軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第152話 将来

「マリー、マルティナはどうだ?」

俺が聞きたいのはマルティナの件だ。

本部の争いなんかどうでもいい。

「お前が言うようにすごい魔力ね。それに間違いなく、才能もある」

「その割には辛辣だったな」

「あれくらい普通よ。むしろ、学校で何を習っているんだって思ったくらいです。でもまあ、それはあの娘ではなく、学校側に言うことですね。どこの教師も程度が低いわ」

うーん、やはり辛辣……

俺は似たようなことをエーリカに言ったのか……

そりゃレオノーラとアデーレが苦言を呈するわけだ。

「本部長と比べるからだろ」

「それでもですよ。お前だって、在学中にそう思っていたでしょ」

「まあな。でも、教師連中や学校にそんなものは期待していない。俺はあの学校を卒業したという肩書が欲しかっただけだ」

それがあるのとないのとでは出世のスピードが違う。

「そうでしょうね。まあ、学校批判はやめましょうか。時間がいくらあっても足りません」

確かにな。

「マルティナはいらんか?」

「来週の答え次第です。わたくしはお前と違ってバカでも見捨てない。でもね、努力をしない人間は嫌い」

俺だってそうだよ。

「俺の見立てでは3級か2級程度にはなれそうだぞ」

「かもしれませんね。でも、邪魔なのは母親です」

邪魔という言い方は微妙だが、同意。

「会って話したが、娘の幸福を願っていそうだったぞ」

「ふーん……あえて聞きませんでしたが、父親は?」

「随分前に戦死しているようだ。西部の戦争だな。だから母親と2人家族だ」

「2人……手放す気はなさそうね」

マリーが悩みだした。

「そうか? 娘が選んだ道ならその道に進んでほしいって言ってたぞ」

「口ではそう言うけど、手放さないのが親よ。ましてや、一人娘なんでしょ?」

もし、マルティナがマリーの弟子になるのなら王都に行くことになる。

当然、離れ離れだ。

「電話で教えるとか?」

「そんな非効率なことをするくらいならいらないわよ。わたくしには他に10人以上の弟子がいるのよ?」

多いな……

それこそ非効率だろ。

「母親を説得できるか?」

「いくらでも。でも、そうするかはマルティナ次第。そういうわけでわたくしはバカンス……ねえ、他に見るスポットとかないの?」

「地元民が言うには西の山で登山らしいぞ」

「行きたくないわねー……でも、テレーゼを連れていこうかしら? 身体を動かさせて、気を紛らわせるのも効果的かもしれませんし」

超インドアなテレーゼが山……

違う意味で死ぬんじゃないか?

「無理はさせるなよ」

「大丈夫よ。わたくしだって嫌なんですから……よし! 午後から登りましょう!」

マリーがそう言って立ち上がった。

「急だな」

「1人で海にいてもつまらないです」

気付くの遅いな……

「そうか。じゃあ、俺は仕事に戻るわ」

「そうしなさい。時にジーク」

「何だよ?」

どうでもいいけど、こいつ、どこで水着に着替えたんだろう?

「なんで今週末はホテルのレストランがダメなの? ホテルマンからイベントなんてないって聞きましてよ?」

確認したか。

「別にいいだろ」

「いや、あそこの料理は美味しいし、眺めが最高なのでテレーゼを癒すにはちょうどいいんだけど……」

そう言われるとなー……

「その日は国家錬金術師試験の合格祝いがあるんだ。サイドホテルのレストランでアデーレと食事するんだよ。もう予約も取ってある」

「そういう……なんか嫌なことを聞いたわね。そのままホテルに泊まるんでしょ」

なんでだよ。

「普通に帰るわ」

「……まあ、いいでしょう。テレーゼの気分が悪くなりそうなのでその日は町の店に行くことにします」

悪くなるのはお前の気分だろ。

「そうしろ。森に山、さらには海もあって自然豊かだから食材が豊富なのがこの町の良いところだ。色んな物を食った方が良いぞ」

「まあ、それもそうね。せっかく遠い地に来ているんだしね」

「そうそう。じゃあな。来週、また来てくれ」

「はいはい……」

ハイデマリーと別れると、支部に帰る。

そして、席につくと、冷めたお茶を一口飲んだ。

「どうでした?」

エーリカが作業をしながらもこちらを見て、聞いてくる。

「マルティナ次第だそうだ。ハイデマリーもマルティナを高く買っていたが、こればっかりはな……」

本人の意思がいる。

「まだ高2なんですけどね。そのくらいの私なんか全然、先のことは考えていませんでしたよ」

「そうなのか? その時には錬金術師を目指していたんだろ?」

「もちろんですよ。でも、どこに就職するかは決めていないどころかどういうところがあるかもわかっていませんでした。卒業前に見学に来て、ここが一番、町に貢献できると思ったんですよ」

師匠がいない学生はそんなものかもな。

そして、当然、マルティナもそうなのだ。

「レオノーラは? お前はここが地元じゃないだろ」

「うーん……協会に入ることは魔法学校に入った時から決めてたよ。あとは3年の時に色々と調べてねー。それで一番人がいなさそうなところにした。ほら、就職しやすいじゃないか」

そっちか。

「アデーレは一番良いところか?」

「まあ、そんなところかしら? 民間ってあまり貴族を雇ってくれないし、レオノーラと一緒で最初から協会希望だったわ。それで地元には支部がないし、私も色々考えて、3年の時に王都の本部に決めたの」

アデーレの地元って支部もないところか……

まあ、田舎なんかになると、複数の町で1つの支部ってこともあるしな。

「そんな感じか……」

俺は師匠である本部長がいたし、民間はごめんだったから消去法で本部だった。

マルティナは学校で勉強し、国家錬金術師か薬師の資格を取って、店を手伝う予定だった。

そして、いずれはお母さんの跡を継ぐつもりだったんだろうな。

でも、それはどう考えても叶いそうにない。

俺達が……ハイデマリーができることはただ1つ……

あの親に店を捨てさせることだ。