨今でも多大な影響力がある家よ」

なるほどねー。

「戦争は儲かると言いますが、見事に便乗しているのがそこの家なわけですね」

「ああ」

支部長が頷いた。

「支部長の言う通り、ここに俺達しかいませんし、誰にも言わないでほしいんですが、戦争を始めたのも、長引いているのも、その家のせいだったりしません?」

「何とも言えんな。ただ、その可能性がないとも言い切れん」

うーん……アデーレの爺さんに連絡するのは嫌だし、本部長に聞いてみるか?

「リートはどうするんですかね? 役所のルーベルトは歯切れが悪い言い方をしてましたよ」

「現在は戦争中だし、一応は国全体に国家総動員法が出ている。はっきり言えば、正しいのはジーンだ」

この国の国家総動員法は戦争なんかの緊急時に国全体でそれに当たるという法律であり、現状で言えば、戦争への対処が優先される。

つまり鉱石の徴収も正当なのだ。

「まあ、戦争とは縁のない地ですし、国全体の問題だから我慢しろと言われればそうですね」

ただ、ジーンはやりすぎだし、目的も国のためというより、自分らのためっていうのがあからさまなんだよな。

大丈夫かね?

ヘイトを買いすぎるとロクなことにならないぞ。

俺が言うんだから間違いない。

「そうなるな。とはいえ、そんなことを役所や町長が言葉には出しにくい」

住民からの不満が出るからな。

リート住民にしたら平和そのもので関係ないって思うし。

実際、俺もそう思っている。

「支部長はこの戦争がどういう方向に行くと思っています?」

「適度なところで停戦だ。冬を越すことはないだろう。ウチも向こうも厳しい」

俺もそう思うし、そういうことをアデーレの爺さんに言った。

「それまでの我慢ですかね?」

「どうかな……」

んー?

「何かありますか?」

「お前のところの師匠が黙っているのかってところだ。クラウディア・ツェッテルは先のことで魔術師協会も手中に収め、完全な国の重鎮になっている。錬金術師協会でも人手不足だし、ここに材料不足が加われば、動くと思う」

ウチの師匠は完全に政治家になっちゃったな……

そのうち、宰相にでもなっちゃうんじゃない?

「ウチの師匠対バルシュミーデ家ってことですか?」

「そうなるんじゃないかと思っている」

「陛下はどうするんですかね?」

「無視だろう。どちらも国の重鎮だし、肩入れはできん」

陛下も判断が難しい立場か……

「バルシュミーデ家が潰れるようなことになったら本格的に貴族も終わりかなー?」

「王都貴族はクリスさんのプレヒト家を中心にほぼ本部長に従うでしょうしね」

貴族令嬢2人が顔を見合わせる。

「お前らは本部長が勝つと思っているのか?」

「王都の魔女が相手だとね……結局はジーン支部も錬金術師協会だし」

「もう時代が脱貴族になって久しいしね……」

ふーん……

「お前らの家は大丈夫なのか?」

相手の実家も気遣う。

さっき学んだ。

「ウチは別に大丈夫。田舎の港町だし、そもそも最初から住民と近い」

「ウチは軍がなくならない限りねー……」

レオノーラの家は強いし、アデーレの家は武家だったな。

「支部長は?」

「ウチもアデーレの家と同様に軍属の家だ」

ふーん……

「庶民の俺らには関係ないな」

「そうですねー」

エーリカと頷き合う。

「まあ、今回の緊急依頼の裏にあるのはそういう事情だ。それでどうする?」

「実は鍛冶屋が相談に来たんで一緒にルーベルトのところに行ったんですよ。まあ、ウチは現状、銀とアルミのインゴット作成ですからそこは問題ないそうです」

「そうか……では、引き続き、それをやっていけ。問題は今後だな。そういう相談、依頼、陳情なんかがウチにも来るぞ」

来られてもねー……

材料がなければ作ろうにも作れない。

「支部長、すみませんが、町長にもこういうことが起きているって協会から相談をしてくれませんか?」

「向こうも把握していることだぞ」

「ウチも困っていて、町長に言ってあるっていう形が欲しいんです。要はウチは悪くないんですよってスタンスです」

これしかないだろ。

問題の大本が大きすぎてウチでどうこうできることじゃない。

「ふむ。わかった。早速、町長に会ってこよう」

「お願いします」

「じゃあ、俺は町長のところに行ってくる……あ、そのまま直帰するからな」

まだ14時ですよ?