軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

毒耐性

「うー……」

俺は死にかけていた。

いきなり何を言ってるのか自分でさえ分かっていない程に、今の俺は疲れていた。精神的にも肉体的にも。

特麻痺草を食べ、『麻痺耐性』のスキルを身につけてから1週間が経過している。

あの後もクレバーモンキーの住処らしき所を何度か訪れたが、結局あの進化の種はあの9個以来見ていない。

「あむ、もぐもぐ……不味い……」

俺はその進化の実を口に入れ、そう呟く。ちなみに、今食べている進化の実は今日の飯兼口直しだ。

この一週間、一日につき一個のペースで食べていたせいか、残りはあと二つ。

それ以外にも、あの特麻痺草以外のモノを鑑定しては食べまくったせいか、変な耐性を多く手に入れていた。

ちなみに俺の今のステータスは

≪柊誠一≫

種族:汚物の塊……あ、後人間

性別:男と言う名の汚物

職業:臭すぎるホームレス

年齢:17

レベル:1

魔力:17

攻撃力:1

防御力:1

俊敏力:1

魔攻撃:1

魔防御:1

運:0

魅力:

≪装備≫

最終兵器な学生服。最終兵器な学生ズボン。必殺の肌着。必殺のパンツ。

≪スキル≫

鑑定。完全解体。麻痺耐性。睡眠耐性。混乱耐性。魅了耐性。石化耐性。阻害耐性。

≪状態≫

進化×8。疲労。

うん。ツッコミどころ満載。

まず種族。俺が人間であることさえ忘れかけられてる。

性別は男じゃなくて汚物が正しいらしい。職業は断然以前よりバージョンアップ。悪い意味でね。

装備品に至っては兵器扱い。何なの、これ。最終兵器?それに、パンツとシャツで必ず殺せるらしい。スゲー。

魅力なんて見てみろよ。空白だぜ?とうとう言葉すら書いてくれないらしいぜ?

…………。

「俺が何をしたって言うんだ……」

俺は両手両膝を地面について項垂れた。

「一体俺に何の恨みがあるんだああああああっ!まともなステータスが全部≪スキル≫より下しかねぇじゃん!」

俺は深呼吸を繰り返す。

落ち着け~……よーし……ふぅ。

落ち着いた俺はあれから手に入れた二つのスキルをもう一度確認した。

『睡眠耐性』……睡眠ガス等による強制睡眠を無効にする。

『混乱耐性』……幻覚などによる錯乱や混乱を無効にする。

『魅了耐性』……魅了による催眠を無効にする。

『石化耐性』……邪眼や魔法等による石化を無効にする。

『阻害耐性』……罠や魔法等による動きの阻害を無効にする。

この五つは相当凄いんじゃないだろうか?いや、凄いというよりはとても便利。

この危険な森の中、何時睡眠ガスや幻覚を見せる様なガスを吸わされるか分からない。こう言った耐性は、生きていく上で非常に大切なのだ。

五つとも、あの特麻痺草のように、鑑定した結果『?』が付いていたキノコを食べた後に身につけたモノだ。

手当たりしだい鑑定しまくって、効果があった五つともバッドステータス。もう死ねばいいのにね。

ちなみに、このスキルを身につけた後にもう一度鑑定してみると、こう表示された。

『爆睡茸』……一口食べればたちまち眠ってしまう。全部丸ごと食べると永眠。

『超危険キノコ』……何だか色々な幻覚が見え、楽しい気分になるキノコ。廃人に注意。

『魅惑茸』……見るモノ全てが美しく見え興奮し、冷静さや理性が保てなくなる。

『石茸』……食べると、足から徐々に石になり固まる。全部丸ごと食べると完全に石化するので、自力で対処するのは不可能。少しだけなら、時間が経てば、石化は解ける。

『邪魔茸』……食べると、その場から動けなくなる。ただし、その場から動けないのであって、体は動かせる。

全力で食いかけのモノを投げ捨ててやった。

まさかの生命の危機だったんだぞ!?やってられるかっ!

