軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

新たな襲撃

「……一つ、確認したいのでござるが……」

「……はい」

「外つ国では、自由時間に問題を起こすのが普通なのでござるか?」

「すみませんでしたああああああああ!」

俺は過去一番の土下座を決めた。

何故こんなことになってるのかと言えば、温泉を楽しんでいた際、襲い掛かってきた謎の男たちの件である。

あの後、サリアたちが慌てて俺のもとにやって来てくれたはいいが……よほど焦っていたようで、お互いに裸だったのだ。

特にアルと俺はがっつりお互いのを見ることになり、俺はその刺激に耐えられず鼻血を噴出。

そしてアルは……。

「うぅ……み、見ちまった……あ、あのサイズが普通なのか……? あ、あんなに大き――――わ、分からねぇ……分からねぇよ……」

ブツブツと何かを呟きながら、今も顔を赤くしていた。もう本当に申し訳ありません。

俺が自分のポリシーを曲げて、大人しく着替えてから戦えばこんな悲しい事件は起きなかったのだ。

……いや、温泉で襲い掛かってきたアイツらが悪い! 襲ってこなけりゃ、こんなことで悩むこともないんだしな! どうしてくれんだ!?

ただ、サリアは特に気にした様子もなく、ケロッとしている。まあ森で一緒に過ごしてた時はゴリラなわけで、常に裸みたいなもんですからね!

そんなわけで、色々ありながらも襲撃者を撃退した俺たちは、すぐに着替えて、縛り上げた襲撃者を守神さんに引き渡したのだ。

土下座を決める俺を見て、ため息を吐いた守神さんは、真剣な表情を浮かべた。

「まあいいでござる。ひとまず誠一殿たちが無事だったことは、素直に喜ばしいことでござるからな」

「す、すみません……」

「それよりも、問題は襲ってきたこの連中でござる」

守神さんは視線を鋭くし、ある場所に目を向けた。

そこには、俺が気絶させた謎の男たちが縛られた状態で放置されている。

ただし、あの謎の面はすべて回収されているので、今は素顔が分かった。まあ、俺はこの人たちを一人も知らないので、素顔を見たところで何とも言えないんだが。

だが、どうやら守神さんはこの謎の襲撃者……特に、最後に俺とアホみたいな勝負をして負けた、リーダーの男を見て、顔を険しくする。

「まさか、貴殿が敵に降るとは……」

「……フン。なんとでも言え」

リーダーの男は、だいたい40代くらいであり、左上の額から斜めに大きな傷があった。

それでいて、髪も侍たちのようなちょんまげではなくざんばら髪で、何て言うか……盗賊とか山賊って言葉がぴったりだ。

「守神さんは、この人を知ってるんですか?」

「……知っているでござる。元々は、ムウ様を守護する、由緒正しい家でござる。拙者がムウ様を直接お傍でお守りするのに対し、この者は武力……軍事力で他の諸侯に牽制をする役割を持った家でござった。その家の当主こそ、この男なのでござる」

「なるほど……」

元々は大和様を護るはずの立場にいる人間が、こうして俺たちに襲い掛かってきたのだ。

特に守神さんは、細かい違いはあれど、大和様をお守りするという点ではどこかシンパシーのようなものを感じていたのだろう。

「何故……何故でござるか。貴殿は、今までも他の諸侯を引き受け、抑えてきたではござらぬか。それがなぜ!」

「守神殿。世の中には、人知の及ばぬ物事で溢れているのだ。それを、嫌というほど思い知った」

「何?」

「あのお方は……人間などではない。もっと恐ろしい、化け物だ」

「化け物?」

リーダーの男の言葉に、ますます表情が険しくなる守神さん。

「貴殿は、そんな訳の分からぬものに畏れ、ムウ様を裏切ったでござるか!」

「守神殿はあのお方の恐ろしさを知らぬから、そのようなことが言えるのだ! あのお方は、大和様どころか、この世界の手に負える相手ではない!」

「何を言っておるのだ?」

リーダーの男のあまりの狼狽っぷりに、俺たちは困惑する。

この世界の手に負えないって……どんなレベルの相手なんだよ? まさか、魔神とか言わないよね?

