軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第170話 まあ、できるだろ

「ユリアーナ、軍船を1隻で納期はなしでいいな?」

ユリアーナに確認する。

「はい。実際のところ、どうでしょう? いつくらいに納めてもらえます?」

納期はないが、そこは把握しておきたいわな。

「実は本部から妹弟子が出向してくるんだよ。それも5級のエリートだ」

「それは心強いですね」

「ああ。1ヶ月程度らしいが、精密機械製作チーム所属だし、戦力になる。だからそいつがいるうちに片付けてしまうわ」

というか、あいつにほぼ任せようかな。

「え? 1ヶ月ですか? 最低でも3ヶ月を見ていたんですけど……」

「大型船ではないんだろ?」

さすがにそれは無理だ。

「ええ。小回りの利く小型船です」

「だったら問題ない。ウチのゾフィーは20歳で5級を取った超エリートだ」

「すごいですね……」

俺は在学中に取ったけどな。

「まあな。だから目安としては1ヶ月程度だ」

断言はしない。

何があるかわからんし。

「じゃあ、もう1隻やります?」

「せん。ゾフィーが帰ったら俺達だけでやらないといけなくなる。ウチの方針だが、今は3人娘のスキルアップを重視しているんだ」

本当は年代がうまく散らばってバランスよいチームが理想なのだが、4人じゃ無理。

「あ、なるほど」

「いずれは何隻でも大型船でも受注してやるからちょっと待ってろって大佐と町長に伝えておけ」

「わかりました。どうでしょう? これからドックに行きませんか? そこで詳しい依頼内容を説明しようと思います」

実際に現場に行った方が良いか。

「エーリカも行くか?」

隣にいるエーリカに聞く。

「はい! 行きたいです!」

そうだろうと思ったわ。

「レオノーラとアデーレも行くかー?」

振り返り、デスクにいる2人にも聞く。

「行く、行くー」

「せっかくだし、見てみたいわ」

じゃあ、全員だな。

「ちょっと待ってろ。支部長に声をかける」

立ち上がると、支部長室に向かい、ノックした。

『んー? どうしたー?』

支部長の声が聞こえたので扉を開け、顔を出す。

「例の船の件で港の方に行ってきますので留守をお願いします」

「わかった。前向きに頼む」

あ、そういえば、支部長にゾフィーの件を報告してなかった。

まあ、帰ってからでいいか。

「わかりました」

頷くと、扉を閉める。

すると、皆がすでに立って、出かける準備を終えていた。

「では、案内いたしましょう」

「頼むわ」

俺達は支部を出ると、ユリアーナの案内で歩いていく。

「いやー、今日もいい天気ですね。そろそろ暑くなりますが、日差しと風が気持ちいいです」

何を言ってんだ、こいつ?

「レオノーラ、どう思う?」

「夏は冷房が効いた部屋で読書だよ」

だよな?

「あのー、たまには運動した方が良いですよ?」

「採取に行ったら苦言を呈されたわ」

「いや、町の中とかにしましょうよ。走るのも気持ちいいですよ」

そうか?

「ルッツ君とユリアーナのデートは暑苦しそうだね」

「そんな気がする」

軍人だし。

「そんなことありませんよ。雨の日は家で過ごします」

雨じゃなかったら確定で外なの?

ないわー。

「インドアの俺達とは相容れないな」

「あなた達だって海に行ってたじゃないですか」

そういや前にレオノーラと海に行く道中に会ったな。

「魚を釣って食べただけだよ」

「良いことです。私も遊びに行きたいです……」

まーだ休みが取れてないのか?

「そんなに忙しいのか?」

「あ、休みはありますよ。ルッツとタイミングが合わないだけです」

あー、そういうこと。

軍は365日24時間営業だからウチのように決まった休みはないのだ。

「隠すからじゃないか? おおっぴらにすれば周りも考慮してくれると思うぞ」

「うーん……悩ましいですね。下手に気を遣われるのも嫌ですし」

ふーん……まあ、好きにすればいいけど。

俺達はその後も歩いていき、港に到着した。

港は相変わらず、商人や漁師で賑わっている。

「ドックってどこだ?」

「ここから西ですね。港の外れになります」

俺達は引き続き、ユリアーナの案内で海沿いを歩いていった。

すると、商人や漁師がいなくなり、軍人が増えてくる。

「軍港か」

「ええ。この辺りから軍の関係者が増えてきます」

「絡まれることはないだろうな?」

女ばっかりだぞ。

「いませんよ。錬金術師協会に手を出したらシャレになりませんからね。魔法使いは国の宝ですから重罪です。というか、同僚に身内がいますよ」

「まあ、それもそうか」

ルッツとエーリカは従兄妹同士だしな。

それに少佐があんなことになったから変なことはしてこないか。

「あそこがドックになります」

ユリアーナがいくつか並んでいる倉庫の1つを指差した。

「あれがドックか……」

倉庫の先は海に向かって坂になっており、レールが敷かれている。

おそらく、作った船を海に送る装置だろう。

「あの施設は町が管理しているものになります。港町では船が生命線になりますので町全体で管理、製造しているんです。依頼主が町長なのもそういうことです」

なるほどね。

俺達は一番手前にある倉庫まで行くと、シャッターを開ける。

すると、中には様々な機械が置かれているものの空だった。

「最低限の機材はありそうだな」

「もちろんですよ。王都ほど機材が揃っているわけではありませんが、ウチの町も船に関してはお金をかけています」

ふーん……

「設計図はあるか?」

「こちらです」

ユリアーナが紙を渡してきたので見てみる。

「小型の魔導船か」

小型とはいえ、全長20メートル以上ある。

「形などは規定で決まっています。詳しくは設計図をご覧ください。正直、私にはチンプンカンプンですので」

そりゃそうだ。

「依頼料は?」

「5000万エルになります」

「安くないか? 軍用船だろ?」

「軍用船ですが、補給船になります。ですので耐久面は重視していません」

そう言われて見てみると、確かに動力は魔道具による特殊なものだが、他は普通の木材となっている。

「大砲もなしか?」

「当然です」

だったらそんなもんか。

「材料は?」

「申請してもらえば随時届けます」

「わかった。この依頼を受けよう」

変なところはないし、問題ないな。

「ありがとうございます」

「作業は時間の空きを見ながら適当に入るから木材をその辺に置いておいてくれ」

「わかりました。では、後日、契約書を支部に送ります」

さすがにこの規模の仕事だと口頭発注とはいかんか。

「頼むわ」

俺達は仕事を受けることに決めると、ユリアーナと別れ、支部へと戻った。