しかも、爆睡茸を食った時はそのまま眠っちゃって、起きた時に近くにクレバーモンキーがいて軽くビビったんだからなっ!俺の体臭酷いから、気付かれるかと思ったよ!死を覚悟したわっ!

それに、超危険キノコとかそのまんまだよな!?しかも効果はまんまドラッグじゃねぇか!と思わずツッコミを入れたし。まあ食った直後は楽しい気分になったけど、クレバーモンキーの住処に突撃しに行きかけてた時はちびるかと思った。薬物ダメ、ゼッタイ。

魅惑茸なんて、正気に戻った後、自分の性欲の多さに絶望したよ。

石茸は軽くホラー。マジビビる。

何気に邪魔茸は面白かった。体は動かせるのに、その場から動けないってのが新鮮過ぎた。まあ内心あの猿どもに遭わないだろうかとかの心配ごとでいっぱいだったけど。

「ハッキリ言って、もう二度と詳細不明なモノを口にしたくないんだが……」

消費者の4つの権利って行使しちゃ駄目?知らされる権利、大事だよね!

だが、神は俺にとことん冷たいようだ。まあ実際神と名乗って俺達を飛ばした奴は、この世界に干渉してないみたいだから関係ないんだろうけど。

「これ……明らかにヤバいよな?」

今現在の俺は、進化の実を口直しとして食べている。と言うか、最後の食事かもね。

と言うのも――――

「危険な雰囲気MAXなんですけど……」

俺の手に握られた一つのキノコ。

濃い紫色を中心に、原色系統の赤や青、それに黄色の斑点。てっぺんの部分には、白色。そう、何故か白。それが逆に恐ろしい。

絶対ヤバいヤツじゃん!?死んじゃうよ!?俺!もう見るからに毒の塊じゃん!食って死んでくれって言ってるようなモノじゃん!

で、でも俺はまだこのキノコを鑑定していない。このキノコが、ただのキノコとかって言うんなら、 食用として(・・・・・) 食べれるのだが、『?』と出た瞬間に、それは 実験として(・・・・・) に名目が変わってしまう……!

「神よ……どうか俺に慈悲を……!」

そう思い、俺はスキル『鑑定』を発動させた。

『????』……????。

「くそぉぉぉぉぉぉおおおおおおッ!」

『?』なんかこの世から消えちまえ!テメエのせいで俺は己の身を犠牲に実験を試みなければならなくなったんだぞ!?

もうそろそろ俺に優しくしてくれてもいいんじゃないかなぁ!?そこんとこマジどーなのよぉ~!?

「俺……頑張った……皆、今までありがとう……!」

もう最後の言葉であろう台詞を言い、俺はこの見るからに危険なキノコを口に近づける。ボッチだけど、最後くらい皆に見られながら死ぬなんていう想像していいよね?決して『妄想』と言わない所が俺クオリティ!

しかし、ホント何でこんな危険な事してるんだろうね。食わなきゃいいんだろうけど。

まあ、もし万が一食べられるモノだった場合困るからなんだけどね。

何故なら、今のところ食えるモノと言えば、あと二つしか残っていない進化の実と、特薬草くらいだからだ。

少しでも食べられるモノの情報を仕入れないと、あの餓死寸前の恐怖が再びだしな。

つか、進化の実が何故か一つ食うだけで腹が膨れるから、何とかなってる状態なんだよね。

…………。

「やっぱり待って!」

やっぱ怖い!スンゲー怖い!めっちゃ毒々しいよ!?これ食ったら冗談抜きで死ぬんじゃね!?