「……もういいでござる。それよりも、今はこの者たちにここがバレたことの方が問題でござるな。『影の里』の入り口はそう簡単に見つからないはずなのでござるが……」

「……もう遅い」

「え?」

ゆらりと顔を上げたリーダーの男は、静かに口を開いた。

「遅い……とは、どういうことでござるか?」

「俺はもう、後がなかった。一度目の襲撃を貴殿に防がれ、ムウ様を取り逃がしたことでな」

「だから、それがどうしたのでござる?」

「分からぬか? 二度目の機会をいただいた俺は、絶対に失敗することができなかった。しかし、それも貴殿らだけでなく、そこの異国人らによって防がれてしまった。そして、俺は一度目の襲撃を失敗したことで、あのお方から監視をつけられていたのだ」

「まさか!?」

「――――もうここには、あの方の手勢が来ている」

リーダーの男がそう告げた瞬間、俺たちの部屋に勢いよく月影さんが飛び込んできた。

その背中には、相変わらず無表情の大和様もいる。

「月影殿!?」

「守神殿、急いでここを出るぞ! 今、この里を謎の生物が襲撃しておるのだ!」

「謎の生物!?」

ますます訳の分からない状況に、俺たちはただただ困惑していると、リーダーの男は頭を抱え、震え始めた。

「き、来た……もう駄目だ。この国は……いや、この世界は……あのお方に征服されるのだ……」

「貴殿は――――」

守神さんが何かを言おうとした瞬間、突然俺たちの部屋の窓から、何かが飛び込んできた。

そいつは――――。

「キシャアアアアアア!」

「な、何だ?」

「……うねうねしてる」

オリガちゃんの言う通りで、突然俺たちの部屋に乱入してきたその生物は、まるで魚に人間の体がくっついたような見た目の、謎の生物だった。

しかし、顔は魚というには少し凶悪で、目がぎょろりと飛び出すだけでなく、両手は触手となってうねうねしている。

何だろう、最近の流行りは触手なのか? 俺が海と陸に頼んだ時も触手みたいになってたし。

「な、何でござるか、この生き物は!」

「その生物こそ、あのお方の部下だ……」

「部下でござるか!? この気持ち悪い生き物が!?」

「キシャ!?」

守神さんにハッキリと気持ち悪いと言われてしまった謎の生物は、その魚のような顔を器用に歪め、ショックを受けているみたいだった。あ、そう言うのは気にしてるんだ……。

しかし、同時に守神さんの言葉に怒ったようで、謎の生物は問答無用で襲い掛かってきた!

「キシャア――――アアアアアアア!?」

だが、謎の生物は俺たちにたどり着くことなく、思いっきり吹き飛ばされる。

その原因に視線を向けると、そこには足を振り上げたルルネの姿が。

「魚が陸に上がるな」

どんな指摘ですかそれ?

そもそも、それをルルネが言ったらおしまいだよ? ロバが喋るなって言われるからね?

まあでも、あの謎の生物は見た目こそ少しアレだが、魚に見えなくもない。

しかし、ルルネはそんな謎の生物を前にしても、暴走することはなかった。

「ルルネ……本当に成長して……」

「……ん。でも、逆に心配。本当に食いしん坊?」

「何だその言い草は!?」

すまん、ルルネ。オリガちゃんの気持ちも分からんでもない。

「いや……ルルネが魚を見て、食欲が先に来ないのが意外だったからさ……」

「主様……た、確かに以前はそうでしたが、バハムートを食べた今、ただの魚はちょっと……」

あ、成長したって言うより、グルメになっただけ!?

でも、グルメになったおかげで食欲が落ち着いてくれた今の方がありがたいのも事実。また今度、ルルネと美味しいものでも食べに行くとしよう。

魚を蹴り飛ばしたルルネは、足を軽く振ると、呆れた様子で呟いた。

「それにしても、この国の人間はあの程度も倒せんのか? 普通(・・) に魚に手足が生えただけだろう?」

ルルネさん! 普通(・・) は魚に手足はねぇ!

思わずルルネの言葉に驚いた俺だったが、あることに気付く。

「って……そういえば、アイツが結局何なのか調べ損ねたな」

「んー……別にいいんじゃない? 私たちでも倒せそうだし!」

「だな。相手が何にせよ、襲ってくるなら蹴散らすだけだろ」

「わ、私はどこまでお手伝いできるか分かりませんが、頑張ります!」

サリアたちは頼もしいことに、そう言ってくれる。

すると、ふと守神さんたちが静かなことに気付き、視線を向けると……。

「「「……」」」

守神さんも月影さんも、それこそリーダーの男までもが唖然と俺たちを見ていた。

あ、あれ?

