軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

驚きの出会い

「……突然現れたかと思えば、おかしなことを言う。勇者の師匠? 初代魔王? ハッ。ウソを吐くなら、もう少しましなウソにするんだな」

ゼアノスとルシウスの出現に驚いていたロディアスだったが、すぐに余裕を取り戻し鼻で笑う。

「しょ、初代魔王様……だと……?」

「う、ウソだろ? なあ……」

「だが、あの角は間違いなく我々魔族のモノ。とはいえ、初代魔王様など……」

そんなロディアスとは別に、ルシウスの言葉を聞いていた魔族の面々はかつてないほどに驚愕していた。

それぞれが驚きを見せる中、ルシウス本人のみ呑気に笑っていた。

「うーん……まあ信じられないのも無理はないよねぇ。ハハハハハ」

「……ふん。状況が読めてないようだな。お前たちの正体が何なのかは分からないが、ここに来たからには死んでもらうぞ?」

ロディアスのすさまじい威圧感を受け、魔物と戦っているゼロスやゾルアでさえゾッとしているというのに、ゼアノスとルシウスの余裕は崩れなかった。

「ふむ……ルシウス殿。ここは私が受けよう。貴殿は魔物どもの相手を頼む」

「ん? いいのかい? 任せても」

「無論だ」

それどころか、一人で相手になるというゼアノスの言葉に、ロディアスは眉をピクリと動かした。

「……ずいぶんと舐めてくれたものだな。だが、俺が相手をするまでもなく魔物が貴様らを殺してしまうだろう!」

「グギャアアアアアアア!」

「ガアアアアアアッ!」

ゼアノスとルシウスに襲い掛かる魔物たち。

すると、ルシウスはそんな魔物を驚くほど冷たい視線で射貫いた。

「うるさいよ」

その一言で、魔物は黙る。否、行動すら止めた。

それは理性を失ったはずの魔物たちが、残された本能に従った結果だった。

魔物たちが動きを止めたことで、ルシウスは満足げに頷いた。

「そうそう。いい子だねぇ」

魔族軍の面々や【剣聖の戦乙女】のメンバー、そしてロディアスすらも驚愕で目を見開いた。

「……バカな……どうなってる……!?」

「ふむ、この私を前にしてよそ見とは恐れ入る」

「何!? ぐあっ!」

ルシウスの力を前にして完全にゼアノスから気を逸らしていたロディアスは、ゼアノスの漆黒の細剣でわき腹を切り裂かれる。

ロディアスはすぐに距離をとろうとするが、ゼアノスはそれを許さなかった。

「貴様はもう――――攻撃する機会を失った」

そこからはゼアノスの怒涛の攻撃が続いた。

ロディアスはゼアノスの攻撃を必死に防ごうとするが、ゼアノスの細剣はまるで生き物のように動き、ロディアスの防御を容易くすり抜ける。

「バカなバカなバカなッ!? 魔神様の御力を宿す……この俺が……!?」

「【魔神】? だからどうした。こちらは冥界すら屈服させる【人間】と共にいたのだぞ?」

「な、何ぃ!?」

「――――そこだ」

動揺した一瞬の隙を突き、ゼアノスはロディアスの足を貫いた。

「がああああっ!」

「賊よ、まだやるか?」

ゼアノスは細剣についた血を払いながら、その場にうずくまるロディアスに訊ねる。

その余裕は強者にだけ許され、今までロディアスはその立場にいた。

それが今は逆転し、自分自身が見下ろされている。

「……あってはならない。あってはならないのだ……! 魔神様の御力を頂戴した、我々使徒が敗北するなどと……!」

ロディアスは気力を振り絞って立ち上がると、周囲に大量のナイフを出現させた。

しかも、ただのナイフではない。

一つ一つに様々な属性などの効果が付与された特製のナイフだった。

「死ねぇッ!」

ロディアスが腕を振ると同時に、ナイフはゼアノスめがけて飛んでいく。

ナイフを冷静に見つめ、ゼアノスはその場から飛び退くと、ナイフは速度を落とすことなく追跡してくる。

「そのナイフは貴様を殺すまで追い詰めるぞ……!」

「ふむ……」

ゼアノスはナイフの群れをかわしながら一つ頷くと――――。

「『ダークホール』」

「何!?」

突如、ゼアノスとナイフの間に漆黒の空間が出来上がった。

その空間にナイフは吸い込まれていくと、空間ごと消滅する。

「『ダークチェイン』」

「なっ!?」

さらにゼアノスはそれで終わらず、続けて魔法を使用した。

するとゼアノスから漆黒の鎖が伸びていき、ロディアスを拘束する。

「失礼。死後、『暗黒貴族』などと呼ばれていたものでね。闇属性魔法は得意なのだよ」

「ぐっ!」

必死に拘束を解こうとするが、漆黒の鎖はビクともしなかった。

もがき、足掻くロディアスにゼアノスは細剣を静かに突きつけた。

