軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第151話 兄弟子と姉弟子の争い

「俺が変わったと言うならば、確かにあの3人とこの町のおかげだろうな」

「ふん。クソ生意気なガキが大人になりましたか」

実はお前より精神年齢は上だけどな。

「マリー。お前、何しに来た?」

「お前が呼んだからです。逸材がいると言うので見に来たんです」

「それだけでお前は来ない」

他にあるだろ。

「お前……本部長に何か言われましたか?」

やっぱりそれか。

「次の本部長になるように要請された」

「チッ! やっぱりお前か」

舌打ちするな。

「なんでそう思った?」

「本部長がわたくし達の中でも特にお前に目をかけていたのは周知の事実よ。理由もわかる。お前が一番問題児であったことは確かだけど、それ以上に能力が突出していた。わたくしだって、一門の中でお前が一番優秀なのはわかってる。認めたくないけどね」

認めろよ、4級。

「俺は自分で本部長より上だと思っているわ」

「わたくしもそう思っているわ。本部長はもう錬金術の仕事をしていないし、とっくの昔に抜いているでしょう」

本部長は実務なんかせんしな。

「お前は本部長の後継者になりたいのか?」

「当たり前よ。わたくしの目標は師であり、あの人を超えるために努力してきた。まあ、薬品生成という分野に限れば超えたと思っているけどね」

そうかもな。

「クリスは?」

「お前の次に脅威よ。錬金術の腕もあり、上級貴族。さらには人徳もあり、派閥を広げている」

派閥なんか作ってやがる。

「お前も派閥を作れば?」

「作ってます。クリスに対抗しなければならないからね。貴族は時に有利に働くけど、不利に働くこともある」

妬みなんかもあるし、単純にいけ好かないからな。

「そうかい……言っておくが、俺は辞退したぞ」

「やはりそうなのね……」

わかっていたらしい。

「知っていたのか?」

「本部で噂になっているし、わたくしもそうじゃないかと思った」

ほう?

「なんでだ?」

「本部長がお前を魔剣作成の依頼で呼び出したと聞いて、焦ったのよ。本部長はお前をここに左遷したけど、いずれは戻すつもりだということはわかっていたからね。そして、呼び戻す時こそがお前を後継者に指名する時っていうのもね」

ふーん……

「そういう意図はあったかもな。俺は敵を作りすぎたからこの地でそれを見直せっていうことだろう」

「そうね。そして、お前は王都に戻ってきた。でも、あっさり帰っていった。その理由を知りたくてこの地に来たのよ。最初にお前達のバーベキューを見て、すぐにわかったわ。あー、こいつはこの町で生きるんだなってね。戻ってくる気がないわって」

まあ、そうだな。

「楽しいぞ」

「そりゃそうでしょうよ。酒池肉林じゃないの。自分に逆らう者もいない、弟子という自分をヨイショしてくれる女共を侍らかす。まあ、戻らないわよね」

「色々とニュアンス的に否定したいが、まあ、それでいい」

大きな意味では同じだ。

「あの3人は優秀なの? 魔力的には平凡だったけど」

平凡言うな。

「優秀だ。まずもって頭が良い。お前よりもな」

「ふーん……まあ、アデーレは確かに頭が良かったわね」

「知っているのか?」

「受付のくせに9級でしょ? 頭が良くないと無理よ」

実践経験がほぼないからな。

「顔だけって言っただろ」

「ムカつくのよ」

見苦しい奴……

「ハァ……お前、クリスと争うのか?」

「ええ。本部長は孤児であるお前を息子のように可愛がっていた。だからお前に負けるのは諦めがつく。でも、あの野郎に負けるのはわたくしのプライドが許さない」

同い年でライバルだからな。

しかも、俺の目にはクリスよりもマリーの方が頭の良さも錬金術の腕も上に見える。

だが、クリスの方がいつも一歩前にいる印象だ。

「クリスは3級だぞ」

「次で並びます。もはや手段を選んでいる段階ではなくなったわ」

手段って……こいつ、自分がなんで落ちているのかわかっているのか?

「クリスも動き出したか?」

「ええ。さっき派閥を広げていると言ったでしょう? あいつもわたくしと同じよ。お前という存在がいなくなったらチャンスはある。そして、自分が最有力だと理解し、足元を固めているのよ」

確かに最有力だと思う。

マリーは良い意味でも悪い意味でも突出しすぎている。

その点、クリスは安定している。

「テレーゼは?」

「わたくしに付きます。貴族に逆らえない子ですが、長年の友人であるわたくしに付くに決まっています」

クリスが優勢だが、序列4位のテレーゼはマリー派閥か。

それは魔導石製作チームという協会の屋台骨がマリーに付くことを意味する。

「飛空艇製作チームは?」

「あそこのリーダーの嫁が誰か知らないの?」

魔導石製作チームのコリンナ先輩か。

となると、マリーに付く。

数のクリスか質のマリーの争いだな……

「俺が本部長の指名を受け入れていたらその二大派閥が俺を降ろしにきたわけか」

「当たり前」

諦めが付くと言っていたが、そんな簡単に諦める連中ではない。

俺は錬金術師としては優秀だが、人望なんかないし、派閥も作らないから争おうと思ったら勝てると思っているわけだ。

もっとも、そんな脆弱な烏合の衆は相手にならんがな。

しかしまあ、受けなくて良かったわ。

自分の能力で勝てないからと言って、群れる奴の相手なんかをしたくない。

「せいぜい俺の知らないところで争ってくれ。俺はもうそういうのは清々したわ」

アウグストで十分。

「ジーク、わたくしに付きなさい」

「嫌」

アホくさ。

「わたくしが本部長になった暁にはお前をリート支部長にしてあげますよ?」

「いらん。今の支部長は口は出さないが、責任は取るし、金も出してくれる元西部戦線の英雄だ。あの人には死ぬまで支部長の椅子に座ってもらうつもり」

辞めてもらっては困る。

「すでに後ろ盾を得ていましたか……」

「マリー、本部長が掲げた理念を言ってみろ」

「実力主義……」

「そうだ。身分も立場も関係ない。ただ実力がある者が上に行くべき。それが本部長の教えであり、現在の錬金術師協会の理念だ。派閥なんか関係ないし、誰がお前やクリスを支持しようが関係ない。このままではクリスに負けるぞ、4級」

あいつは次の試験で絶対に2級を狙うだろう。

「なんでわたくしは3級に受からないんですかね?」

やっぱりわかってない……

「問題文を否定し、厭味ったらしく長文を書くのをやめろ。じゃなきゃお前が3級ごときに落ちるわけないだろ。試験官なんてお前以下のバカなんだからそれを頭に入れろ。弟子が作った問題文だと思って、温かい目で見て、解けばいい」

マリーは頭も良いし、実技は完璧なのだ。

すでに2級になっていないとおかしいレベル。

「そうします……」

さっさと気付けよ、バカ。

そのくだらないプライドこそがクリスに勝てない最大の理由だろ。