軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

魔神

「ここは……」

中に入ると、そこには薄暗い空間が広がっていた。

雰囲気的には、かつて【果てなき悲愛の森】でゼアノスと戦った場所に似ている。

だが、それ以上に部屋を満たす禍々しい気配や、すべてを押しつぶすかのような圧力はまるで違っていた。

さらに、部屋の中央には、何かの祭壇のような……巨大な石造りの階段が存在していた。

「こ、これって……」

「息苦しいです……」

そんな部屋の圧力に、オリガちゃんやゾーラは少し苦しそうな表情を浮かべる。

すると、不意に頭上から声が飛んできた。

「来たか」

『!』

一斉に視線を声のほうにむけると、階段の頂点に位置する祭壇に、人影があった。

その人は、見た目こそ人間のようで、非常に豪華な服に身を包んでおり、どこかの王族にも見えた。

だが、身に纏う気配が人間とは比べ物にならないほど力強く、さらに結膜部分は黒く、瞳は赤く輝いている。

冷酷な表情を浮かべる男は、俺たちを見下ろしながら階段を下りる。

「お前は……」

「分かってて来たのではないのか? 我こそが、貴様らの求める魔神だ」

その雰囲気からそうだとは思っていたが、いざ目の前にすると妙な感覚に襲われる。

もっと人ならざる者かと思っていたが、実際は人間とあまり変わらない。

俺は魔神に対して【上級鑑定】を発動させた。

【魔神Lv:----】

想像通りというか、スキルを発動させても魔神のレベルは分からなかった。

すると、魔神は呆れた様子で続ける。

「それにしても……ずいぶんと好き勝手に暴れてくれたものだ。何故、我の邪魔をする?」

「何故って……お前たちが色々な人に迷惑をかけるからだろ!」

別に復活するだけなら何の問題もない。

だが【魔神教団】は、魔神が復活するためと言って、色々な人を傷つけ、迷惑をかけ続けているのだ。

ただ、この感覚は俺たちだけのもので――――魔神は異なった。

「何が問題なのだ?」

「え……」

「貴様ら生命体は、元々我らが生み出した存在。それをどう扱おうが我の勝手だ。貴様らが文句を言うことこそおかしいとは思わないか?」

「何を――――」

絞り出すように言葉を続けようとした瞬間、魔神は指を鳴らす。

すると、泥のような物体が集まり、じょじょに形成されていくと、やがて一人の人間がそこに立っていた。

どこにでもいそうな、ごく普通の男性に見えるが……その人間に俺たちは見覚えがなく、突如現れた男性もまた、驚きの表情で俺や魔神を見つめていた。

「あ、あれ? 俺、なんでこんな場所に? っていうか、俺は一体……」

しっかりと自我を持ったその男性は困惑の表情で魔神に視線を向けた瞬間、再び魔神は指を鳴らす。

「え? ――――あぇ?」

『!?』

男性の体が突然崩れ始めると、先ほどの泥へと変わり、最後にはそこから完全に消え去った。

あまりにも衝撃的すぎる光景に、全員言葉を失っていると、魔神は淡々と告げる。

「こうして我は生命体を生み出すこともできれば、消すこともできる。ここに存在するのは我が生み出そうとする意思と、消したいという意思だけ。生み出された者の自我など関係ない。それは貴様らも同じだ。ただの被造物の分際で、創造神たる我に歯向かうな」

傲慢すぎるその発言に、ついに耐え切れなくなったアルが叫んだ。

「ざけんじゃねぇ! お前の勝手で、オレたちの命を弄ぶなんて許されるわけねぇだろ!?」

「はぁ……やはり貴様らは出来の悪い被造物だ。我の言葉を理解できぬのか? 許しなどいらない。我の決定こそが――――」

「――――【瞬腕】!」

「サリア!?」

なんと、魔神が言い終わる前にいつの間にかゴリラの姿に変身していたサリアが、スキルを発動させ、魔神との距離を詰めていたのだ!

