軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

褒賞についての話し合い

「……ごめんなさい。変なところを見せたわね」

二人が抱きしめ合ってからしばらくたつと、少し鼻をすすりながらアメリアはそう言った。

「いや、そうは思わないけど……その、二人は姉妹なのか?」

「ええ。異母姉妹ってヤツね」

「お姉ちゃんが正室の娘で、私が側室の娘なの。まあブルードと似た感じね」

「な、なるほど……」

まさかのFクラスに王族が二人もいるとは思わなかった。

新事実に驚いていると、落ち着いたアメリアが真剣な表情で俺を見る。

「誠一。改めて言うけど、貴方には本当に助けられたわ。まあその方法は予想外過ぎたけど……」

「……」

「だからこそ、貴方には褒美を渡さなければいけないわ」

「別に褒美が欲しくてやったわけじゃ……」

「貴方はそうかもしれないけど、私たちは確かに助けられたし、ここで貴方に何も返せなかったら国の沽券にかかわるわ。もちろん、その功労者であるあなたの意見を無視して、国の事情を押し付けるのはどうかと思うけど……」

「い、いや……さすがに国の事情を押しのけてまで個人の意思を押し付けるつもりはないから、もう褒美の件はいいんだけど……」

だいぶ前にランゼさんを助けた時も似たようなことを言われたけど、国を率いる人って大変だなぁ。てか、そんなことをいちいち考えなきゃいけないなんてめんどくさそう。

何で手助けしたかったから手助けしただけなのに「はい、ありがとう」じゃ終われないんだろうか。いや、俺がそう駄々こねても仕方ないんだけどさ。

それに、言った通り国の事情を押しのけてまで、俺の我がままを通すつもりはない。てか、そんなこと小心者の俺には無理だ。

俺の反応に、アメリアが安堵のため息を吐いた後、また表情を改める。

「ふぅ……そう言ってもらえると有難いけど、私も今すぐ貴方に対する褒美が浮かばないわ。なんせ、戦争を一人で止めちゃったんだもの……」

「……そうよね。よくよく考えたら、カイゼル帝国対ヴァルシャ帝国の戦争だったのに……誠一先生はそれを一人で解決しちゃったのよね……」

「そうなのよ……だから、普通の褒美じゃどう考えても釣り合わないのよ……」

ヘレンとアメリアは、そう言いながら同じように頭を抱えた。いや、ごめんなさい。

でも、俺自身も特に欲しいものはないのだ。

お金も困ってないし、武器も防具もいらない。

ランゼさんの時は、俺がまだ魔法を上手く使えてなかった頃だから、フロリオさんに魔法を教えてもらうていうことで何とか納得してもらえたんだけど……。

アメリアの後ろに控えているリエルさんとスインさんも、同じように俺への褒美とやらで頭を悩ませているが、答えは出ないようだ。

しばらくの間そんな時間が続いたと思うと、やがてアメリアは溜息を吐く。

「……ダメね。今すぐこれっていうモノが浮かばないわ。それで、申し訳ないんだけど……誠一には一日でいいからこの城に泊まって行ってくれないかしら?」

「え?」

「せめてものってワケじゃないんだけど、最高のおもてなしをさせてもらうし、何とか明日までにその褒美のことも考えておくから……どうかしら?」

「えっと……」

戦い自体は終わったし、暇と言えば暇なのだが……サリアたちには連絡しとかないとな。

「多分大丈夫だけど……」

「本当に!? なら、昨日使ってもらった部屋で、もう一泊してちょうだい! 昨日はそこまで余裕なかったけど、美味しいものを御馳走するし、この城には自慢の大浴場があるからね。そこも楽しんでいってちょうだい」

俺の返答に目を輝かせ、アメリアはそう言った。

ランゼさんのお城にもお風呂があったけど、やっぱりお城には大浴場がセットなのかね。こう、権力や財力の象徴の一つとしてさ。

そんなことを思っているうちに、あれよあれよと俺はメイドさんに連れられ、昨日泊まった部屋までまた案内されるのだった。

◆◇◆

誠一が部屋を出ていったあと、アメリアたちはまだ話し合いを続けた。

「ひとまず、誠一には明日まで待ってもらうように言ったけど……」

「お姉ちゃん、大丈夫? その……話だけ聞いてたら、とても褒美なんて用意できそうにないけど……」

「そうですね……正直、功績が大きすぎて、参考にできるものもありませんから……」

「そうなんだよねぇ……普通なら、いかに国庫を痛めることなく、相手を納得させられるかとか考えるんだろうけど……まさかこっちの懐事情とか抜きで、どうすれば本気で満足してもらえるか考えることになるなんて思わなかったよ」

「そうなのよ……昔いた、バカ貴族どもに褒賞を与えるときとは状況も心情も違いすぎて、正直何も分からないのよ……」

皆あれこれと誠一に対する褒賞内容を言い合うが、中々いい案が出てこない。

というのも、誠一自身が告げたわけではないが、お金に困っているようにも見えず、武器や防具も誠一が身に着けている以上のモノはヴァルシャ帝国にはない。

このまま話し合いが迷宮入りするかと思われたが、アメリアは何か決意した様子で顔を上げた。

「……私、決めたわ」

「え?」

「決めたって……褒賞の内容ですか?」

ヘレンたちの視線がアメリアに向くと、アメリアは頷いた。

「ええ――――私、誠一に嫁ぐわ」

「「「はっ!?」」」

アメリアの予想外の発言に、全員固まった。

だが、アメリアはそんな様子を気にせずに続ける。

「正直、今のヴァルシャ帝国に誠一を満足させられるようなモノはないわ。それなら、もう女帝である私を渡すしかないと思うの」

「ちょ、ちょっと、お姉ちゃん!? それ、本気で言ってる!?」

「本気よ? 幸い、私は見た目はいいみたいだし、何度も他国の王侯貴族から求婚されてきたわ。それでも断ってたのは、ここぞというときのため……つまり、ヴァルシャ帝国の未来のために残しておいたのよ。でも、正直そろそろこの手札も年齢的に使えなくなると思ってたの。やっぱり、若い方が効力はあるしね」

「そ、その……確かに外交として、他国の王族と婚姻することはありますが、褒賞でそれはどうなんでしょうか……?」

ヘレンの次に正気に戻ったリエルが、恐る恐るそう告げる。

「まあ、誠一からするといい迷惑かもね。というか、褒賞にすらなってないかも……」

「じゃ、じゃあなんで?」

「もうあげられるモノって言えば、私自身と地位……つまり、この国の王という地位くらいしかないのよ。だって、誠一がいなければこの国は滅びてたんだし」

「そ、それは……」

実際、誠一がいなければヴァルシャ帝国はなくなっていたため、誠一が王になること自体はさほど問題がないとアメリアは考えていた。

というのも、もし仮に誠一と結婚して、誠一が帝王になったとしても今まで通り執政はアメリアがする予定だったからだ。

「それに、こう言っちゃなんだけど、誠一との婚姻は確実に大きな外交手段の一つになるわ。それだけ、誠一の戦闘力はおかしいのよ」

「……否定できないわね」

誠一のデタラメ具合を知っているヘレンは、確かに誠一という存在が外交において強力な手札になることを理解していた。

「……ま、私をあげるといっても、受け取るかどうかも分からないし、今のところ他に候補もないから、とりあえず聞くだけ聞いてみましょ」

最後にアメリアはそう締めくくると、ひとまず誠一への褒賞の話し合いは終了するのだった。