軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

四天王

敵の本拠地に向かうことが決定した俺たちは、そのまますぐに『影の里』を出発した。

ただ、そのまま出発してしまうと里が大変なことになるので、出発前に攻めてきた謎の生物たちを相手にしようとしたのだが……。

「き、キシャ……シャ……」

「ク、カ……」

「……(ブクブクブク)」

何故か謎の生物は陸に打ち上げられた魚のように、酸欠状態で転がっており、俺たちが対処するまでもなかった。な、何が起きたんだろうか? 最初に俺たちに襲い掛かってきたやつらは普通にしてたのに……。

もしかして、海や陸に続いて今度は空気が動いたとか? んなバカな……って言いきれねぇのがなぁ!

まあ実際のところは、俺から何かをしたり頼んだわけでもないので、本当に謎だ。まあラッキーなことに変わりはないので、別にいいのだが。

「な、何が起きているのだ……俺たちがあれほど苦労した化け物が、こんな……」

そんな中、俺たちを敵の本拠地まで案内させるために、襲撃してきたリーダーの男も一緒に付いて来ているのだが、あの謎の生物たちの姿を見て、納得のいっていない様子だった。

ちなみに、このリーダーの男の名前は権兵衛さんらしい。

すると、権兵衛さんを拘束している守神さんが、移動しながら口を開いた。

「権兵衛殿。今の栄京はどうなっているでござるか? あの謎の生物で溢れかえっているのでござるか?」

「……そうだ。しかも、それだけではない。我々の知らぬからくり兵器も多数配備されている。そして何より恐ろしいのが……あのお方の側近だ」

「側近……あの謎の生物と何か違うでござるか?」

「何もかも違う。まず、俺たちの言葉を理解し、話すことができる。その上、強力なからくり兵器を自在に操り、さらに面妖な術まで用いるのだ。どうすればあの面々に勝利できるのか……」

権兵衛さんはよほどその謎の生物たちの側近とやらが恐ろしいようで、守神さんに拘束されたまま顔を青くしていた。

それにしても、あの謎の生物の側近か……同じ魚介類でも種類が変わるんだろうか? こう、出世魚的な? 最後はブリになるのかね?

それはともかく、側近は俺たちの言葉を話すってところで思い出したが……あの謎の生物には『全言語理解』のスキルも発動しなかったな。『上級鑑定』も効かなかったし、どうなってる? そもそも、この星の生き物なのか?

まさか、あの謎の生物がルルネがどこからか拾って食べた邪神より強いとはとても思えないし……謎が増えるばかりだ。

「そろそろ気を引き締めろ! 栄京はすぐそこだぞ!」

しばらくの間、道とはとても呼べないような、森の中を移動していると、不意に月影さんがそう言った。

こんな風に森の中を移動しているのも、あの謎の生物たちから身を隠すためなのだ。

そして、ようやく森から抜けると、そこには目的地である栄京が確かにあった。

――――だが、誰もが予想できないような形で。

「な、何でござるか、あれは……!」

呆然と守神さんが呟く。

しかし、その問いには権兵衛さん含め、誰も答えられなかった。

何故なら……。

「何なんだ、あの鉄の箱は……!」

まさに月影さんの言葉通り、俺たちの目に飛び込んできた栄京は、影の里がもっと栄えたような街でありながら、その街の上空に鉄の箱……いわゆる宇宙船らしきものがたくさん浮いているのだ。

しかも、街の中にもこの時代では考えられないような、不思議な形の塔が建っており、その塔には青白く光るラインがいくつも走っている。

それも、一つだけではない。

等間隔で街を囲うような形で建っていた。

その塔はあまりにもSFチックで、侍とか昔の日本の雰囲気を感じさせる街並みとはあまりにもミスマッチである。

「も、守神さん。あの建物って、元々あるものですか?」

一応の確認も込めて、俺がそう訊くと、守神さんは呆然としたまま首を横に振る。

「な、ないでござる。あんなもの、今までなかったでござるよ……!」

「……何だかどんどんきな臭ぇ方向に進むな。別の大陸からの侵略とか、そんなレベルの話じゃねぇだろ? どう見ても別の世界とか、そんなレベルの文明差じゃねぇか」

アルの言う通り、栄京に広がる様々なSFっぽさを感じるすべては、この星にあるものとはとても思えなかった。

となると、やはりあの謎の生物は宇宙の存在ってことになるのか?