「残念であったな? 愉悦の時間はお終いだ」

「く……クソおおおおおおおお!」

――――こうしてロディアスは拘束されたのだった。

◆◇◆

『クッ! この数……どれだけ倒せば終焉が見えるのだ……!』

『黒の聖騎士』は近づく魔物を片っ端から自身の【黒炎魔法】で焼き尽くしていた。

【黒炎魔法】は『黒の聖騎士』のみが使える固有属性であり、火属性魔法には存在しない仲間の補助ができる特殊な属性だった。

他にも通常の火属性魔法よりも強力な魔法が多く存在するが、『黒の聖騎士』はその補助の特性を活かす方が得意であった。

『む、エレミナ様! 【守護黒炎】!』

『黒の聖騎士』は視界に入ったエレミナに魔法を使う。

すると、エレミナの体を漆黒の炎が包み込んだ。

「『黒の聖騎士』ね! ありがとう!」

『礼には及びませぬ』

「それにしても……本当にいつまで湧き続けるのよ! このままじゃ私たちの体力や魔力が底をつくわよ……」

黒炎と雷の二つを纏ったエレミナは、目の前に迫っていた龍型の魔物を手刀で真っ二つにする。

他のS級冒険者たちも最初のころのような余裕は見えず、徐々に焦りが顔に浮かび始めた。

何せ、相手にしているのは弱い魔物ではなくS級の魔物なのだ。

一見余裕そうに対応しているようにも見えるが、凡人には分からぬレベルで繊細かつ慎重に戦っていた。

高レベルで防御力が高くとも、S級の魔物の一撃を受ければ再起不能になるのは確実だったからだ。

フロリオ率いる魔法師団もS級冒険者たちや【奈落の黒兵団】の背後で援護しているも、そちらの魔力も尽きかけている。

終わりは必ずある。

だが、その終わりに辿り着くビジョンが彼らには見えなかった。

――――そんな彼らに、思わぬ援軍がやって来た。

「――――ガルス! そっちの護りの薄い方の援護に回ってくれ! アンナはなるべく多くの魔物のをかく乱、リリアナは物理攻撃の効きにくいヤツの相手を頼む!」

「おう! 任せろ!」

「行くわよっ!」

「はい! 『フレイムレイン』!」

「え?」

かつて勇者として活躍したアベル一行が到着したのだ。

突然の見慣れぬ援軍にエレミナを含むその場で戦っていた全員が驚きの表情を浮かべる。

そんな彼らを気にすることなくアベルは近くにいた数体の魔物を一刀で斬り捨てると、すぐにまた別の魔物を次々と殲滅していく。

ガルスは巨大な盾を持つと怪我で動けない兵士と魔物の間に割り込み、盾で魔物を殴り倒した。

アンナは弓や投げナイフを使用し、多くの魔物の意識を集め、魔物の動きを混乱させる。

リリアナはアベルの指示通り、時々混じっている物理攻撃が効きにくい魔物を積極的に強力な魔法で葬っていた。

アベルたちの殲滅速度は尋常ではなく、どんどん魔物の数が減っていく。

「一度死んだだけじゃなく、誠一と会っちまうとこの程度どうってことねぇよな……!」

苦笑いを浮かべながらアベルが魔物を処理していると、手足の生えた宝箱が声をかけた。

「……おれ、力、貸す?」

「ん? いや、俺たちだけで十分だ! お前さんは誠一の両親たちを護っててくれ!」

「……分かった」

宝箱は素直に頷くと近くにいた戦うことのできないマリーたちの護衛をする。

宝箱に護られている誠一の父親である誠は、目の前の光景を見て呟いた。

「……道中でも地球では見たことのない生物を見たが、ドラゴンとかまでいるんだな……」

「地球に現れたら大騒ぎよねぇ」

「ううむ……見たところ魔物? という生物は人間を積極的に襲うようだな。そう言えば、ゼアノスさんたちが狩ってきた生物の肉も魔物だったよな?」

「そうね。魔物って言うからどんな味がするのかと思えば、普通に美味しかったわよねぇ」

「物騒だが、これがこの世界の文化なのだろう」

「ええ……ドラゴンのお肉ってどれくらい美味しいのかしら?」

「それは俺も気になるな。後でアベル君に頼んでもらおう」

本来ならその光景を見て倒れてもおかしくないというのに、誠一の両親たちは相変わらずのマイペースで宝箱は内心「この二人、大物すぎなのでは?」と思っていた。

事実、ゼアノスのメイドであるマリーや、ただの花屋さんであるナチュリアーナなどは目の前の光景を見て恐ろしく感じていた。

宝箱にそんな風に思われているとは思わない誠たちは、アベルがとある魔物と対峙した場面を見て、顔を見合わせた。

「なあ……」

「ええ、あの魔物……」

「? どうか、したのか?」

妙な反応をする二人に宝箱は訊いた。

すると、誠から逆に質問されてしまう。

「なあ、宝箱さん。アベル君のところまで私たちを連れて行けるかい?」

