軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第202話 完成

エーリカとドックに戻ると、マルティナこそ木材の加工をしているが、レオノーラとアデーレは本を読んでいた。

そして、ゾフィーは明らかに動力じゃない何かを作っている。

「あ、戻ってきた。何だったの?」

ゾフィーが顔を上げて、聞いてくる。

「たいしたことじゃない。ヴァルターから買い占めの件で謝罪を受けただけだ。やっぱりあの2人は知らなかったようだな」

「ふーん……バカねー。謝ったらダメでしょ。それじゃあ協会にケンカを売りましたって認めることになるじゃないの」

普通、謝らんよなー……

「どうでもいいだろ。それよりも何してんだ?」

「あんたらの家にあった扇風機を作ってる。船の動力の方はもう終わった。あとは最後の組み立てをお願い」

ゾフィーの足元には完成した動力が置いてあった。

「お前らは?」

本を読んでいるレオノーラとアデーレに確認する。

「終わったー」

「私も」

そっちも終わったか。

ということは……

「マルティナ、残りはそれだけだ」

「え? あ、はい……こんな感じでどうですかね?」

マルティナが最後の木材を見せてくる。

「良いと思うぞ。これで完成だ」

「でも、まだ何も……」

マルティナが積まれている加工した木材の山を見る。

「ここまで来たら一瞬だ。マルティナ、その木材をそこに置け」

木材なんかの材料が積まれているところを指差す。

「こうですかね?」

マルティナが加工した木材を置いた。

「あとはただの錬成だ。いや、錬成とも言わんな。組立て」

そう言って手を向けると、魔力を込める。

すると、材料が輝きだし、あっという間に船に変わった。

「はえ!? 急に船が現れた!」

「あっという間ですね……」

「私のサインはどこだろ?」

「というか、こんなに早くできるものだっけ?」

「いや、早すぎでしょ。あんた、もうちょっと情緒ってもんを考えなさいよ」

情緒って何だよ。

「何でもいいだろ。とにかく、できたからルッツに知らせにいかないとな」

「あ、私が呼んできますね」

エーリカが手を挙げると、ドックから出ていった。

「この船、大丈夫ですよね?」

マルティナが船に触れながら聞いてくる。

「どういう意味だよ」

「私が加工した木材も使っているじゃないですか。沈みません?」

「ちゃんとできてたから大丈夫だよ」

ちゃんと見てる。

「ジーク、こっちでの仕事も終わったし、私は明日にでも帰るわ」

ゾフィーが片付けをしながら言う。

「急だな」

「いつまでも空けるわけにいかないしね。良い息抜きだったわ」

ふーん……

「まあ、あっちでも頑張ってくれ」

「そうする。そういうわけで私は早上がりするわ。本部長に報告しないといけないし、電話を借りるわよ」

「勝手に使え」

そう言って、鍵を渡すと、ゾフィーは帰っていった。

そして、そのまましばらく待っていると、エーリカがユリアーナを連れて、戻ってくる。

「おー、もうできてますね。さすがは支部の皆さんです」

ユリアーナが船を見上げ、褒めてきた。

「ルッツはどうした?」

「ルッツは外で演習ですね。代わりに私です。協会担当はルッツと私なんで」

この配置から考えてもお前らの関係はバレてると思うけどな。

「ふーん……まあいいわ。とにかく、チェックしてくれ。あと、お前からもらった設計図がひどかったぞ。修正設計業務を出せ」

ユリアーナに設計図を返す。

「そんなにでしたか? 皆さん、これで作られるんですけどねー……とりあえず、協会からそういう陳情があったことは上に伝えておきます」

「頼むわ。すぐに設計図を納品してやるからな」

「もう描いたってことですか……わかりました。とにかく、まずは船のチェックを致します。その後、実際に船を海に浮かべますので少々、お待ちください」

進水式とかやるのかね?

