軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第222話 皆、大人になったんだよ

「お前、そろそろ落ち着いたらどうだ? 25歳だろ」

「お前にそんなことを言われる日が来るとはな……」

俺もそんなことを言う日が来るとは思わなかった。

「お前を見てるとな……嫁さんでももらって落ち着けって思う。ふらふらしてないで本腰を入れて仕事に向き合えよ。錬金術が好きなんだろ?」

前世でもあったことだが、『こいつ使えねーなー』と思っていた同僚が結婚を機に変わることはそう珍しいことではなかった。

結婚に価値を見出せない俺には理解できないことだが、事実としてそういう人間もいる。

こいつはそれっぽいんだよな。

「師匠や他の一門ならともかく、お前に言われるとは……いやな、錬金術は好きだし、楽しいさ。でも、なんか争いが多いし、資格、勉強ばかりだろ。疲れるわ」

言いたいことはわからんでもないな。

「お前に足りないのは責任感だな」

「そうかもな。お前はどうだ? 結婚とか考えているのか?」

「俺にはヘレンがいる」

夢中で食べているウチの子。

「そうですよ。ジーク様にはお弟子さんがおります」

まあ、弟子がいるというのは責任を取らないといけないというのは合ってる。

「ふーん、楽しそうだな」

「そうかもな。それで話って何だ?」

「話があるなんて言ったか?」

何を言うか。

「用でもないとお前は俺を飯に誘わんだろ。クリスと行け」

どうせクリスも休日出勤しているんだろ。

「まあ、お前にはこれまでに何度も断られているからな。今さら誘わない。アウグストの件、聞いたぜ?」

「クリスか?」

「そっちもだけど、家だな。大慌てだ」

こいつも貴族だしな。

「貴族ってめんどくさいな」

「ああ。何がめんどくさいってウチはアウグストの家寄りの家ってことだ」

あー……そういうこともあるか。

「何? お前も粛清対象か?」

「そこまでの繋がりはねーよ。幸い、クリスの兄貴が図らってくれたしな。ただ、やりにくいったらありゃしない。あのバカはやりすぎだ」

試験結果の改ざんだけじゃなくて、リート支部放火の首謀者だからな。

「本部に居場所がないか?」

「そういうわけじゃねーよ。俺は本部長の一門だし」

俺も本部長の一門だけど、居場所はなかったけどな。

何しろ、すべてのチームに断られたという逸材だし。

「ふーん、じゃあ、良かったじゃないか。新しいチームで頑張ってくれ。あそこはお前と相性の良さそうなリーゼロッテがいるぞ」

「嫌味か? たまにものすごい目で見てくるぞ、あいつ……」

軽薄そうなこいつとは上手くやれないのは必至。

「リーゼロッテを知ってるんだな」

「そりゃそうだろ。テレーゼの姉さんの弟子なら紹介もされるし、何よりも同じ職場だ。知らないのはお前だけ」

興味なかったからな……

「お前、弟子は?」

「いるわけないだろ。責任が取れない」

やっぱりね。

「ふーん……」

「あー、それとな。お前がいつまで王都にいるかは知らないが、今度、久しぶりに一門が集まって勉強会をしようってなってるけど、どうする?」

は? 勉強会?

「今さらか? 確かに昔はよくやっていた気がするが、上の代が就職してからはやらなくなっただろ」

クリス、テレーゼ、ハイデマリーは同い年であり、こいつらが就職したらやらなくなった。

「それがなー……俺も就職してからは本部長に錬金術や勉強を見てもらった記憶がないが、他もそうらしい」

「まあ、忙しいしな。それに良い言い方をすれば皆、一人前になり、独立したからだろ」

あとは自分達で勝手に勉強する。

「それはそうなんだがな」

「俺達はそれくらいのキャリアになっているし、俺もだが、弟子がいれば今度は教える方になるだろ」

本部長に何を教わるんだよ。

それに皆で集まって何を勉強するんだ?

「まあな……」

「それがなんで今さら勉強会なんだ?」

「これはゾフィーから聞いた話なんだが、本部長が寂しがっているらしい」

えー……

「何言ってんだ?」

「いや、その反応はよくわかる。でも、俺達ってずっと本部長の屋敷で学んできただろ? 特にお前は住み込みだったし、誰も来なくなって寂しいんじゃないかって」

新しい弟子でも取ればいいんじゃないかね?

「それで本部長の慰め会か?」

「言い方は悪いが、実質そんなもんだ。もう誰も師匠って呼んでいないし」

マジかよ。

「それに俺も参加しろと?」

「本部長が一番喜ぶのはお前だ。ただ、お前はリートだからな。さすがにリートから来いとは言わん。でも、もし、時間が合えば参加してほしい」

皆、忙しい中、師匠のために時間を作るわけだ。

「俺、1週間しかいないからな。次に来るのは試験がある来月だ。スケジュールが合えば別に参加してもいいが……」

「じゃあ、頼むわ。俺とゾフィーで調整するからよ」

マジでやるのか……

「弟子は参加しなくていいだろ?」

その集まりに3人娘を連れていきたくない。

「それはいい。お前らが弟子を連れてきたら屋敷の共同アトリエに入らねーよ」

テレーゼはリーゼロッテだけだが、他は複数いるしな。

ハイデマリーに至っては10人以上だからそれだけでいっぱいだ。

場所をパーティー会場に移さないといけなくなる。

「わかった。マリーとゾフィーとケンカしないように気を付ける」

「そうしてくれ。お前らクズ3人衆が一番、本部長に心労を与えているんだからな。気を付けろ」

本部長がおばあちゃん扱いだよ。

「お前もお前で心労を与えてそうだな」

「かもな。とにかく、頼むわ。それとちょっと聞きたいんだが、いいか?」

話が多いな。

「何だよ?」

「お前の弟子ってどうだ?」

どうだって言われてもな……

「普通? あ、いや、優秀だと思うぞ。ちゃんと勉強をするし、仕事もできる。何よりも俺より人間性が遥かに高いな」

「そうか……」

え? 何?

「アデーレか? そんなに気になるわけ?」

本気だったか?

「いや、アデーレじゃない」

違うの?

でも、アデーレとしか面識ないだろ。

「エーリカとレオノーラか?」

「あ、いや、すまんな。変なことを聞いた。お前が弟子を取るのが意外過ぎてどういう子なのかなって気になっただけだ。それよりも午後から荷物を運ぶのを手伝ってくれないか?」

んー?

「魔導石製作チームか?」

「ああ。たいした作業じゃないが、挨拶しに行こうと思ってな」

「いいぞ。俺もちょっとテレーゼに用があるし、元気かどうか確認したい。リートに来た時は泣きながら肉を頬張ってたからな」

しかも、ぼーっと海を見て動かなくなったらしいし。