「神ダカ何ダカ知ラナイケド、ソコニ生キテル限リ、誰カ一人ノ決定デスベテガ決マッテイイハズガナイ!」

「それは弱者の戯言だ。力ある者が、何故力なき者の声に耳を傾ける必要がある?」

「ナッ!?」

サリアは渾身の一撃を放ったようだが、それは魔神に届くことはなく、突然魔神との間に生み出された謎の生命体によって防がれた。

そいつは今までの人生で見たこともない見た目をしており、手足どころか顔があるのかさえ怪しい。

謎の生物によって攻撃を防がれたサリアはすぐに距離をとる。

そして、攻撃を防いだ生命体は、サリアの攻撃を防ぎ終えると、先ほどの男性と同じように泥となって消えていった。

「ふむ……力の差すら理解できぬか。このような出来の悪い被造物が存在しているのも、昔の我や神々が完璧でなかったせいだな。まあ、それもここで終わりなわけだが――――」

魔神はそこまで言いかけると、何かに気づいた。

「そうだな……これも余興だ。どうせすべてを滅ぼし、我だけの世界になるのだ。ならば、滅ぼす前に完璧な生物を創ってみるのも悪くない」

魔神は再び指を鳴らすと、部屋のありとあらゆる場所で泥のようなものが集まり、それは様々な形へと変貌を遂げる。

人型のものもあれば、虫型、四足歩行の獣など、多種多様な生物が部屋を埋め尽くす。

しかも、そのどれもが見たこともない姿をしており、すぐさま【上級鑑定】を発動させるのだが――――。

【????】

すべてハテナで埋め尽くされており、最後には文字化けしてしまった。

「さあ、この中で優れた生命体はどれだろうな? こういう時、全知全能というのは不便だ。結果を知ってしまうからな。だが、その結果を見届けるのもひと時の暇つぶしにはなるだろう」

「俺たちが負けるって言いたいのかよ?」

「この程度のことすら口にせねば分からぬか?」

「お前のその余裕、絶対に崩して見せる!」

アルがそう叫ぶ中、魔神は両腕を広げると、悠々と告げた。

「そこまで言うのなら――――足掻いて見せろ」

その瞬間、生み出された生命体が一斉に俺たちへと襲い掛かってきた!

「させるかよッ!」

だが、俺たちも黙ってはやられない。

俺はこのアジトが壊れない程度に力を抑えつつ、【 憎悪渦巻く細剣(ブラック) 】と【 慈愛溢れる細剣(ホワイト) 】を振りぬく。

すると、もはや誰にも認識できない速度で斬撃が飛んでいき、生命体の体が斬り裂かれた。

「なっ!?」

「究極の生命体が、斬撃ごときで死ぬわけないだろう?」

しかし、俺の攻撃の後に広がった光景は、想像していたものと異なっていた。

魔神の言葉通り、俺の斬撃を受けた生命体たちは、そのまま倒れるどころか斬れた部位から増殖し、さらに数を増やしてしまったのだ。

「【瞬腕】!」

「【パワースラッシュ】!」

そんな中、サリアは拳を振るい、アルが斧を振り下ろす。

ただ、サリアとアルは俺の攻撃で相手が増えたことを見ていたので、サリアの攻撃は生命体の体を突き抜けることなく体内で衝撃を留めさせ、アルも斬り裂くのではなく、斧の刃部分で潰すように振り下ろしていた。

「……ハッ!」

「か、固まってください!」

オリガちゃんはクナイを投げ、生命体の体を次々と貫通し、ゾーラは石化の目を活用して、どんどん生命体の動きを止めていった。

「斬れば増えると見て、斬撃以外の攻撃を使う……まあ知能が低くとも、その程度は対策できるだろう。だが、それで対処できると思っていることこそ、貴様らの無能さが顕著になる」

「!」

すると、サリアたちの攻撃を受けた生命体は、今度こそ倒れたと思ったが……なんと何事もなかったかのように動き出したのだ。

ゾーラの石化を受けた生命体は、一瞬とはいえ確かに石化した。

しかし、すぐに石化した部分が崩れ始め、何事もなかったかのように動き始めるのだ。

「そ、そんな……!」

「……ん。私のクナイも効いてない?」

オリガちゃんのクナイは【呪蛇の苦無】と呼ばれる伝説級の武器であり、このクナイでダメージを受けた対象は何らかの状態異常を引き起こす効果を持っていた。

そして、その効果通り、何体かの生命体は状態異常を発症したものの、すぐに回復した様子で襲い掛かって来る。

それどころか……。

「オカシイ。私ノ攻撃ガ、効キニククナッテル」

「ああ……攻撃すればするほど、コイツに与えられるダメージが減ってるな……」

サリアたちの言う通り、最初こそサリアやアルの攻撃で大きく吹き飛ばされ、体液を噴出させていた生命体たちが、今は真正面から攻撃を受け止め、最後には防御すらしなくなった。

