軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

校内対抗戦~兄弟の因縁の対決~

みんな、急なレオンの動きに呆気にとられていると、レオンは闘技場へと向かった。

それを見て、いち早く我に返ったブルードが声をかける。

「おい、レオン! 一体何を――――」

「訂正しろっ!」

レオンは、珍しく大声で叫んだ。

「あ~? よく聞こえないなぁ?」

「訂正しろって言ったんだ!」

相手の生徒と向かい合う形で闘技場に立つと、レオンはもう一度力強く言い放った。

「お前……いつからそんなに偉くなったんだ? ああ!? 兄への言葉遣いがなっていないなぁ!?」

「っ!」

威圧するように、それでいて人を見下した笑みを浮かべながら、相手の生徒はレオンに言う。

それを受け、レオンは一瞬怯んだ様子を見せるが、すぐにまた、鋭い視線を相手に向けた。

「そんなこと知らない! 今すぐ、みんなをバカにした言葉を取り消せ!」

「無能に無能と言って何が悪い? 図星を突かれて悔しいんだろ? お前も、今となっては魔法も使えない落ちこぼれだもんなぁ?」

「だからなんだ! 僕のことをバカにするのはいい。でも……みんなの努力をお前に否定する権利はない!」

「……兄に向って≪お前≫だと? ……本当に生意気なことを言いやがって……いいだろう、兄である俺に楯突いたこと、後悔させてやるよ……」

「後悔なんてしない。僕は、貴方を許さない」

目の前で火花を散らす二人。

……突然すぎて分からなかったが、どうやら相手の生徒はレオンの兄らしく、さらにレオンのトラウマの元凶でもあるようだ。

『こ、これはどういうことでしょうか? マイケルさん……』

『いや、部外者である私が分かるわけないじゃないですか……ただ、並々ならぬ因縁がある模様』

『そうですね……ともあれ、こうして闘技場に向かい合っているということは、戦うということで話を進めていきましょう! というより、家庭の事情持ち込みすぎですね!』

『同感ですね』

本当にね!

面倒くさいくらいに家庭の闇が見えるよ!

『ですが、まあ……二人ともやる気なようなので、試合をしてしまいましょう!』

そして司会も軽いっ!

もうちょっと空気読んでもいいんじゃない!? いや、重苦しい空気も嫌だけどね!

『では! 両者ともやる気十分なようなので、このまま進めたいと思います! Sクラスのフリード選手対レオン選手! 試合……開始!』

リリーさんの合図とともに、試合が開始すると、俺は突然レオンの周りに現れた五色の光の玉を見て固まった。

「な、なあ……レオンの周りに何か飛んでないか?」

「ん? 俺には何も見えないが……」

『何か見えたのか?』

「何もないと思いますけど~……」

俺の質問に、ブルードたちが答えてくれたが、なんと、レオンの周囲を飛んでいる光の玉が見えるのは俺だけのようで、サリアやルルネでさえ見えていないようだ。

あまりにも突然すぎて、俺の目がおかしくなったのかと思い、俺以外にもレオンの周囲の起こった変化に気付いた人がいないか確認するために観客席などを見渡すと、バーナさんだけ、目を見開いていた。