「駄目だ……全然覚悟が出来ない。長々と一人語りしたけど、この不安は拭えない……!」

第一俺が死ぬと悲しむ人間がいるじゃん?例えば、両親とか、友達とか、恋人とか……。

…………。

「両親いねぇじゃん!?友達極少数じゃん!?恋人なんて論外じゃん!?」

あ、ヤバい。言ってて悲しくなってきた。俺、生きてる価値ねぇのかも。

一度思考がネガティブになると、そんな考えがぐるぐる回る。なんか辛い生活し過ぎて精神がもうヤバい。

「……これ食えば死ねるかなぁ……」

最早、この時の俺はおかしくなっていたと言っても過言ではないだろう。だって、自殺を考えてるんだぜ?理由はよく分かってないのに。我ながら思う。俺、馬鹿だな。

「……えい」

ぱく。

「……」

結局俺はあの毒々しいキノコに齧りついていた。

…………。

「…………あ、あれ?なんとも無いぞ?」

俺はキノコに齧りついた状態でそう呟いた。

てかマジで大丈夫そうだぞ!?遂に当たりを引いたか!?

「うおおおおおおっ!」

俺は両腕を上げ、何となく叫びたくなったので叫んだ。体中で喜びを表現したっていいじゃん。

「遂に俺の時代がキタアアアアアアッ!」

俺はその場で小躍りした。

「ひゃっふうううう!」

マジで嬉しい!この気持ちを恋人に!……いないんでした。

「ふっふっふ。今回ばかりは俺のカハッ!?」

俺は吐血した。

「ガハッ!グホッ!」

血を吐きまくる。

「……ま、マジで?」

俺はとことんツイていないようだ。流石、ステータスの運0なだけあるな。

「……まさか、遅延性の毒だったか……」

いや、こうして少しの時間で毒がまわった事を考えると、即効性か?

とにかく、今回もハズレを引いたみたいだ。

「分かってたよ……分かってたさ……」

馬鹿みたいにはしゃいだけど、どこかでこんなオチは読めてたよ……!コンチキショー!

俺は膝から崩れ折れる。

「ガハッ!ゴホッ!……ぜぇ、ぜぇ……」

マジで、今回のは本格的にヤバい……。

「……俺、毒で死ぬのか?」

うわー……マジ無いわ。餓死も嫌だけど、これも辛すぎる。もうちょっと楽な死に方って無いの?

でも、今の俺にはこの毒をどうにかする術が無い。マジで。

結局俺のラック値は0なのさ……。

俺はそのままうつ伏せに倒れる。

「はぁ、はぁ」

まともな呼吸が出来ない。

体も言う事を聞かない。

特薬草じゃ、どうにもできないだろう。鑑定で確認しても、怪我を治すとしか書いてなかったし。

やっぱり毒には毒消し草かなぁ……。それとも解毒草?なんだっていいんだけど。

「がはっ……どうせ最後に死ぬなら……これ、食うか……」

俺は、今ある気力を振り絞って、アイテムボックスから残りの進化の実を二つ取り出した。

「へへ……コイツのおかげで、俺は餓死せずに生きながらえたんだよなぁ……」

そう言い、うつ伏せ状態で目の前にある進化の実を静かに見つめる。

本当なら、あのクレバーモンキーがこの実を落としててくれなかったら、俺はあの時既に屍だった筈だ。

それを、味はマズイが、腹を一気に満たしてくれるコイツが救ってくれた。

この1週間も、コイツのおかげで食べ物に苦労しなかったと言っていい。

マジで、この進化の実には感謝だな。……結局効果は分からずじまいだけどよ。

「……こんな俺を、助けてくれて有り難う」

俺はそう言うと、進化の実を口に含んだ。

もぐもぐもぐ。

…………。

一つ、進化の実を食べ終えた。

あ、なんかもう1個いけそう。

もぐもぐもぐ。

…………。

最後の進化の実も食べ終えた。

…………。

「全然大丈夫じゃん!?」

俺は跳び起きた。

一体何が起こった!?さっきまで死にかけてたよな!?

なんか進化の実を食ってたら元気が出てきたんですけどぉ!?

「ちょっ!さっきの俺のしんみりした雰囲気は何!?恥ずかしっ!」

赤面モノだよ!何なの!?一体!毒はどこに消えた!?

一人羞恥心に悶えていると、ふとある仮説が頭に浮かんだ。

「……まさか、あの『進化の実』の効力とかって言うんじゃないだろうな……」

でも、実際にそれを食べてこうして毒状態から抜け出した訳なんだし……。え、マジで?