しかも、ダメージを受けてる様子が一切なく、俺たちへの歩みを止めることはない。

「言っただろう? 完璧な生命体を生み出すと。当然、己の受けた影響を無効化できるように進化する特性を持っている」

魔神の言葉を聞きつつ、それは普段の俺の体が勝手に行っていることだなと納得してしまった。

俺自身が進化の影響を受けるのと違い、相手に同じような存在が出てくると、厄介この上ない。

「さて、どうする? もはや貴様らの攻撃は通らんぞ?」

「――――ごちゃごちゃとうるさい奴だ」

「ルルネ? ……ルルネ!?」

今まで黙っていたルルネが口を開いたので、驚いてそっちを見ると、さらに衝撃的な光景が広がっていた。

「キ、キェ……ェエ……」

「もぐ……完璧な……もぐ……生物というから……もぐもぐ……期待していたが……もぐ……とんでもなく不味いじゃないか……もぐ」

「これすら食うの!?」

なんと、触手まみれの生命体を、躊躇なく食らっていたのだ。

しかも、食われている生命体は、微かな悲鳴を発しつつ、最後にはルルネに咀嚼され、飲み込まれる。

「んぐっ! 不味い! 完璧な生命体ならば、味にも拘れ!」

「そこは気にするところじゃねぇ! って……あれ? 復活しない?」

なんと、ルルネが食べた生命体は、それ以上増える気配もなければ、復活する気配もなく、完全に消滅していたのだ。

「そう、そうなんです! せっかく無限に増えるというので、無限に食べられるかと思ったのに、食べたら終わりなんですよぉ!」

「……ん。食いしん坊の食欲は神様以上?」

「神も美味いのかなぁ」

「そっちも食べる気!?」

よく見ると、ルルネが魔神に向ける視線は怪しかった。あ、あの、見た目だけは人っぽいんですけど、それすら食材認定なんですか?

……いや、今更だな。前に邪神食ってたし。

「不味い上に増えないなど……完璧には程遠いな。出直せ」

「完璧の基準!」

「いや……不味いからこそ、増えないのは英断なのか……?」

「食欲から離れてくれます?」

ようやく完全に倒す方法が見つかったのに、ルルネ以外無理じゃねぇか。

もしかして、食べつくさないとダメ?

まあルルネだけでも食べきれるんだろうけどさ……。

そう思っていると、魔神は黙々と生命体を食らい続けるルルネを見て、微かに目を見開いた。

「……どうやら貴様らの中にも、この星の法則から外れた者がいたらしいな」

この星の法則?

魔神は意味深なことを呟いているが、その言葉の意味が俺には分からなかった。

「まあいい。あえて全知で知ることをせず結果を見届けると、予想外なことが多く、楽しめるな。だが、最終的な結末は変わらん。貴様らの死という結末はな……」

魔神の言葉に反応するかの如く、謎の生命体がどんどん生み出されていく。

しかも、それと同時にこの部屋自体も広がっているようで、気づけば俺たちは万の生命体に囲まれていた。

「クッ……! 私タチノ攻撃ガ効カナインジャ、飲ミ込マレル!」

「サリアの言う通りだ! このままじゃあ、オレたち押しつぶされるぞ!」

倒すことはできないとはいえ、サリアたちの攻撃で謎の生命体は近づくことができずにいたが、徐々にその間隔が狭まり、このままだと大群に飲み込まれるのも時間の問題だろう。

「ハアッ!」

俺もただ黙って見ているわけではなく、ちゃんと攻撃しているのだが、サリアたちと違って俺の攻撃だけはずっと通り続けるものの、細切れにされるたびに数が増えるので、迂闊に攻撃できない。

「だああああっ! なんでこんな時に限って自滅してくれないんだ!?」

最近は相対する存在がどういう理屈か分からないが、勝手に自滅することが多かった。

例えば相手が魔法を使えばその魔法は意思を持ち、俺のために動いてくれたり、誰かが攻撃を仕掛けてくると、何故か体がおかしな方向にへし折れたりと、俺が直接攻撃することなく倒されることが多かったのだ。

だが、今目の前に迫っている生命体からはそんな気配はなく、ただただ俺たちを殺そうと迫って来る。

「無駄だ。ここは我の空間。あらゆる世界や次元から切り離され、存在するのは我という絶対だけ。それに、その生命体は貴様らの常識の外にある存在だ。細胞も遺伝子もない。我の決定を忠実に再現しようとする……よって、貴様らにコイツらを倒す方法はない」

「何を馬鹿なことを……倒せないと言ったが、私は確かに食らっ――――」

「……食いしん坊?」

ルルネは何かを言いかけると、突然お腹を押さえた。

「な、なんだ? これは……腹が……痛い!?」

「……そんな……食いしん坊が……!?」

なんと、ルルネが腹痛を訴えたのだ!

