軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第258話 指導

寮の前の広場までやってくると、以前と同じようにテーブルと椅子を置き、3人が錬成を再開する。

ただ、俺は座らずに立っていた。

「魔法を見せてくれるんですか?」

「5級国家魔術師だねー」

「怖くないのにしてね」

3人は錬成をしながらこちらを見ている。

「今から俺が魔法を使うが、別に魔法を覚える必要もないし、魔法を見る必要もない。大事なのは俺が魔法を使う際に動く魔力の流れを見ることだ」

錬金術を見せてもいいが、錬金術より普通に魔法を使う方がわかりやすいのだ。

「それが大事なんですか?」

エーリカが聞いてくる。

「ああ。レオノーラが最初から鑑定ができるのは本人のセンスもあるが、魔力の動きが見えるからだ。これも一つの才能になる。俺は最初から見えたが、ゾフィーは見えていなかった」

まあ、すぐに見えるようになったけど。

なお、他の連中は知らない。

知っているのは俺より後に本部長に弟子入りした妹弟子だけなのだ。

実は最初に錬金術を教えたのは俺だったりする。

「ジークさんって何でも最初にできたんですね。すごいです」

「階段飛ばしばっかりよね」

褒めるな、褒めるな。

凡夫と比べられても……いや、やめよう。

「そういうもんなんだよ。言っておくが、受付をやっていて、実務経験がほぼないのに9級になったアデーレも他の人間からしたらすごいからな。嫉妬を受けるぞ」

実務経験を積んでいる連中ですら9級どころか10級も受からないというのに。

「その点はあなたに感謝ね。私達がどれだけすごいことをしても皆、あなたしか見ないから。学校にも本部にも天才と呼んでいい人はいたわ。でも、だーれも注目しない」

まあ、全員、2位以下だからな。

「……まあいい。説明を続けるが、錬金術も魔法の一種であり、魔力を使う。本来は魔力コントロールを覚えるために魔力の流れを見る練習をするもんだが、お前らは見なくても魔力を動かせたし、魔法学校に行っていたからコントロールもできるのだろう」

別に悪いことではないのだ。

極論、それで錬金術ができればそれでいいから。

「ジークさん、魔力の流れを見られるようになった方が良いんですか?」

エーリカが聞いてくる。

「錬金術自体はそこまでだ。実際、今もお前らは素材を見ず、こっちを見ながら錬成ができているだろ? それは経験だ。これは経験で補えることなんだよ」

魔術師は必須だが、錬金術師は別にそこまで求められることではない。

「まあ、私は魔力の流れが見えるけど、エーリカの方が上手だもんね」

口数少なめなレオノーラがそう言ってエーリカを見た。

「えー……レオノーラさんの方が上手ですよー」

「2人共、上手よ。私が一番できないのはわかってる」

俺から見れば全員……

「まあ、たいした差はないが、エーリカの方が安定感があるのは確かだな。それは魔力とは別のところの集中力とかの話だ。とにかく、錬金術には魔力の流れがあまり重要ではない。しかし、鑑定は違う」

「あ、そこに繋がるんですね」

「魔力が見えないから質もわからないわけか」

そうそう。

「鑑定では素材の鮮度なんかも大事だが、魔力を見ることも大事なんだ。例えば、ポーションの鑑定で大事になるのが薬草と水が上手く混じっているか、薬草と水の比率が適切か、そして、魔力の質とそれに澱みがないかだ」

俺レベルになると、ポーションを見て、どういう質の素材が使われたかもわかるがな。

「なるほどー」

「それで魔力を見る練習をするわけね」

2人も納得したようだ。

「そういうことだな。じゃあ、早速、魔法を使ってみる」

そう言って手を掲げると、バスケットボールくらいの大きさの水球が現れた。

こういう時は基礎であるファイヤーボールが良いと思うのだが、さすがに火はやめた。

アデーレは火を怖がるし、エーリカとレオノーラも火事のことがあるから良い気分はしないだろう。

俺も成長したもんだな。

「全然、わかりませーん」

「早すぎない?」

「ジーク君、今のは私もわからなかったよ」

あれ?

「普通だぞ」

「ジーク様、さすがに早すぎかと……」

ヘレンも苦言を呈してきた。

「そうか……じゃあ、ゆっくりやるよ」

出した水球をぽいっとその辺に捨てると、再び、魔力を込める。

ただし、今回はゆっくり動かしていき、水球も最初はピンポン玉くらいにし、徐々に大きくしていく。

「おー……」

「逆に見たことない光景ね」

「確かに魔力の流れは見えるけど、ここまで完璧にコントロールできるもんなの?」

「ジーク様は素晴らしいのです!」

いいから魔力を見ろよ。

「エーリカ、アデーレ、どうだ?」

「えーっと?」

「すごいのはわかる」

ダメか。

まあ、いきなりは無理か。

「じゃあ、ちょっと魔力を強くするぞ」

そう言って、水球をどんどんと大きくし、ついには1メートルを超えるくらいの大きさにする。

そして、一気に魔力を込めると、水球が凍り、俺がウィスキーのロックで使うような丸い氷となり、地面に落ちた。

「おー! 今のはちょっとわかりました!」

「私もわかったわね」

さすがにこれだけ魔力を込めればこのレベルの魔法使いならわかるだろう。

「というか、すごい魔力だったね……」

「すごいでしょ! 私の主なんですよ! おすすめです!」

ヘレンは興奮して、何を勧めているんだ?

「まあ、こんな感じだな。次はちょっと小さくするから見てろよ」

「あのー、ジークさんの魔力は大丈夫なんですか?」

「これくらいなら問題ない。俺を誰だと思っている?」

並ぶ者はいないんだぞ。

「ジークさんはすごいなー」

「ホントだよねー」

「何でもできるし、できないことがないんじゃないかしら?」

あるぞ。

できなかったからここにいるわけだし。