軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第169話 船

休みに美味しいプリンを食べ、心身共に休息を取った俺達はまた1週間が始まる。

俺達はまず、ゾフィーのためのデスクを用意し、その後はひたすら仕事を続けていた。

「地味な作業だねー……」

「私は子供の頃の工作の時間を思い出すわ……」

ガーゼと木箱を作るという単純作業をしている貴族2人がぼやく。

「錬金術なんてそんなもんだろ」

華やかさはゼロ。

そういうのが欲しいなら魔術師になることだ。

「まあねー……」

「運動不足になるわよね?」

アデーレがレオノーラを見る。

「走れば?」

「嫌よ。走るの苦手だもの」

お前もか……

「50メートル何秒? 私、13秒」

嘘つくな、15秒。

「えー……確か10秒位かな?」

2人より速いが、やっぱり遅いな。

「めちゃくちゃ速いじゃないか……」

「そうかしら? ん? お客さんね」

アデーレに言われて正面玄関の方を見ると、確かにお客さんが来ていた。

「ルッツ君の彼女さんだねー」

「ユリアーナさんですね」

確かにルッツの彼女のユリアーナだ。

「仕事かな? ちょっと行ってくる」

ユリアーナなら俺でも対応できるので立ち上がり、受付の方に向かう。

「こんにちは、ジークさん」

ユリアーナがいつもの悪意ゼロの笑顔で挨拶をしてくる。

この町の人間は基本的に明るいのだ。

「よう。地味に久しぶりだな」

「ですねー。それにしても綺麗になりましたね」

ユリアーナが辺りを見渡す。

「そういや初めてだったな。新築になったわ」

「良いですねー」

「一時はどうなることかと思ったがな。それで仕事の話か?」

本題に入る。

「ええ。依頼の件です」

「そうか。まあ、立ち話もなんだし、中に入れよ」

「ありがとうございます」

ユリアーナを受付内に入れると、アトリエに入り、応対用のソファーに座らせた。

すると、すぐにエーリカがお茶を持ってきてくれる。

「ユリアーナさん、こんにちはー。どうぞ」

エーリカがお茶を置き、隣に腰かけた。

「ありがとうございます。あ、王都土産もありがとうございます。若干、からかわれているような気がしましたが、嬉しかったです」

以前、ルッツに王都土産を渡したのだ。

「あれで良かったか? 俺は悪意を感じたぞ」

渡したのはお揃いのコップだが、くっつけるとハートマークになるというどう反応していいかわからない商品だった。

なお、選んだのは女性陣。

「まあ、ああいうのも良いものですよ。ルッツは微妙な表情をしてましたけど」

俺ももらったらそうなる自信がある。

「ならいいけど……それで依頼の話って何だ? キュアポーションの依頼が変更にでもなったか?」

「あ、それはそのままお願いします。依頼というのは軍船のことです。話が行ってないですかね?」

あー、船って軍船か。

「支部長経由で聞いている。依頼主は町長だったな?」

「はい。町の事業ですので」

ふーん……

「戦争でもすんのか?」

「どことやるんですか……そんな物騒な話じゃないです」

まあな。

この町は港町ではあるが、他国は遠いし、戦争なんてまず起きない。

「じゃあ、海賊でも出たか?」

「いえいえ。古くなったので新たに作ることになったんですよ」

なーんだ……

まあ、平和で良いことだ。

「ウチに頼むということは魔導船だな?」

「はい。経緯を説明します。実はウチの魔導船は定期的にこちらに卸してもらってはいるのですが、ここのところはゼロです」

そりゃそうだ。

「すまんな。この前までエーリカとレオノーラしかいなかったし、ほぼ新人でノウハウを知らんから無理だ」

「事情はもちろん、承知しています。なのでこれまでは民間にお願いしていました」

当然、そうなる。

「高いだろ?」

「ええ。こちらから卸してもらっていた額の倍以上です」

「本来はそういう価格調整のために協会があるんだが、以前のここではな……民間は営利組織だから足元を見る」

そのためにウチを潰そうとしているんだろうがな。

「はい。非常に困ってました。船は安くないですし、ウチだって余裕があるわけじゃないですからね。平和がゆえに年々、予算が下がっています。治安維持や災害に備えて軍縮するわけにはいかないというのに…………あ、すみません。愚痴を言っちゃいました」

軍の辛いところはそういうところだな。

軍がありがたがられる時は非常時である。

当然、誰もそんなことは望んでいないし、仕事がないのが一番だ。

でも、そうなると不要論が出てくる。

ホント、先が見えない愚かな民衆は……やめよ。

「別にいい。そういうのはどこもあるしな」

「すみません……まあ、そういうことがありまして、支部に船の発注するのを見送っていたのですが、ジークさんに加えて、アデーレさんも赴任してきましたし、船もできるんじゃないかという話になったんです」

ふーん……

「一応、言っておくが、船は4人で作るもんじゃないぞ?」

「それは承知していますが、大佐が国一番のジークさんならできるだろうということで……」

まあ、できるが……

「内容は?」

「軍船を5隻です」

「無理」

アホか。

「あ、すみません。これは全体でした。支部に頼むのは1隻です。全体の価格を下げたいんですよ」

あー、はいはい。

ウチが安く受注するから他の4隻も下げるわけね。

「ウチの1隻が下がったところでどちらにせよ、足元を見られるのでは?」

エーリカが聞いてくる。

「まあ、待て。ユリアーナ、納期は?」

「支部に関しては特に設けません。ただ、1年とか延ばされるときついです」

そんなことせんわ。

「エーリカ、もし、民間が高額の依頼料をふっかけてきても、だったらウチが全部やるって言えばいいんだ。期間はないし、やれないことはない」

やらないけどな。

「できるんです?」

「俺ならやろうと思えばできる。それに他所の支部から人員を引っ張ってくればいいんだ」

「え? そんな無茶な……」

無茶だが、できる。

「方法はいくらでもある。ゾフィーのような臨時の出向もあるし、ウチが引き抜かれたように強引な引き抜きもやろうと思えばできる。実際はそんなことせんが、民間にそんなことはわからん。船の製造は大口の依頼だし、適正価格でも十分に儲かるんだから今のぼったくり価格を下げても受ける」

あくまでもぼったくりをやめるだけで正規の依頼料でもウハウハだ。

それほどまでに船を造るというのは儲かるのだ。

これが飛空艇になればもっとになる。

「なるほどー。協会ってそういう役目もあるんですね。勉強になります」

ほぼそういう役目のためだけどな。