「い、痛い! な、なんなのだ、この痛みは!? まるで内側から暴れられているような……と、とにかく痛いです、主様!」

「ああもう! 訳の分からないもの食べるから!」

「……拾い食い、ダメ」

「だ、だってえええええええ!」

まあルルネの場合は拾い食いどころの話じゃないからな。

元はロバのくせに、出会うものすべてを食べようとするからそうなるんだよ! いや、ロバ関係なく食べようとするなって話だけども。

「貴様はこの星どころか、あらゆる世界の法則の外にいるようだが……我の前では無意味だ。我こそが法則。この法則から逃れられるものは誰一人存在しない。貴様がどれだけ足掻こうと、倒すことは不可能だ」

「そ、そんな……」

ルルネは今まで見たことがないくらい、ショックを受けていた。

そうだよな……ルルネってとんでもない方向に突き抜けてたから、どんな状況でも切り抜けてきた。

しかし、目の前にいる魔神にそれが通用しないとなると、狼狽えるのも――――。

「この私が……食えない、だと……!?」

「あ、そこ!?」

てっきりどうしようもない強敵を前に怖気づいてるのかと思ったよ。まあルルネらしいけども。

「不味い上に食えないなど、存在する価値もなし! 主様、こいつら害悪ですよ、害悪!」

「途端に悪くなる口」

まだお腹が痛いのか、顔を歪めつつ、罵詈雑言を浴びせるルルネ。

ここまでで俺も含め、ひとまず近づかせないように相手を倒しながら会話をしていると、魔神が何とも言えない表情を浮かべていた。

「……妙、だな……。我を前にしていながら、絶望していない……? 何なのだ、この緊張感のなさは……それとも、絶望のあまり気でも触れたか? 分からぬ……全知を抜きにしても、分からぬ……無能生物すぎるがゆえの反応か?」

めっちゃ馬鹿にされてません?

今までは見下されながら無能だとか言われてたけど、どこか憐れまれながら言われるのが一番傷つくんですけど?

おそらく魔神本人は意識してないんだろうけど、言葉の端々から俺たちの正気を疑ってるのが分かるよね!

全知全能の神ですら理解不能にしたって考えれば、誇っていいかも。ポジティブ、ポジティブ。

そんなことを考えている中、ルルネは腹痛に対する腹いせか、今度は謎の生命体を食べず、サリアたちと並んで次々と蹴り倒していた。

「主様! もはや食えないのならば、情けは無用です! さっさと倒しちゃってください!」

「いや、お前、建前上は俺の騎士なんだよねぇ!? それよりも、倒せるならとっくに倒してるよ! でも俺が攻撃すると相手が増えるし……」

「剣ではなく、魔法を使うんです!」

「魔法?」

「はい! 主様の魔法ならば、一発で消滅しますよ!」

「ええ? 魔法って言っても、何の魔法を……」

何か新たに生み出せと言うんだろうか? 残念だが、こんなトンデモ生物を倒せるようなイメージは湧かないぞ?

「あれがあるじゃないですか、あの魔法が! 以前、王都を襲ってきた魔物の軍勢に使用した魔法です!」

「あ、あの魔法!?」

「はい! あの魔法なら確実です! なんせ主様の名を冠した魔法ですから!」

ルルネが何の魔法のことを言っているのか理解した。

確かに、今の俺たちは物理攻撃主体で戦っており、魔法は使っていなかった。

……どうなるか分からないが、使うだけ使ってみよう。

これでダメだったら、世界に聞くしかない。いや、世界に聞くって意味が分からないけどさ。

そもそも、反応してくれるのかな? 相手は世界を創ったっていう神様だし、ここでは世界が干渉できない可能性もあるが……。

そんなことを考えつつも、俺は魔法を発動させるべく、右腕を上空に掲げる。

――――【ジャッジメント】!

