軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

突入前

俺たちは【魔神教団】に捕らえられていたS級冒険者を解放すると、一度テルベールまで帰還した。

人数が人数なのでどうやって運ぶか迷ったが、ここにきて再び予想外の現象が起きる。

なんと、気を失っている全員の体が、その場で急に浮かび上がると、そのまま俺たちの後をついてきたのだ!

「な、何がどうなってんだ!?」

「……オレはもう驚かねぇぞ」

「まあ誠一の力だよね!」

いや、サリアの言う通りなんだろうけど!

とはいえ、何の力が働いているのか分からない。

すると、不意に声が聞こえてきた。

『重力が誠一様のためにと運んでいるそうです』

「そうきたかー」

すでに陸と海が仲間になってるからね。今さら重力が仲間になっても驚きませんとも。ええ。

なんにせよ、運びやすくなったのは事実なので、ひとまずS級冒険者たちを連れて、王城まで向かった。何だろう、気分は棺桶を連れ歩く勇者みたいだ。

それよりも、王城よりギルドの方がいいのかな? とも思ったが、元々はエレミナさんを救出することから始まって、結果的に全員助け出せたので、先にランゼさんに報告することに。

緊急事態ということで、王城の入り口に直接転移すると、門番がいきなり現れた俺に驚きつつも、中に通してくれた。

そしてしばらく待っていると、ランゼさんとエレミナさんがやって来る。

「誠一!」

「ランゼさん! すみません、いきなり押しかけて……」

「いや、何の問題もねぇよ。お前のおかげでエレミナが助かったんだ。それに、その後ろにいる連中は……」

「はい、【魔神教団】に捕らえられていた人たちです」

「分かった。おい! 彼らの手当てを!」

ランゼさんが指示を出すと、すぐに他の兵士たちが現れ、全員引き取っていった。

その様子を見ていたエレミナさんは、安心したようにため息を吐く。

「はぁ……間違いなくS級冒険者の皆ね。何人か知らない顔もあったけど、一緒に捕まっていたんだし、被害者であることに違いないわ」

「だな。ってか、アイツらを助けられたってことは、本当に冥界に行ってきやがったのかよ……」

「い、いやぁ……ははは」

恐らく【魔神教団】の本拠地が冥界にあることをエレミナさんからすでに聞いていたであろうランゼさんは、引きつった笑みを浮かべていた。普通に考えれば信じられませんよね!

「それに、ほんの小一時間前に誠二ってヤツに出会ってるからか、妙な気分だぞ……」

「まあ、俺が二人増えただけですから、気にしないで貰えれば……」

「二人増えただけってなんだよ!?」

もうこの世界に来てからはずっと驚きっぱなしなので、もはや俺が二人になった程度じゃ驚かないよね。何なら女性版の俺までいるんだし。

「それよりも、こうしてS級冒険者たちを解放したってことは……まさか、もう【魔神教団】の本拠地を潰したのか!?」

「い、いえ、さすがにそれはまだですよ。ただ、本拠地内を移動中に彼らを見つけて解放できたので、先に進むよりまずはここで保護してもらう方が優先だと思ったので……」

それにあの本拠地、無駄に広いから果たして最深部にたどり着けるのかも分からない。

ていうか、勢いで【魔神教団】の本拠地に乗り込んだわけだが、本当にあそこに魔神がいるのか?

もしかしたら、魔神自体は存在してなくて、あのユティスって男たちと同じような神徒がまた別に待ち構えているだけかもしれない。

できればここで決着つけてしまいたいんだが……。

「とにかく、もう一度戻って、先に進むつもりです」

「そうか……お前さんなら大丈夫だと思うが、気を付けろよ? 何が出るか分からねぇ。もし本当に魔神が復活してるなら、神を相手にすることになるんだからな」

「はい!」

ランゼさんと会話を終えた俺は、再度S級冒険者の皆さんのことを頼み、【魔神教団】の本拠地へと戻るのだった。

◇◆◇

再びS級冒険者たちを救った場所まで戻った俺たち。

「さて、あとはこの本拠地をどうするかだけだが……」

「あとどれくらい続いてるんだろうね?」

サリアの言う通り、すでにかなり長い間歩いてる。

いっそのこと、本拠地自体が縮んでくれればいいんだが……。

不意にそう考えると、突然周囲が大きな地響きを立て始めた!

「な、なんだ⁉」

不測の事態に対処できるようにみんなで固まり、警戒を続けていると、地響きが収まる。

そして――――。

『魔神の部屋を持ってきました』

「嘘だろ⁉」

もはや向こうからやって来ちゃうの⁉ いや、この場合は無理やり連れてこられたってのが正しいのかもしれないけどさ!

それに、そんなことできるんなら最初からすればよかったのでは⁉

慣れたと思っても、その慣れを超える勢いですごいことを平然と行ってくる世界に対し、俺は開いた口が塞がらない。

すると、どうやら先ほどの声はサリアたちにも聞こえていたようで、みんな菩薩のような目を向けてくる。やめて! その生暖かい目は俺の精神をゴリゴリに削るから!

「も、もういいもんね! こんな場所、早く脱出して終わりだぁ!」

これ以上ここにいると、ますます俺の人間離れが加速しそうなので、とっとと元凶である魔神と戦いに行く。

部屋の先の通路に出ると、声の言う通り、ひと際豪華な扉が姿を現した。

さらに、その扉からは、かつて感じたことのない威圧感のようなものを感じる。

「……口では簡単に言えるけど、今から俺たちは神を相手にするのか……」

しかも、前にベアトリスさんから聞いた話だと、魔神は俺がこの世界に来るきっかけにもなった、神々と同格だって話だ。

今の俺があるのは、その神々のおかげといっても過言ではない。。

もちろん『進化の実』っていう、神々にとってもイレギュラーな存在があったとはいえ、【完全解体】を授けてくれたあの神様には非常に感謝しているのだ。

魔神というボスを前に、今更ながら怖気づいていると、サリアが服を引っ張る。

「誠一」

「ん?」

「誠一なら大丈夫だよ。いつも通り、誠一が思ったように、好きにすることが、いい方向に必ず繋がるから!」

「サリア……」

「そうだぜ? 誠一。今さら悩んでても仕方ねぇだろ? どのみちここで倒さなきゃ、オレらがやられるだけなんだしよ」

「主様なら大丈夫ですよ! 何てったって主様ですから!」

「……ん。食いしん坊じゃないけど、誠一お兄ちゃんだから、大丈夫だよ」

「そ、そうですよ! 誠一さんはよくその力で嘆いてらっしゃいますけど、私は誠一さんのその力に救われました。ですから、今回も、その力がいい方向に向いてくれるはずです!」

「ね? 誠一! 私と同じで、みんなも同じ気持ちだよ! 誠一なら大丈夫! 私が保証するよ!」

サリアに続き、アルたちも励ましてくれる。

「そうか……そうだよな! いつも通り、俺は突っ走るぞ!」

「うん!」

俺は再びボスの部屋と向き合うと、いざ扉を開けるのだった。