軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

エリートの先生対落ちこぼれの先生~圧倒~

「れ、レオン!?」

『あわわわわ!』

『しまったっ! やりすぎた!』

『初めてだったから、レオンの魔力量が分からなかったんだ……』

『ど、どうしよう!?』

『レオン、しっかりして!』

どうやら、レオンは精霊たちの魔法のせいで、MPが無くなったことで、気絶したらしい。

そんなレオンに急いで近寄ろうとすると、脳内に再びアナウンスが流れた。

『【大精霊魔法:火】を習得しました。【大精霊魔法:水】を習得しました。【大精霊魔法:風】を習得しました。【大精霊魔法:土】を習得しました。【大精霊魔法:雷】を習得しました』

「がはっ!?」

「誠一!?」

俺もその場に倒れた。

だってオカシイじゃん!? 精霊魔法だよ!? それも大精霊! 何で使えるようになってんの!?

これってさ、精霊と契約して使えるようになるとかっていうヤバイヤツなんじゃないの!? 使えるようになっちゃったけどさぁ!

予想外のところから精神的攻撃を受け、崩れ落ちた俺だが、すぐに立ち上がるとレオンに駆け寄る。

そして、精霊たちに話しかけながらレオンを抱きかかえた。

「えっと、レオンを保健室に連れて行って、休ませたいんだけど……いいかな?」

『え? う、うん、それはいいけど……』

『って、何で僕らが見えるの!?』

『エルフ……じゃない、人間なのに!?』

案の定、俺が精霊たちの姿をみえることに驚きの声を上げた。

「そこはまあ……触れないで。悲しくなってきた」

『え? あ、ご、ゴメンね? なんか……』

「いや、いいんだ……それじゃあ、連れて行こう」

精霊にまで気をつかわれてしまった。

そんなわけで、すぐに保健室に連れて行こうとすると、Sクラスの方から声が飛んできた。

「ま、待て! 貴様……よくも私の経歴に傷をつけたな……!」

「はい?」

振り向くと、顔を真っ赤にしたSクラスの先生……えっと、クリフ先生だっけ? が、俺を睨みつけていた。

「あの……言ってる意味が分からないのですが……」

「ハッ! これだから平民は……人語すら解さないのかな? 哀れな……」

えー……何で俺が哀れに思われてるの……。

「ともかく、貴様は私の経歴に傷をつけた。これが何を意味するか分かっているのか?」

「いえ、まったく」

「なっ!?」

いや、そんな驚いた顔されても……何の意味があるの?

それに、この人……傷ついて倒れたのは自分の生徒なのに、自分の経歴しか気にしてないのか?

思わず眉間にしわが寄ると、司会の声が聞こえてきた。

『次々とトラブルが起きますね! 非常に面白い展開です!』

『そうですね』

野次馬根性爆発させ過ぎかよ!?

この状況を容認していいの!? いや、俺が話を切り上げればいいのかもしれないけど、相手がそれを許してくれそうな気配がないんですが!?

思わず観客席にいるバーナさんに視線を向けると、バーナさんもなぜか楽し気に笑っていた。

誰も止める気ないの!?

いや、リリーさんやマイケル、バーナさんは純粋に楽しんでるけど、他の観客は何か今から俺が一方的にクリフ先生にボコボコにされるのを期待してるような視線を向けてくるんですけど!?

アルやFクラスのみんなは心配そうに俺を見つめているし……いや、サリアとルルネだけニコニコしてた。

それにしても、やっぱりFクラスがSクラスを倒したところで、認識は簡単に変わらないんだな。

むしろ、Fクラスの分際で調子に乗りやがって感が半端じゃない。

だからこそ、こうしてFクラスの担任である俺がボコボコにされる姿を見て、溜飲を下げようとしているのだろう。もっと俺に優しくしてっ!

「あー……生徒を保健室に連れて行くので、俺はこれで……」

やんわりと会話を切り、クリフ先生に背中を向け、立ち去ろうとしたときだった。

「っ! 兄貴、危ねぇ!」

アグノスの声が、飛んできた。

その声を聞いて俺は驚くと、アグノスは俺の後ろを指さして焦っている。

いや、アグノスだけじゃなくて、Fクラスのみんな全員が焦りの表情を浮かべていた。

俺も後ろを振り返ると、俺の目の前には炎の槍が。

この校内対抗戦で何回か見た、『ファイアーランス』が俺に迫ってきているのだった。

レイチェルとフローラの叫び声が耳に届き、俺に迫る『ファイアーランス』に気付いた精霊たちが何とか防ごうとするも、魔力の供給源であるレオンはMP切れで気絶をしている。