「……え? 可能だ……けど、危ない」

「それは百も承知だ」

「……どうしても行きたいのか?」

「ああ。大切なことなのでな」

「……分かった」

誠の言葉もそうだが、宝箱が頷いたことも含めて、マリーたちは驚いた。

「あ、危ないですよ! どうしてそんな危険なことを!?」

「マリーさん、大丈夫よ。宝箱さんが守ってくれるって言ってるし」

「それでも絶対ではないんですよ!?」

「分かってるわ。でも、行かなきゃダメなのよ」

引き留めようとするマリーたちを宥め、誠と一美は宝箱に守られながらアベルのもとへ向かった。

当のアベル本人はと言うと目の前の魔物と対峙して、隙を伺っている。

しかも、その魔物は二体で行動しており、アベルを挟み込むようにして様子を見ている。

「コイツら……隙が見えねぇ……」

「アベル君!」

「え? ……って誠さん!? それに一美さんも……危険ですから、今すぐ引き返してください!」

「それは分かってる。だが、今だけは許してほしい」

「はい?」

隙を見せないように注意しながらアベルは誠と会話していると、一美はアベルが対峙していた魔物に話しかけた。

「アナタたち――――サリアさんのご両親よね?」

「へ!?」

「な、何?」

一美の言葉に、アベルと宝箱は驚いた。

「サリアさんって……あの誠一の隣にいた女の子ですよね? そんなまさか――――」

「……娘ヲ……知ッテイルノカ……!?」

「マジかよ!? ってかしゃべれるの!?」

アベルと対峙していた魔物――――【カイザーコング】の一体が驚きの表情で一美を見た。

「ええ、私たちの息子と一緒にいるわ」

「……嘘ハ……吐イテナサソウダ……」

「あら? ウソかどうか分かるの? 便利ねぇ~」

便利とかそういう問題ではないのだが、一美にとってそんなことは一つの特技くらいにしか思っていなかった。

「いやいやいや! そんな自然に話し進められても困るんだが!? え、じゃ何? サリアさんって魔物なのかよ!?」

「そうよ? ほら、彼女とサリアさんの目元なんてそっくり!」

「目元!? ってコイツ雌なの!?」

「ソウダガ?」

何当たり前の事をと言わんばかりにアベルの目の前のカイザーコングは呆れていた。

そして、逆側で構えていたカイザーコングも口を開く。

「ウム、ソシテ私ハ雄ダ」

「ええ、分かってるわ。アナタがサリアさんの父親ね?」

「違いが分からねぇ! 何で一美さんは見分けられるんだよ!?」

「勘かしら?」

「誠一の家族おかしいなぁ!」

ヤケクソ気味に叫ぶアベルをよそに、誠は冷静に告げた。

「というワケで、彼らがサリアさんのご両親だと気付いたのでね。止めに来たんだ」

「いや、そういうワケなら……相手が魔物で見分けられるなんて思いもしなかったけど……まあいいや。それで? どうするんだ? まだ戦うのか?」

気を引き締め真剣な表情でそう問うアベルに、カイザーコングの二人も真剣に答えた。

「イヤ、止メヨウ。娘ノ知リ合イヲ傷ツケルワケニハイカナイカラナ。ソレニ、私タチハ洗脳サレテイタノダ。ソレガ、【サリア】ノ名前ヲ聞イテ目ガ覚メタ」

「洗脳だと? それはどういう――――」

「グオオオオオオ!」

そこまで言いかけると、アベルたちに他の魔物の群れが押し寄せてきた。

「チッ! これじゃゆっくり話もできねぇ……誠さん! もう用事が済んだならマリーたちの所に戻ってください! もうこの……二人? 二体? ああもうっ! とにかくコイツらとは戦わないですから!」

「そうだな。邪魔しちゃ悪いし、私たちは戻ろうか」

「そうねぇ。……あ、そうだった! アベルさん、後でドラゴンのお肉を持って帰って来てくれないかしら? 食べてみたいのよ~」

「メチャクチャ余裕だなぁ!? わ、分かりましたよ! 何とかします!」

「ありがとう! それじゃあ戻りましょう」

「……頑張れ」

宝箱が最後に小さく励ますと、誠たちを連れて戻っていった。

それを確認すると、アベルは襲い掛かって来る魔物を相手にしながら再び二体のカイザーコングに声をかけた。

「アンタら、洗脳が解けたって言うんなら俺らの味方をしてくれんのか?」

「任セテオケ。ソレト、私ニハ【サニー】トイウ名ガアル」

「私ハ【アドラメレク】。ソウ呼ベ」

「何でそんなに名前がカッコいいワケ!?」

「? 魔物ハダイタイコンナ感ジノ名前ダガ?」

「まさかの新事実!」

アベルは全力でツッコみつつも、サリアの両親である【カイザーコング】と協力して魔物を倒していった。

その結果、アベルたちや【カイザーコング】の協力が決定打となり、無事に魔物を殲滅する事が出来たのだった。