軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第177話 マルティナ「完全に王様だなぁ……」

翌日、朝からエーリカの家に集まり、勉強会を始めた。

さらにはマルティナもやってきたので銅鉱石の錬成を見る。

「お前、本当に下手くそだな……」

全然できてない。

「む、難しいんです……」

これ、王都に行くまでにできるようになるか?

「お前は魔力のコントロールが下手だ。でも、これは仕方がないことと言える。実際にこの9級、8級のお姉さん達も下手くそだからな」

魔術師の俺からするとひどいもんだ。

「流れ矢が飛んできましたよ」

「ジーク君、ひどーい」

「まあ、事実だけどね……」

そうなんだよ。

「先輩方より遥かに下の私はどうすればいいんですか?」

よくわかってるな。

10級を程度と言った身の程知らずが成長したもんだ。

「まあ聞け。お姉さん達は下手でもちゃんと錬成をやれている。お前も薬の錬成はできるだろ? その理由はなんだ?」

「えっと…………慣れ?」

うーん……正解にしてやりたいが……

「惜しいな。それもある。お前は薬が身近だからあながち間違っていないが、最大の理由は知識だ」

「知識……」

「薬屋のお前は基本的な薬に関する知識があるんだ。でも、それだけでは国家錬金術師試験に受からん」

当たり前だ。

「わ、わかってます」

「そして、お前に元素や還元の仕組みを理解しろって言っても無理だ」

というか、お姉さん達も無理だ。

この世界には元素記号すらなく、ほとんどが経験的な魔法学で成り立っているのだ。

多分、魔法が便利な世界だからこその弊害だろう。

「えーっと、じゃあ、どうすれば?」

「経験しかない。経験こそがもっとも勉強になる。お前はお姉さん達みたいに頭も良くないし、まだ学生だったお前には積み重なった知識もない。でも、お前はそういったタイプではなく、よく言えば天才型だ。センスでどうにかするしかない」

愚か者でも学べるのが経験だ。

「はい……」

「国家錬金術師試験は筆記と実技だ。筆記は死ぬ気で覚えろ。実技はセンスでどうにかすればいい。幸い、お前の魔力の質は一級品だからあとはコントロールできるようになれ」

絶対に魔術師になった方が良い素材だけどな。

「頑張ります!」

「よし、そういうわけでコントロールの練習だ。外に行くぞ」

そう言って立ち上がる。

「外ですか?」

「お前、生活魔法すら使えんだろ」

「……はい」

だと思ったわ。

このひどいコントロール能力ではそれすらできないだろう。

これが魔法学校の生徒なのだからびっくりだ。

「そういうわけで今日は外で魔法の練習だ。火種を出す魔法も水を出す魔法も薬を作るうえで役立つぞ」

立たないけどな。

蛇口をひねれば水は出てくるし、マッチをこすれば火も出せる。

「頑張ります!」

薬関係に絡めれば簡単にやる気を出す……

単純な奴だわ。

「じゃあ、行くぞ」

「はい!」

俺とマルティナは外に出る。

すると、何故か3人娘もついてきて、机と椅子を出し、青空勉強会を始めた。

「俺がマルティナをいじめると思ってる?」

そんな生産性皆無なことはせんぞ?

「そういうことじゃないですよ」

「気にしないで続けて、勉強しながら見てるから」

「私達も下手くそなので参考になるかなと思ったのよ」

ふーん、まあ、たまには外で勉強することで気分転換になるかもしれんな。

「アデーレ、ちょっと水を出してみ?」

「こう?」

アデーレが手を掲げると、少量の水が出てきて、地面を濡らした。

「あれが生活魔法だ」

「見たことがあります」

そりゃ魔法学校の生徒だしな。

「同級生は使えるだろ?」

「半々くらいですかね?」

レベルが低いなー……

半々……王都の魔法学校の生徒は全員、使えると思う。

「まあ、やってみろ」

「はい!」

マルティナは頷くと、手を掲げる。

しかし、水が出るどころかマルティナの魔力はピクリとも動いていない。

「ひっで……」

「ごめんなさい……」

マルティナがガクッと項垂れた。

「ジーク様、優しくですよ」

「わかってるよ。思わず、声が漏れただけだ」

あまりにもひどかったから。

「マルティナ、魔力を動かせ」

「はい。ぐぬぬ……」

ダメだこりゃ……

才能が微塵も感じられない。

「ジーク様、私が思うにマルティナさんは魔力が大きすぎるがゆえに動かせないんだと思います」

ヘレンが珍しく意見を言う。

「そんな気もするな」

それ以前の気もするが。

「どうでしょう? マルティナさんに使い魔と契約させては? 使い魔は本来、主人の魔法の補佐をするのが役目です」

そういやそうだな。

ウチのヘレンはそういうのをまったくしないから忘れてたわ。

寝てるか、遊んでるか、アドバイスをくれるかだ。

まあ、それがとても重要なんだが……

「マルティナ、使い魔と契約するか?」

「使い魔ですか? ヘレンちゃんみたいな?」

「ウチの子ほど可愛いのはいない」

世界一可愛い。

「あ、はい……でも、使い魔って大丈夫なんです?」

「補佐をしてくれるだけだ。でも、面倒は見ろよ。たまにめちゃくちゃわがままな奴とかいるし」

砂糖水とか蜂蜜を要求する嫉妬深いカラスとか。

「うーん……」

「ただ、お前にはとても役に立つのは確かだな。魔力コントロールを補佐してくれるし、時には別の役割もしてくれる」

わがままだけど、空が飛べるドロテーは便利だろう。

「危険なことはないんですよね?」

「それはもちろんだ」

使い魔が主人を害することなんてない。

「じゃ、じゃあ、契約してみます……破棄ってできますよね?」

「できるから安心しろ」

とはいえ、破棄したという話は聞いたこともない。

クリスも本部長もなんだかんだでドロテーとカルステンを可愛がっている。

「えーっと、どうすれば?」

「ちょっと待ってろ。召喚の魔法陣を描いてやる」

空間魔法から杖を取り出すと、地面に魔法陣を描いていく。

「おー、綺麗ですねー」

「この前の設計図もだけど、ジーク君は上手に描くね」

「ホント、万能よね……苦手なこととかないの?」

いつの間にかやってきた3人娘が地面を見ていた。

「人付き合い」

「いや、それ以外で」

聞くまでもないわな。

「音楽とか美術かな……芸術は苦手だ」

音痴だし、美的センスは皆無だ。

「へー……」

「そういや、アデーレは音楽が得意なんだっけ?」

前にレオノーラが言っていた。

「得意じゃないわよ。ただ好きなだけ」

「ヴァイオリンを弾けるんだろ?」

「まあ、嗜む程度に……」

すごいわ。

俺はリコーダーや鍵盤ハーモニカすら弾けないというのに。

「聞いてみたいな」

「私も聞いてみたいですー」

エーリカもらしい。

「え? じゃあ、き、聞く? あ、でも、1人ずつね。恥ずかしいから鑑賞会はダメ」

音楽って発表会とか皆に見てもらうイメージがあるんだが、それは嫌らしい。

「酒でも飲みながら聞くか……」

「ガンガン飲んで意識を朦朧とさせながら聞いてちょうだい」

いや、そこまで恥ずかしがるなら断れよ。