……バーナさんと俺には見えて、他には見えていないって……ますます分からなくなったぞ。

首を傾げている間にもレオンの周りに浮かぶ赤・青・黄・緑・橙の光は、嬉しそうにレオンの周りを飛び回っている。

どやらレオンにも光の玉は見えているらしく、それどころかその正体と会話すらしているようだ。

そんなことを続けていると、今まで無視というか放置されてたフリードとやらは顔を真っ赤にしていた。

「こ、この俺を前にしてよそ見をするとは……ぜってぇ許さねぇ……!」

そんなことで怒るなよ……カルシウム足りてないんじゃない? 牛乳飲みなさい。

フルフルと震えるフリードを無視して、俺もレオンがどんな会話をしているのか化物じみた聴力を駆使して聞いてみる。

『やっと君に声をかける事が出来た!』

『よかったぁ!』

『このままダメになるんじゃないかってヒヤヒヤしたよ~!』

『でもこうして立ち直ってくれてよかった!』

『仲間の力だねー!』

光の声は、どれも幼い子供のようで、レオンと会話できることが嬉しくてたまらないといった様子だった。

「き、君たちは……?」

『僕たちは精霊!』

『それも、普通の精霊じゃないよ? 大精霊!』

『火・水・風・土・雷の大精霊だよ!』

「せ、精霊!?」

何と、レオンに話しかける光の正体は、精霊らしい。

って、みんなが見えないのにバーナさんが見えるのは、いわゆるエルフだからで、俺が見えるのはスキル『世界眼』のせいだろうなぁ。見えないものが見えるって書いてあったし。

『僕たちはずっと待ってたんだ!』

『君が、魔法を使えるようになるのを!』

『ゴメンね? 君が辛いとき、助けてあげられなくて……』

『僕らは、契約しないと助ける事が出来ない』

『幼い君には、僕らの力は大きすぎたんだ』

『でも、今は違う!』

『そう! 君と契約する事が出来る!』

「ぼ、僕なんかと……? どうして……?」

『君だからいいんだ! 君じゃないと嫌だ!』

『そうだよ!』

『みんな、君と契約したいんだ!』

精霊たちは、レオンに必死に訴える。

それを受けて、レオンは顔を俯かせながらポツリとつぶやいた。

「……正直、僕はまだ、魔法が怖い。いや……兄が怖いんだ」

『……』

「あれだけ大口叩いたけど、僕は兄に勝てない……心が、もう負けかけてるんだ……」

『……』

「でも……それでも……僕は、みんなをバカにした兄を許せない」

『レオン……』

「君たちと契約すれば……僕は兄を倒す事が出来る……? こんな僕でも……もう一度、前を向く事が出来る……?」

レオンの、切実な思いに、精霊は力強く頷いた。

『もちろん!』

その瞬間、俺の目には、レオンと精霊たちの間に強力な繋がりが見えた。

その繋がりは形となって、レオンの手の甲に現れる。

手の甲には、精霊のシルエットが描かれた紋章が現れていたのだ。

「こ、これは……?」

『それは、僕たちと君の契約の証!』

『さあ、見せてあげる!』

『君が手に入れた、仲間を守る力を!』

『今まで君を守れなかった、僕たちの想いを!』

『大精霊の力を、君のお兄さんに思い知らせてあげよう!』

そんな会話をしている中、もう一度フリードの方に視線を向けると、彼は顔を真っ赤にしていた。

「許さねぇ……! ここまで俺を無視しやがって……! ザコの分際で……俺を無視するなああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

なんか、メチャクチャ怒ってるな。

「なぁ、なんで相手はあそこまで怒ってるんだ?」

「は? いや、フリードが罵詈雑言を浴びせる中、レオンがことごとく無視をしたからであろう」

思わず近くにいたブルードに訊くと、どうやらフリードは攻撃を仕掛けず、ずっと悪口を言ってたらしい。いや、結構長い間レオンたちが会話してたと思うけど、その間ずっと悪口言えるってある意味すごいな。ボキャブラリーが豊富で羨ましい。いや、悪口系のボキャブラリーはいらないけどさ。

