軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第176話 打算>感情

支部に戻った俺達は片付けをし、家に帰る。

そして、ちょっとしてから集まると、何度か使っている店に向かった。

「「「かんぱーい」」」

「はい、乾杯」

俺達はグラスを合わせると、一口飲み、頼んだ料理を食べていく。

「ボーナスももらってウハウハだねー」

レオノーラが笑顔でワインを飲んだ。

「私は想像以上だったわ」

アデーレがしみじみと頷く。

「そうなの? 王都はもらっているイメージだけど」

「受付だからね。職能給もないし、ボーナスなんてほぼ最低レベルよ」

なかなかにひどいな。

受付なんかストレス半端ないっていうのに。

「資格手当はもらってただろ?」

アデーレは独学で9級を取ってたし、当然もらえているはずだ。

「そうね。でも、それがよりみじめになるわけよ。その資格に見合うことをなーんにもしてないし」

まあ……

「こう言ったらなんですけど、私もそれは嫌ですね」

エーリカが微妙な表情になる。

「でしょ? だから異動願いを出したわけ。正解だったわ」

「私もアデーレさんが来てくれて嬉しいです」

はたして、俺がこんな気の利いたセリフを言える日が来るんだろうか?

「ありがと。ちゃんと職能給も出るし、ボーナスももらえる。何より、やりがいがあるわ。ジークさん、誘ってくれてありがとう」

「別にいい。お前が俺を見送りに来なかったら、絶対にこういうことにはなっていなかったし、俺も感謝している」

でなければ、俺は自分がそこまでひどい人間であるということに気付けなかった。

悲しいことに。

「ロマンスっぽいですね」

「だねー……あ、ジーク君、週末になったけど、ゾフィーは?」

レオノーラが聞いてくる。

「何の連絡もないし、さっぱりだな。本当に来るんだろうか?」

「本部長に電話してみる?」

「めんどいからしない」

どうせ、王都に戻れとか言うし。

「もし、このまま来なかったら動力の方はどうするのさ?」

「俺が作るか? いや、それはそれで面倒だな。利益は減るが、買うことになると思う」

さすがに港町なら売ってるだろ。

「利益は大丈夫? いくらウチでも赤字はマズいよ?」

「そこは大丈夫だ。十分に利益は出る」

というか、民間は買うんじゃないだろうか?

「ならいいか。頑張っていこー」

そうしてくれ。

「私は民間の方が気になるわ。あのエーリカさんの先輩2人」

マライアとヴァルターね。

「あんなのほっとけ。俺達には何の影響もないし、関係もない」

「ライバルとは言わないけど、競合相手でしょ」

競合?

「俺達は協会の人間だぞ。民間同士で争うことがあったり、民間が俺達を目の敵にすることはあっても俺達が民間と争うことなんてない。俺達より安い額で受注してもいいし、高い額でぼったくるのも自由だ。俺達は協会で決められた額で最上の仕事をすればいいんだよ…………もう一言、二言添えてやろうか?」

一言、二言どころかいっぱいあるが……

「言って」

「どこのどいつか知らんが、俺に宣戦布告するなら3級を超えてからにしてほしいわ。しかも、跡取りだろ? アトリエを経営しているのが父親か母親かは知らんが、一人前になってからにしろ」

半人前がよく宣戦布告できるわ。

「そこだけはブレないわね、あなた……父親か母親がとんでもない優秀な錬金術師かもしれないわよ?」

は?

「覚えとけ。どんなに優秀な錬金術師が現れようと、所詮は俺以下だ」

「ジーク様に並ぶ者はいません!」

その通りなのだ。

「ジークさん、かっこいいー!」

「私、ジーク君のそういう自信満々なところが好きだなー」

「さすがは仕事100点ねー」

人間性も50点くらいにはしたいわ。

「まあ、実際問題として俺達は俺達の仕事に集中すればいい。初めての船製造だし、良いものを作ろうぜ」

俺だって船は初めてだ。

飛空艇製作チームにいたが、別にリーダーというわけでもなかった。

そういや、リーダーってコリンナ先輩の旦那さんだったな。

微妙に顔を覚えてないけど。

「あとどれくらいで作れる感じです?」

エーリカが聞いてくる。

「ちょっと不確定要素が多いからなー……ゾフィーが来るかわからないし、来ても動力の方の材料の受注にどれだけの時間がかかるかわからない。できたらマルティナがこっちにいるうちに完成したいんだが……」

ちょっと厳しいか?

「マルティナちゃんですか?」

「ああ。あいつにも手伝わせただろ? ハイデマリーのもとで薬品系の道に進むとは思うが、こういうのは絶対に自信になると思うんだ。ましてや、海が好きって言ってたし、故郷のものだからな」

国家錬金術師の資格は超が付くほどに難関である。

知識に加え、魔法という絶対的な才能と技術がいる分、前世の難関資格と言われる資格よりも難しいだろう。

それをあのバカが受かるのは至難の業だ。

心が折れることもあるだろう。

それでも立ち上がって、合格してほしいと思う。

「ジークさん、なんだかんだでマルティナちゃんのことを気にかけているんですね」

「ジーク君は優しいんだよー」

「成長したのよ」

……いや、こうやっておけば、いつかハイデマリーのもとで成長し、リートに戻ってきた時にウチに入ってくれるかもなという打算。

ハイデマリーにバカを直してもらって、ハイスペックな真・マルティナを家業と兼業でもいいからと言ってウチに入れる予定だったりする。

そのためにウチでの成功体験を経験させてやりたいんだ。

「……一門だからなー」

何とかしぼりだせた……