「ち、ちょっと待て。もしそれが本当だったら……」

もう俺の手持ちには進化の実は無い。

……。

「吐けぇぇぇぇぇぇ!1個でいい!俺、全力で吐くんだああああああっ!」

俺は必死にさっき食べた進化の実を吐きだそうとした。

「だああああっ!マジで毒を消す様な効力があったんなら、1個食べずに残しておけばよかったああああっ!てか、言われてみれば結構凄い効力があるかも知れな事は察してたじゃん!」

あの餓死寸前の時だってそうだ。

あの時は、進化の実に辿り着くために爪が剥がれそうな程地面に爪を立てて、血を流していたにもかかわらず、進化の実を食べた後には何時の間にか無くなっていたのだ。

「もう俺の馬鹿野郎!進化の実を食う前に戻って自分を殴り飛ばしてでも止てぇ……!」

……あ、それならキノコを食う前でいいじゃん。そうすればそもそもこんな目に遭わずにすんだのにね!

「……はぁ。もう、食っちまったもんな。諦めるかぁ……」

そう言い、俺が項垂れている時だった。

『スキル≪毒耐性≫を習得しました。スキル≪鑑定≫からランクアップし、≪中級鑑定≫に変更しました』

最近聞き慣れて来た声が頭に響いた。てか、この声誰なんだろうね。

「……って待てよ?『鑑定』から『中級鑑定』?」

今まではつい先ほど手に入れたであろう『毒耐性』のように、新しくスキルを手に入れるだけだった。

だが、今頭に響いてきた声は、ランクアップと言い、『中級鑑定』とやらになったらしい。

「訳が分からん……」

そう言いながらも俺は自分のステータスを開く。

≪柊誠一≫

種族:最高の可能性を秘めた人類

性別:男

職業:不幸過ぎるホームレス

年齢:17

レベル:1

魔力:17

攻撃力:1

防御力:1

俊敏力:1

魔攻撃:1

魔防御:1

運:0

魅力:

≪装備≫

最終兵器な学生服。最終兵器な学生ズボン。必殺の肌着。必殺のパンツ。

≪スキル≫

中級鑑定。完全解体。麻痺耐性。睡眠耐性。混乱耐性。魅了耐性。石化耐性。阻害耐性。毒耐性。

≪状態≫

進化×MAX。疲労。

あ、あれ?色々と変わってる?

種族は人類って書かれてるし、性別も普通に男になった。……ただ、最高の可能性を秘めた人類って大ざっぱ過ぎる上に、大げさすぎると思うけどね。なんだよ、最高の可能性って。

でも相変わらず魅力は何も書かれていない。べ、別に悲しくないんだからね!

スキルの欄は、鑑定が無くなり中級鑑定が新たに加わり、毒耐性も加わっていた。

新たに加わったスキルを確認する。

『中級鑑定』……鑑定の時より詳しく様々なモノを鑑定できる。

『毒耐性』……様々な毒を無効にする。

ヤベェ、超スゲェ。

毒耐性とかマジ神やん。おかげでそこら辺の雑草気にせず食えるじゃん。……俺ってどんだけ切羽詰まってんだろ。でもまあ、今もう食料だった進化の実が無いわけだし、いいか。

しかも中級鑑定とか有り難いわ。前みたいに『?』で表示される事も減るかも知れないし……。

つか、≪状態≫の欄の、進化×MAXってどう言う事だ?

もう進化の実は手持ちにないから新しい『中級鑑定』で調べることも出来ないし……。

「まあ、今回はこうして生きていられただけで儲けもんって事で!」

俺は一人清々しい気分になった。つまり、考えるのは止めた。だって分からないんだもん。

いやあ、生きてるって素晴らしい!

ただ、俺はこの時完全に失念していた。

それは――――

「ウキャッキャッキャ!」

「へ?」

俺の近くには、あのクレバーモンキーが一匹立っていた。

何故か?考えればすぐに分かる。

「……」

騒ぎ過ぎた……!