別の大陸を見てないので何とも言えないが、あんな建物を建てられるだけの力があるのなら、今までこの大陸に来てないのもおかしい。

「……ひとまず、栄京に入るでござるよ。実際に見ないことには、とても信じられぬでござる」

守神さんの言うことももっともで、守神さんたちが栄京から逃げ出す際に使用したという、隠し通路のようなものを通り、俺たちは無事に栄京に入ることができた。

そして、身を潜ませながら周囲を窺うが、やはりあの謎の生物たちが行き交っており、人間の姿は確認できない。

何よりも、この時代に合っていない塔や、宇宙船らしきものは本物なのだと、近づいたことで分かった。

「権兵衛殿。あの鉄の箱が……?」

「……ああ。あれは、戦艦だ。俺たちが必死こいて鉄の船を造り、海に浮かべようってしてるのに、相手は空に浮かぶ鉄の船をあんなに所有しているんだぞ? そんな相手にどう立ち向かうって言うんだよ!」

≪――――どうもこうも、死ぬだけだ≫

『!』

突如、俺たちの頭上から加工されたような声が聞こえてきた。

声の方へ視線を向けると、そこには襲撃してきた魚類のような謎の生物が空中で佇んでいた。

ただし、今までの謎の生物と明確に違う点がある。

今までは本能をむき出しというか、理性の欠片もなく襲い掛かってきた謎の生物だったが、目の前の存在は俺たちに言葉を投げかけるだけの知性を有していた。

しかも、その身にはこれまたSFチックな銀色の鎧らしきものが身に付けられている。

これまでとは違う謎の生物を前に、権兵衛さんは顔を青くし、震え始めた。

「あ、ああ……貴方様は……!」

≪我だけではない≫

『!』

すると、同じような格好をした謎の生物が追加で三人? も再び追加するように現れた。

そんな四人? の謎の生物は、俺たちを見下ろす。

≪これだから文明の遅れた星の生物は嫌いなのだ。我らが主の頼み一つもこなせぬとは≫

≪まあそう言ってやるな。元々の造りが違うのだ。下等生物に我らと同じものを求めるのは酷というものよ≫

≪それに、一応は主の目的物も連れてきているようだしな?≫

完全に置いてけぼりの俺たちを前に、どんどん話を進めていく謎の生物。

なので、俺はついつい訊いてしまった。

「あのぉ……いきなり襲ってくるし、結局貴方たちは何者なんでしょうか?」

≪フン。我らの許可なく口を開くとは……本来ならば即刻命を奪うところだが、目的物を運んで来た褒美だ、教えてやろう≫

≪我らは【宇宙四天王】! 新たなる宇宙の支配者となるギョギョン様に仕える者なり!≫

「思ったより名前がダセェ!?」

言葉的に宇宙関連の存在なのは間違いないみたいだ。

ただ、もっとこう、カッコいい役職名? だと思ってた。

それが【宇宙四天王】なんていう何の捻りもない名前に、思わずツッコんでしまったところで、慌てて口を押える。

「ご、ごめんなさい。悪気はないんですよ! 俺の認識ではダサいなぁって思っただけで……ただ、俺たちのことを下等生物って言う割には変な感性だなぁって……」

「……誠一。それ、何の弁解にもなってねーぞ」

「え?」

慌てて自分のツッコミに対する弁解を行った俺だが、アルの呆れた様子の言葉に、改めて視線を宇宙人たちに戻した。

すると、宇宙人たちはまるでタコのように顔を真っ赤に染めている。

あ、あら?

≪この我らを愚弄するとは……!≫

≪た、確かに【ギョウオ星】は何もかもダサいって言われるが……≫

≪そんなハッキリ言わなくてもいいじゃないか……!≫

何か知らんが精神的ダメージ受けてません?

≪き、貴様らみたいな我らのセンスを理解せぬ者たちがいるから……!≫

≪ギョギョン様が宇宙を征服さえすれば、もうバカにされることもないんだぞ!?≫

≪せいぜい自分たちの最後のセンスを楽しめ!≫

「え、宇宙征服の理由がそれ!?」

ウソでしょ!? ただセンスがダサいからって理由で宇宙征服企んでんの!?

その思考回路だけは最先端を行ってるよ!