とうとう我慢の限界に達したのか、フリードは両手を広げ、魔法を発動させた。

「お前のトラウマを思い出させてやる……! せいぜい、泣き震えるがいいさ!」

フリードは、炎の槍を数本出現させた。

「昔は【ファイアーボール】で焼いて遊んだが、今は違う! この【ファイアーランス】で内臓まで焼いてやる……! いけぇっ!」

思考回路が物騒だな、おい。

思わず内心でそうツッコむと、炎の槍は勢いよく射出され、レオンめがけて飛んでいった。

だが――――。

「う、うわあああああああっ!」

『大丈夫、安心して!』

『僕が君を必ず守るから!』

精霊たちは、魔法からレオンを守るように飛び出し、魔法を行使した。

『人間が、僕らに魔法で勝てるわけないでしょ!』

『さんざんレオンに酷いことをして……許さないからね!』

『ほら、【ファイアーランス・トゥルー】!』

『【アースウォール・トゥルー】!』

『【ウォーターボール・トゥルー】!』

『【ライトニング・トゥルー】!』

『【ストーム・トゥルー】!』

精霊たちが魔法を行使しようとした瞬間、彼らの姿は俺以外にも見えるようになったようで、近くのブルードたちが驚くのが分かった。

「なっ……何だ、あの光は……」

「綺麗ですね~!」

「おおお! レオン君も覚醒のときかな!?」

フローラの言葉はあながち間違いじゃないだろう。

おそらく、これでレオンは本当に強い力を手に入れたんだからな。

それはともかく、フリードが使用した『ファイアーランス』以上の大きさを誇る、精霊が生み出した『ファイアーランス・トゥルー』とやらがそのままフリードの魔法をかき消すどころか飲み込み、さらに巨大化してフリードに迫る。

「はへ!?」

その光景にとても間抜けな表情を浮かべるフリードだったが、彼の周りを囲うように、今度は巨大な土の壁が出現し、彼は逃げ道が無くなってしまった。

「は? は? は? 何で? 何で!? 何で魔法が……ぎゃあああああああああっ!」

次々と起こる出来事に、彼は呆然としていたところに、とうとう巨大化した『ファイアーランス・トゥルー』が到達して、彼の体を燃やす。

「あ、熱ぃぃぃぃぃいいいいいいい! 熱い熱い熱い熱いよぉぉぉぉおおおおおお!」

必死に体に纏わりつく炎を消そうとするが、炎は消えるどころか勢いを増していった。

……うわぁ……。

フリードの様子に思わず引いていると、そんなフリードに、今度は巨大な水の塊が頭の上から降って来る。

「がへっ!?」

凄まじい質量の水の塊を受け、フリードは潰れた蛙のように地面に張り付いた。

だが、水の塊を受けたことで炎は消えている。

「が、か……」

だが、追い撃ちは続く。

何と、倒れるフリードめがけて、頭上から雷が落ちてきたのだ。

「あばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばば!?」

まるで漫画のように、体の中の骨が見えるほど、激しく感電するフリード。

雷が消えたころには、ビクンビクンと体を痙攣させるフリードの姿が虚しく転がっていた。

彼の今の状況は、全身黒焦げで、髪の毛も爆発したようにチリチリになっている。

誰がどう見ても、負けているとしか言いようがなかった。

――――そんな彼に、日ごろの行いが悪いと言わんばかりに、最後の鉄槌が振り下ろされた。

何と、動けない彼めがけて、小規模ながらも闘技場の地面を抉りながら移動する竜巻が、抵抗することさえできない彼の体を無慈悲に舞い上げた。

「あっ――――」

そして、強風で彼の髪の毛は煽られ、炎や雷で焦げていた頭髪は、すべて風によって攫われ、彼の頭は眩しく輝いた。

しかし、それすらも許さないと言わんばかりに、最後は頭から地面に突き刺さり、彼の頭皮の輝きはすぐに見えなくなってしまった。

無言の空気が、闘技場内を包み込む。

そんな中、誇らしげに精霊たちは言った。

『どんなもんだい!』

『これに懲りたら、二度とレオンをイジメるなよ!』

『次はもっと酷いことするからね!』

『そうそう!』

『僕らはレオンの味方で、レオン自身の力なんだから!』

うん、まあ……みんな言いたいことはあると思う。

それぐらい、一方的で酷い試合展開だったのだから。

いち早く衝撃的なシーンから回復したリリーさんが、戸惑いながらも勝者を告げた。

『はっ!? え、えっと……勝者、Fクラスのレオン選手……?』

司会も呆然としているが、何より一番驚いていたのは、勝ったはずのレオンだった。

そんなレオンは、しばらくの間驚いた様子だったが、急に意識を失い、その場に倒れたのだった。