この瞬間、誰もが俺に『ファイアーランス』が直撃すると思っただろう。

――――俺以外は。

「あぶねっ」

俺は、反射的に右手で『ファイアーランス』を 掴んでいた(・・・・・) 。

「…………………………は?」

まず、クリフ先生が間抜けな顔をして、そう口にした。

おお、なんか反射的に掴んじゃったけど、いけるもんだな。熱くないし。……あれ? もしかして、この行動がすでに人間を辞めてる証拠なんじゃ……。

ふと、そんな思考がよぎった瞬間、クリフ先生は正気に返り、なぜか魔法を連射してきた。

「き、貴様! 一体何をしたああああああああああああッ!?」

「ええっ!?」

唐突に叫ばれ、思わず俺も驚くと、クリフ先生は『ファイアーランス』と『サンダーランス』を大量に射出してきた。

そんな魔法の攻撃を、何回か手に持っていた『ファイアーランス』で軽く打ち払い、俺は特に何か感じるわけもなく追加で右手の指の間で三本受け止めると、それを軽く放り投げ返した。

すると、俺に向かってきていた『ファイアーランス』も『サンダーランス』も、俺の投げ返した魔法で、跡形もなく消し飛んだ。

それどころか、俺が投げた魔法は、クリフ先生が放ったときより明らかに威力があがっており、魔法を消し飛ばしただけにとどまらず、クリフ先生の周囲の地面を吹っ飛ばした。

「ひぃぃぃぃぃいいいいい!?」

「あ」

メッチャ手加減したはずなのに……それでもあの威力っておかしくねぇか?

クリフ先生は俺の投げ返した魔法の威力に腰を抜かし、その場に座り込んでしまった。

……これならもう魔法は放ってこないだろう。

そう思い、今度こそレオンを保健室に連れて行こうとしたのだが――――。

「こ、この私をバカにしやがってぇぇぇぇぇぇぇえええええええ!」

「へ?」

そんな絶叫が聞こえたので、もう一度振り向くと、今度はさっきの倍以上の魔法が、俺めがけて飛んできていた。

無防備な相手にそもそも魔法を放つのはどうかと思うのだが、それ以上に普通の人だったら完全に消し炭だよね? これ。

……いや、俺が普通の人じゃないって言ってるんじゃないですよ? そこを間違えないでもらいたいねっ!

誰に向けて言ってるわけでもない言葉を内心で呟きながらも、俺はこう何度も俺の行動を邪魔されることに若干イラッとした。こっちは気絶した生徒がいるんだから、早く保健室で休ませてあげたいのに……。

そんな気持ちを込めて、思わず向かってくる魔法を睨みつけた時だった。

魔法が、一斉に動きを止めた。

「……………………………………………………へ?」

「はい?」

クリフ先生は、何が起こったか分からないといった様子で、最初のとき以上に間抜けな顔を晒していた。

それに対して、俺も思わず魔法が急に止まったことに首を傾げる。

すると、魔法はまるで、何かを恐れているような……いや。これ、俺を恐れてるような……?

とにかく、魔法はその場で激しく震えはじめると、一斉に矛先がクリフ先生へと変わった。

「ふへ?」

「え?」

そして――――。

「い、いやいやいやいやいや! 待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て! 私が放った魔法だぞ!? なぜこっちに向いている!? なぜ私が放ったとき以上の速度で迫ってきているのだ!? なぜ途中で枝分かれして、私が放った以上の数になっているのだああああああああ!? き、ききき貴様! 何をしたあああああああああああああああああああああああああ!?」

「さ、さあ?」

「やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ! 来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな! や、やめ――――」

「あ」

ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!

「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」

一発一発がとんでもない威力の魔法が、とんでもない数の暴力でクリフ先生を飲み込んだ。

数十秒もの間、魔法はクリフ先生に降り注いだ。

やがて魔法がピタリと止まると、なぜか空中に停止した残りの魔法が、まるで俺の顔色を窺うように、恐る恐るといった様子で振り返った。

…………いや、意味が分からねぇ。

思わず首を横に振ると、魔法は慌てた様子で再びクリフ先生に向かって大量に降り注いだ。

「あはがぼぐべぎゃきょくわぉあらふぁふぇだがぎょかっばばげばごごぐげぎいかあああああああああ!?」

もはや意味の分からない叫び声が聞こえてくる。

また数十秒が経って、魔法の攻撃が収まると、同じように空中に停止した魔法が俺の顔色を窺うように振り返って来た。

ますます意味が分からず、呆然としたまま首を横に振ると、魔法はもう一度クリフ先生に攻撃を開始しようとしたので、そこでようやく正気に返った俺は、慌てて止めた。

「い、いやいやいやいや! もうやめたげて!? 文字通りクリフ先生のライフはゼロだ! って、俺はなんで魔法に制止の声をかけてるの!?」

意味が分からないのはそのままだが、このままだとクリフ先生が天に召されちゃう! いや、クリフ先生の魔法だけどさ!

俺の声がなぜか魔法に届いたらしく、魔法は表情も感情も何もないはずなのに、炎の槍の形で器用に安心した仕草を見せると、残っていた魔法は全て消えていった。

砂埃が晴れ、クリフ先生がいる場所に目を向けると、全裸状態で白目をむきながら失禁している、ハゲの男性が転がっていた。

…………。

「保健室に行こう」

俺は保健室へと向かうのだった。