酒かなんかが入った瓶を投げるやつ。

「あのー、海に浮かべるのを見に行っても良いですか?」

マルティナがユリアーナに聞く。

「ええ、いいですよ。というか、立ち会ってもらえると助かります」

「じゃあ、俺達も行くわ。いつになる?」

「今からチェックをしますし、明日の午後ですかね? 明日もルッツは留守なので私が迎えにいきますよ」

ルッツも忙しいんだな。

「じゃあ、頼むわ。俺達は帰る」

「はい。お疲れさまでした」

俺達はドックをあとにすると、支部に戻る。

その後は別の仕事をしつつ、エルネスティーネによるマルティナの指導を見学することにした。

そして、仕事も終わり、エーリカの部屋で夕食を食べる。

「私、明日の朝には帰るから」

早っ。

「本当に急だな」

「そんなもんでしょ。今回は十分に観光できたし、美味しいものを食べさせてもらったわ……うん、楽しかった。エーリカ、ご飯を作ってくれてありがとうね」

「いえいえ。最後ならちゃんとしたものを作れば良かったです」

「いや、このパスタも十分に美味しいから。それにこんなに魚介類が入ってるし、海がないところから来た私からしたらご馳走すぎるわよ」

そうかもなー。

これを王都で出そうとすると、いくらするんだろう?

「ゾフィー、明日の午後から進水式があるけど、来ないのか?」

「別にいいでしょ。沈むわけがないし、午後からだと帰るのが夜になっちゃうじゃないの。帰ってからも準備や片付けがあるし、早めに帰る」

これ、明日から仕事っぽいな。

「そうか。じゃあ、見送りにいってやろう」

俺の時はお前を含めて一門連中は誰も来なかったけどな。

来てくれたのはアデーレだけ。

「別にいらないけどね。あんたら、どうせ来月には王都に来るんでしょ」

「暇だから行ってやる」

「あっそ」

翌朝、ゾフィーは支部長に挨拶をすると、帰るために空港に向かったので俺達もついていく。

「ここでいいわ。あんたらも仕事があるし、そんな大層な別れでもないしね」

空港の前に着くと、ゾフィーが振り向いた。

「まあ、頑張ってくれ。最低でもクリスは超えろよ」

「高い最低ラインだこと……まあ、頑張るわ」

ゾフィーが笑う。

来たばかりの頃の自信を失いかけていた表情とは違う。

「ゾフィーさん、ありがとうございました」

「おかげで助かったよー」

「私達だけでは買うことになって赤字だったかもしれないしね。王都の本部は大変でしょうけど、頑張って」

3人娘もそれぞれ別れの言葉を告げる。

「あんたらも頑張りなさい。ジークができるって言うならできるし、才能があるって言うならあるわ。たまにとんでもない暴言が飛んでくるけど、人に興味がないから言葉を選ぶことをしなかっただけでこいつ自身に悪気はないから」

最近は選んでるわい。

「わかってます」

「いつものジーク君だしね」

「最近はヘレンさんとの会議も減ってますし、大丈夫だと思うわ」

言わないだけでこいつらも思ってたぽいな……

「あ、あの、ゾフィーさん、勉強を見てくださってありがとうございました」

マルティナが礼を言う。

「別にたいしたことはしてないわよ。あんたはこれからハイデマリーのもとでもっと勉強することになるわ。大変でしょうけど、頑張りなさい。というか、あんたとの別れはいらないわ。同じところに行くんでしょうが」

マルティナもまた1週間後にはこの町を出て、王都に行く。

「はい。よろしくお願いします」

「まあ、王都の案内ぐらいはしてあげるわ。あとアドバイスをすると、今のうちに海のものを食べておきなさい。王都は本当に肉ばっかりだから」

「お肉も好きですので大丈夫です」

いやー、どうだろ。

1週間近く王都にいた俺達も魚が食べたくなったしな。

「そう……まあ、飛空艇でいつでも帰れるし、どうとでもなるか。じゃあね。私は帰る」

ゾフィーは空港に向かっていく。

「ゾフィー、お前の成長はこれからだぞ」

「そう信じるわ」

「あと、マリーが止まったのは身長と胸だろって笑ってた」

「密告どうも! 王都に帰ったらぶん殴りに行くわ!」

髪の毛アタックで止められると思うけどな。

「本部長にもよろしく」

陛下云々は聞かなかったことにしているから。

「ええ。元気でね」

ゾフィーは空港内に入っていった。