特にリーダーの男に至ってはこれでもかというほどに目を見開いている。

「ば、バカな……あの生物には、我々の刀すら効かぬのだぞ!?」

「それは貴様らの包丁が鈍らなのだろう? しっかり研げ」

「だから魚じゃねぇよ!?」

ルルネさんや。

リーダーの男が持ってる武器も、ましてや守神さんたちの所持している刀も、包丁じゃないですからね?

確かに見た目は魚っぽいが、どちらかと言えば宇宙人っぽさを感じる。

……でも、ルルネが海から拾ってきたらしいあの邪神に比べれば、まだかわいいもんだけどな。

そんなことを思っていると、またも同じような謎の生き物が窓から侵入してきた。

「まったく……何度来ても同じだと言うのに……」

「待って、ルルネ! 一応、コイツが何なのか確認するから!」

ルルネが再び蹴りを食らわせる前に、俺はすぐに目の前の生き物に『上級鑑定』を発動させた。

だが……。

『――――』

「あれ?」

名前どころか、レベルすら分からなかった。

それも、はてなマークで表記されているんじゃなくて、完全に何も表記されていないのだ。

「んん? おかしい……バハムートや邪神にはちゃんとスキルは発動してたし、目の前のコイツが邪神より強いとはとても思えないが……」

なんで表記不明なのか首を傾げる俺だったが、謎の生物はそんな俺に容赦なく襲い掛かってきた。

「キシャアアアアアアアアアアアアアアア!?」

だが、謎の生物はそのまま自分の体の制御を失ったように動き始め、どんどん自傷行為を重ねていく。

「き、キシャ!? シャ!? シャア!?」

何が起きているのか理解できないといった表情の謎の生物は、そのまま自分に殴り飛ばされると、窓の外へと勝手に出ていった。

…………。

「何だかよく分からんが、大丈夫そうだな!」

「「「いやいやいや!」」」

俺の言葉を聞いた守神さんと月影さん、そしてリーダーの男はすごい勢いで俺の言葉を否定してきた。

「おかしいだろ!? 何だ、今の現象は!? 何をどうすればいきなり敵が自滅するというのだ!?」

「そ、そうでござる! それに、話によると我らの武器が効かない相手というではござらんか。それが何で……」

「……お、俺たちの攻撃は間違いなく通らなかった。だからこそ、あのお方に侵略されたというのに……何故……」

「いや、何故って言われても……」

俺が訊きたいくらいだ。何もしてないのに勝手に逃げるのって酷くない?

すると、そんな守神さんたちの様子に対して、アルがため息を吐いた。

「誠一と行動するなら、この程度で驚いてたらキリねぇぞ? オレたちは数回、同じ現象を目にしてるからアレだけどよ」

「アレと同じ現象を数回!?」

「とにかく、コイツのことで頭を使うだけ無駄だ。どうせまたオレたちの考えも及ばねぇことをしでかすんだからよ」

「しでかさないよ!?」

なんで俺がわざわざそんな訳の分からないことに突っ込んでいくと思っているんだ。どれもこれも俺が認知してないものばかりだし、不可抗力です!

俺の抗議も全く意にも介さず、アルは守神さんたちに訊いた。

「それよりも、これからどうすんだ? あの程度の連中なら、オレたちでも蹴散らせるし……いっそのこと、本拠地乗り込むか?」

「そ、それは……」

守神さんはどこか及び腰だったが、月影さんは少し考えた後、一つ頷いた。

「……それがいいかもしれぬな」

「月影殿!?」

「守神殿。今の誠一殿たちを見たであろう? どうも拙者たちには想像もつかぬ力を持っているようだ。それに、どのみちこの里の入り口は相手に知られてしまっている。逃げる先が敵の本拠地となっただけだ」

「そ、それが危険だと思うのでござるが……」

守神さんは月影さんの言葉をしっかり考えたうえで、やがてため息を吐いた。

「……これもまた、一つの道でござるか。承知したでござる。では、ここからは敵の本拠地に行くでござるよ!」

守神さんの一言をきっかけに、俺たちは次の目的地が決定し、早速行動に移し始めるのだった。