一度発動させたことがある魔法なので、魔法名を唱える必要はなく、俺は無言で魔法を発動させた。

すると、室内という空間であるにも関わらず、大規模な魔法陣が天井に展開され、そこから次々と光の柱が降り注ぎ、謎の生命体に直撃した。

「やはり学習能力のない生物だな。言っただろう? 何をしようと、貴様らの攻撃は通じない。その魔法すら、その存在は耐性を得て――――」

魔神はそこまで言いかけると、異変に気付いた。

そう――――謎の生命体が復活しないのだ。

「何だ? 何が起きてる!?」

目の前の光景は魔神にとって完全に想定外だったようで、ここにきて初めて明確に動揺する姿を見せた。

「この不快な光は何だ! 我を差し置いて、神の裁きとでも言うつもりか!?」

魔神の言う通り、この魔法名は【ジャッジメント】で、俺も神様の裁きを何となくイメージして創り上げた魔法だ。

だからこそ、自身が絶対だと疑わない魔神からすると不快でしかないのだろう。

「認めぬ! 我以外の裁きなど、あってはならん!」

魔神が腕を一振りすると、消えていった生命体たちを補充するかの如く、再度謎の生命体が生み出されていった。

しかし、魔神が生み出す速度を超え、俺の魔法は生命体を駆逐していく。

「小賢しい! 神の力を舐めるな!」

すると今度は打って変わり、今までは徐々に部屋が広がりつつ、生命体も増えていたのに対し、魔神が両腕を広げただけで、一瞬にして部屋の端が認識できなくなるほど広くなり、その部屋の広さに合わせて生命体が部屋を埋め尽くした。

「お、おいおい、冗談だろ!?」

「今マデノハ……手加減シテタノ……?」

あまりにも現実離れした光景に、アルたちも呆然とする中、魔神は高らかに笑う。

「フハハハハ! 所詮は紛い物! 真なる神の力を前には無力でしかないのだ!」

「こ、これはさすがに、誠一の魔法でも厳しいんじゃ……」

魔神の力が強大だったために、アルがつい弱気なことを口にした瞬間、俺は発動中の【ジャッジメント】がむっとする気配を感じた。

……いや、魔法がむっとするって意味分からねぇけど、そうとしか言えないんだよ。

とにかく、アルの言葉に対し、【ジャッジメント】が心外そうな反応を見せたのだ。

そして――――。

「へ?」

一瞬。

俺たちの視界を真っ白い光が埋め尽くした。

ただ、完全に油断していたというか、身構えていなかった俺たちは――――。

『め……目がああああああああ!?』

全員で目を押さえた。

いや、急に光を浴びせないでくれます!? そもそも何の光よ!

魔神という強大な敵を前にしているにも関わらず、俺たちは視界を奪われるという大失態を犯し、ただひたすらに視界が回復するのを待った。

「う、うぅん……目がチカチカする……」

「ひ、酷ぇ目に遭ったぜ……」

ようやく視力が回復してきたところで、サリアたちの様子を見ると、いつの間にかサリアは人型に戻っており、アルたちと同じように目や頭を押さえていた。

すると、ゾーラが何かに気づいたようで、驚きの声を上げる。

「えっ!?」

「ん? ゾーラ、どうした?」

「み、皆さん、見てください!」

ゾーラに促され、視線を上げると――――あれだけ部屋を埋め尽くしていた謎の生命体が、きれいさっぱり消えていたのだ。

「も、もしかして……さっきの光って……」

「た、たぶんですけど、一撃で全部の生命体を消し飛ばしたのかと……」

俺だけでなく、ゾーラも同じ考えに至ったようで、頬を引きつらせていた。

ま、まさか、アルの言葉がきっかけで、ここまでとんでもない結果を引き起こすとは思ってもなかった……。

しかも、元々【ジャッジメント】は俺が認識した害悪に対してのみ発動するので、当然俺たちに被害は……いや、目はやられたけども、とにかく大きなダメージこそなく、その上部屋や祭壇が崩れることもなかった。

「……って、魔神は!?」

謎の生命体が消え去ったことでつい安心しかけていたが、まだ魔神が残っているのだ。

ここで気を抜くわけには――――。

「ねえ、誠一」

「ん? どうした? サリア」

「あれ」

サリアの指示した方向に視線を向けると……今にも体が崩れ落ちそうになった、魔神が立っていた。

「ば、馬鹿な……あり得ぬ……! この我が……この我が……!?」

魔神の体の一部は、魔神自身が男や謎の生命体を生み出した時のようなが泥に変化し、今も徐々に形を失っている。

「こ、この我が滅びるなどあり得ぬ! あってはならぬ! 我は真の神! すべてを超越し、唯一無二となる――――」

「あっ」

魔神の言葉が終わる前に、どこからともなく光の柱が魔神に落ちると、光が消えた時には魔神の姿が跡形もなく消え去っているのだった。