≪ええい、もういい! そこの目的物以外は殺して、すぐにギョギョン様へと捧げるのだ!≫

≪おう!≫

「くっ!?」

宇宙人たちはその視線をムウ様に向けると、それぞれが腕をこちらに突き出す。

宇宙人の腕にはタブレット端末らしきものが付けられており、それを操作した瞬間、宇宙人が身に付けていた鎧の腕の部分がいきなり変化した。

その変化はすさまじく、まるで某ネット世界で戦う青い戦士や、某宇宙海賊のような砲身へと姿を変えたのだ。

ただし、その二人とは明確に違うのは、砲身の形が魚っぽいこと。

≪我ら【ギョオウ星】の技術が詰まった、この【すごいビーム】の前に消えるがいい!≫

「やっぱダセェ!」

いや、ダサいというよりそのままだよな!? もう少し考えようと思わなかったのか、製作者!

ツッコミが止まらないまま、宇宙人はいっせいに俺たち目掛けてビームを発射した!

ウォウォウォウォウォ。

ビームの音よ! 何かさっきから見た目といい、宇宙人たちの星といい、魚類を連想させるようなものが多すぎじゃない? ビーム音も『魚魚魚』って聞こえるし!

そこはギョギョギョじゃねぇんだとか思わなくもないが、どちらにせよ酷い。いや、地球のいつも魚の帽子を被ってたあの人なら喜びそうだけども。

ビームは俺が想像していたような一直線の光線なんかではなく、これまた魚をかたどった光が、まるで魚の群れのように襲い掛かってくる。

ついついじっくりとそんな変わったビームを眺めていると、アルが俺の腕を引っ張った。

「誠一! のんきに観察してる場合じゃねぇぞ!」

「は!? そうだった!? あのビームも何だかよく分からんし、ひとまず逃げなきゃ――――」

そう言いかけた瞬間だった。

き、キシャア……。

『……え?』

≪……ん?≫

光の魚の群れは、いきなりもがき始めると、口をパクパクさせ、最終的には体が崩壊していき、光の粒子となって消えてしまった。

どう見ても、あの光の魚が酸欠死したようにしか見えない。

『……』

意味の分からない光景に、誰もがついつい黙りこくってしまったが、宇宙人以外は何故か俺に視線を向けた。あ、あれ?

「……ここまでくれば、さすがに誰のせいか分かる」

「せ、誠一殿はとんでもないでござるな……」

「え、俺のせいなの!?」

「いや、他にいねぇだろ?」

「んなバカな!?」

守神さんと月影さんに指摘され、アルには冷静に突っ込まれた。俺、何もしてないよ!?

≪わ、我らのビームが!? 貴様ら、一体何をした!≫

≪ギョオウ星の技術のすべてを注ぎ込み、食らえば素粒子レベルで分解される我らのビームをどうやって!?≫

「名前のわりに効果はヤバいな!?」

いや、確かにそんな物騒なビームだったんなら『すごいビーム』も納得……はしねぇな。やっぱりダサい。

≪ええい、こうなれば……我らが直接……うっ!?≫

宇宙人たちはビームが効かないことから直接襲い掛かろうとするも、突然喉を押さえ、苦しみ始めた。

≪い、息が!≫

≪ど、どうなって……≫

≪ぎょ、ギョギョォ!?≫

≪……(パクパクパク)≫

そして、最後は酸欠により意識を失ったのか、そのまま空中から地面に落ちてしまった。

『……』

「だから俺を見ないでくれる!?」

俺も驚いてるんだって!

あれだけ強者感出して登場したのに、謎の生物と同じように酸欠で倒れるとは思わないじゃん!

あれか!? どこぞの黄〇様の御付きの人ポジションが陸と海なら、影から助ける風車ポジションが空――――空気だって言いたいの!?

痛い沈黙が続き、何とも言えない空気が漂っていると、月影さんがため息を吐いた。

「……はあ。まあいい。理由はどうであれ、敵の幹部が倒れたのだ。後は、敵の大将を倒せば――――」

≪――――そんなことは永遠に訪れぬよ≫

『!』

さっきの宇宙四天王さんと同じように頭上から声が聞こえ、再び空に視線を向けると、そこには宇宙四天王の見た目に、背中から触手を生やしている、少しバージョンアップした宇宙人が佇んでいた。宇宙人の関係者であることは間違いないが、見るからに四天王よりは強そうである。

その姿を前に、月影さんたちは息をのみ、サリアたちも警戒した様子を見せるが、俺はつい思ったことを口に出してしまった。

「案外登場のバリエーションってないよね……」

「この状況で言うことかよ!?」

いや、まったくもって、その通り。