軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第200話 面倒な予感

町を軽く観光した後は外で昼食を食べた。

そして、午後からは店に行き、電話を買うと、家に戻ることにした。

すると、前方から紙の買い物袋を片手で抱えたマライアが歩いてくる。

「あら、支部の皆さんじゃないの。皆さんも今日はお休み?」

マライアは普通の笑顔だし、言葉的には世間話なんだが、あんなことがあると、嫌味にしか聞こえない。

「休日だからな。ちょっと町を見ていたんだよ」

「それは良いことね。この町の者として嬉しく思うわ」

エーリカもだが、この町の人間ってこの町が好きだよな。

もちろん、出ていった奴もいるけど。

「お前は買い物か?」

「ええ。魔石を買ったの。自主練用ね」

偉いねー。

さすがは7級だ。

「そっちの船はどうだ?」

「いつも通りって感じかな? ウチは慣れたものだし、余裕。そちらは人がいないけど、大丈夫なの?」

「よく言う……」

ゾフィーがポツリとつぶやいた。

「何か?」

マライアの笑みが消える。

どうもゾフィーとエーリカの先輩方は相性が良くないらしい。

「別に。ただよくもまあ、協会にケンカを売れるものねって思っただけ」

「どういう意味かしら?」

マライアの目が据わった。

「ゾフィー、休みの日にきゃんきゃん吠えるな。マライア、すまんな。俺はこれから電話の設置とかをしないといけないので帰る。じゃあな」

マライアを睨んでいるゾフィーの手を掴むと、引っ張っていく。

「絡むなっての」

マライアが見えなくなると、ゾフィーの手を放す。

「ムカつくのよ」

ガキンチョめ。

「こっちのお姉さんを見ろ。全然、怒ってないだろ。こういう心の広さを持てっての」

レオノーラを指差しながら諭した。

「お姉さん?」

「お姉さん」

ゾフィーが首を傾げると、レオノーラが大きく頷く。

「ふーん……お姉さんはなんで怒らないの?」

「怒る必要がないからね。マライアだっけ? あの子に当たってもしょうがないよ。彼女は買い占めがあったことを知らないね」

俺もそう思う。

「そうなの?」

「態度が中途半端なんだよ。こういうのは嫌味を言うなら言う。言わないなら徹底的に隠すもんだからね。彼女はそのどちらでもない。買い占めがあったことも知らないし、こっちの事情も知らない感じだよ」

「跡取りなのに知らないの?」

「まだ経理とかお金に関わらせてもらってないんでしょ。経営って汚いこともあるし、今は技術優先って感じかな」

さすがは貴族様。

こういうのにも詳しい。

「ふーん……じゃあ、余計なことを言ったかしら?」

「それはどうかなー?」

関係ないしな。

「どうでもいい。でも、あまり噛みつくな。ウチの評判に関わるし、あれ、エーリカの先輩だからな。トラブルになったらエーリカがより気まずくなるだろ」

「わ、わかったわよ。もう言わない」

子犬はすぐに噛みつくからいかんわ。

「帰るぞ」

俺達はそのまま歩いていき、家に帰った。

そして、買ってきた電話を設置し始める。

「ジーク君、そういうのもできるんだね。私はお店の人に任せたよ」

ゾフィーと一緒にテーブルについているレオノーラが感心したように言う。

「いや、これくらいはできるだろ」

「全然」

「私も専門じゃないからわからない」

ゾフィーもかい……

「ゾフィーは電話を持ってないのか?」

「王都出身だし、家族も一門も友達も王都よ。電話する相手がいないじゃないの。ちょっと行けば会えるし」

俺は王都じゃないけどな。

まあ、電話なんてしてこないだろうけど。

「ふーん……さて、できた。お試しでどこかにかけてみるかな……」

どうしよう?

アデーレはエーリカのところだし、レオノーラに一度帰ってもらおうかな……

「ジーク様、本部長さんにかけたらどうでしょう? 今後はこっちに繋ぐように言わないといけませんし」

「それもそうだな……えーっと、本部長の家はっと……」

本部長の家に電話番号を思い出しながらかけてみる。

しかし、呼び出し音が鳴っているものの中々出てこない。

留守なのだろうか?

「んー? あ、出た」

『もしもーし。クラウディアは留守だぞー』

ん?

この声は使い魔のカルステンか。

「本部長はどこだ?」

『仕事だよ。本部だな……この声はジーク――』

用件が済んだので電話を切った。

「本部長、休日出勤だってよ」

「本部は大変だねー。それも本部長ともなれば忙しいんだね」

かもな。

「というか、あんた、電話を切るのが早すぎない? 聞いて、3秒で切ったじゃないの」

ゾフィーが呆れる。

「カルステンはうるさいから雑談はしない」

しかも、ウチのヘレンを怖がらせる。

ドロテーの方がまだ可愛げがあるわ。

「まあ、うるさい鷲だけど……」

「だろ? さて、本部か……」

今度は本部にかける。

すると、すぐに呼び出し音がやんだ。

『はい、こちら錬金術師協会本部です』

サシャだ……

休日だというのに。

「こちら、リート支部のジークヴァルトだ」

『あれ、ジーク先輩じゃないですか。休日にどうしたんです?』

「本部長に用があってな。お前は休みじゃないのか?」

『休日も受付は誰かがいないといけないんですよ。代わってくれる優しいアデーレ先輩をジーク先輩が取っちゃったから私です。まあ、代わりに明日が休みですけど』

受付も大変だな。

「お前もウチに来るか?」

『王都が良いですね』

ホント、フラれてばっかりだな。

「そうかい。本部長に繋いでくれ。いるんだろ?」

『ええ。少々お待ちを……』

サシャがそう言うと、保留音が鳴りだした。

そのまましばらく待っていると、保留音がやむ。

『ジークかー?』

「ええ。今、電話大丈夫です?」

『いいぞー。休日なのに電話してくるなんて珍しいな。何か急ぎの用か?』

「別にそういうわけじゃないです。電話を買ったんで次からはレオノーラやアデーレの電話にかけるのはやめてください。このことをマリーのバカにも言っておいてください。電話番号は……」

電話番号を早口で伝えた。

『ちょ、ちょっと待て。何をそんなに急いでいるんだ?』

「お忙しいと思って」

『暇なわけじゃないが、そこまで忙しいわけではないわ。ジーク、ゾフィーはどうだ?』

それは気になるか。

「なんかしょうもない悩みをしていましたが、もう大丈夫そうですよ」

「しょうもなくないわよ!」

ゾフィーが怒った。

「しょうもないだろ。マリーはアホって言ってたぞ」

あとバカとかガキとか……

「ゴミカスマリーがー!」

『なんだ……そこにいるのか。まあ、元気そうで何より。それとジーク、いつ帰ってくる?』

「んー? 帰ってくるというか、来月に鑑定士の試験があるからそれに付き合おうかと思ってますよ」

3人娘がついてきてとうるさかったのだ。

『そうか、そうか。来月の鑑定士の時な。わかった』

何が?

「何かあるんですか?」

『いや、特にない。陛下が会いたいって言ってるくら――』

用件は済んだので電話を切った。

「よし、勉強でもするか」

マルティナでも呼ぼうかな。

「不自然に電話を切ったね。何かあったの?」

「ガチャ切りはやめなさいよ」

ちょっとめんどくさそうな言葉が聞こえたんだよ。