軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第223話 囲う

昼食を食べ終えた俺達は本部に戻ると、クヌートのアトリエに戻った後、魔導石製作チームの共同アトリエに向かう。

「ハァ……魔導石製作チームかー……あそこって女しかいないんだよな……」

なんかクヌートがため息をつきだした。

「どうした? 女好きだろ?」

「嫌いじゃないけど、女ばかりってのもな。若干、気まずい」

ウチもアトリエにいるのは女ばかりだが、考えたこともない。

何故なら、男だろうが女だろうが俺は35点だし。

「今さらなことを言うんだな。錬金術師だろ」

ほぼ女しかおらん。

飛空艇制作チームは半々だったけど。

「まあな。魔術師なんかには絶対になりたくなかったし」

それは同意するな。

多分、魔術師の道に進んでいたら俺はもう死んでると思う。

「リーゼロッテがいるとはいえ、まだ、魔導石製作チームは良い方だろ。薬品生成チームなんか地獄だと思うぞ」

全員、ハイデマリーの息がかかっている。

「マリーの姉貴はそもそも拒否するだろうけどな。本部長が言ってもひと月ももたずに追い出される」

そんな気がする。

俺達はそのまま歩いていき、魔導石製作チームの共同アトリエの前までやってくる。

すると、クヌートがノックした。

「失礼します」

クヌートが扉を開け、中に入ったので俺も続く。

すると、テレーゼ、リーゼロッテ、コリンナ先輩の3人がいた。

「あ、クヌート君……とジーク君」

テレーゼが立ち上がり、こちらに来る。

「よう、テレーゼの姉さん。休みじゃないのか?」

あ、ホントだ。

休日なのにテレーゼが出勤している。

「明日、納品があってね。それの調整なんだ。私が担当したやつだから私がやるしかない。とはいえ、もうちょっとしたら帰るよ。リーゼちゃんと流行りのチョコレートケーキの店に行くんだ」

レオノーラが言ってたやつかな?

「ふーん、なら良いのか?」

休日出勤に変わりないと思うけどな。

「私よりも2人はどうしたの?」

誰よりもお前だよ。

「俺はちょっと挨拶だ。明日から世話になる」

「世話って?」

テレーゼは聞いてないらしい。

「あー、こっち、こっち」

コリンナ先輩が手招きしたのでクヌートがそちらに向かった。

そして、頭を下げて挨拶をする。

「ジーク君、どういうこと?」

「もしかして、援軍ですか?」

テレーゼとリーゼロッテが聞いてくる。

「明日からあいつはここに異動だって。このチームがヤバそうだから補充要員だ」

「おー! クヌート君かー! すごい戦力だよ!」

「助かりますね!」

クヌートのことが嫌いであろうリーゼロッテまで喜んでいる。

やっぱりマズいだろ、ここ。

「良かったな。お前、体調はどうだ?」

体調というか、精神面だけど。

「大丈夫、大丈夫。この前はちょっと疲れてただけだよ。皆、心配性だなー」

テレーゼは笑顔でそう言うのでリーゼロッテを見ると、無言で首を横に振った。

「いや、マジで潰れるぞ。適度にやれよ」

このままだと、心が壊れてしまったテレーゼが療養地であるリートにリーゼロッテと一緒に来てしまう。

そして、連鎖的にマルタも来る。

多分、コリンナ先輩は専業主婦になる。

ウチは助かるが、さすがにダメだろう。

「わかってるよ。なんか終業時間になると、ハイデマリーさんに拉致されるんだよね」

マルタがそう言ってたな。

「それでいいわ。リーゼロッテ、ちゃんと見張っておけよ」

「はい。そうします」

リーゼロッテが力強くうんうんと頷いた。

「大丈夫なのに……ジーク君はそのことを言いに来たの? ありがとうね」

「気にするな。姉弟子に潰れてもらっては困る。それでな、ちょっと陛下から仕事をもらったんで1週間ほど滞在することになった」

「また? お弟子さん達の鑑定士の試験に付き合って来たんじゃないの?」

「それもあるが、本部長に頼まれてな」

試験問題のことは言わなくていいや。

「へー……ジーク君も忙しいんだね」

絶対に忙しくない。

お前の半分も働いてないと思う。

「たいしたことじゃない。それでな、アトリエを貸してくれ」

「なんとなくそうじゃないかと思ったよ……心配してくれて来たわけじゃなかった」

「気にはなってたぞ」

これは本当。

「ハァ……これでも変わってくれたんだ。昔なら勝手に死ねって言いそうだし」

「言わねーよ」

「そうだね。潰れるような無能は眼中に入れないもんね。思うのはただ『また一人ライバルが落ちていったな、ふっ……』だもんね」

うーん……否定できない。

「相変わらず、ネガティブな奴だな」

「否定してよ……あー、アトリエだっけ? アトリエかー……」

揺らいでいるっぽい。

「陛下の仕事だぞ。ちゃんと3人娘も連れてくるから」

「じゃあいっかなー……ヘレンちゃんも合わせて精神安定剤が4人もいればジーク君も私の研究を見てもバカにしてこないだろうし」

バカにしないし、そもそも興味ないから見ないんだけどな。

それこそ眼中に入らない。

「悪いな。それと俺はお前と違って精神は安定しているから大丈夫だぞ」

「私、ジーク君が5歳の時に『お前はこの程度で俺に何を教えに来たんだ?』って言われたことを忘れないから」

悪い方に安定していたんだよ……

「お前だって、リーゼロッテに教えている時に『なんでこんなものもわからないんだろう?』って思うだろ」

「思わないけど? いや、ホントに」

「ジークさん、あなたと一緒にしないでください。テレーゼ様は優しくて頼りになる私の大事な師匠です」

リーゼロッテがむっとする。

テレーゼは目を潤ませている。

ホント、バランスの取れた師弟だわ。

「俺も弟子からそう言われたことがあるぞ」

「そりゃジークさんのところは本当の意味で囲い、囲われているからじゃないですか……」

え? どういう意味?