軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

元勇者一行と使徒の一手

ユーストたちが魔神教団の使徒を制圧している中、魔族軍は『剣騎士』ことルイエス率いる【剣聖の戦乙女】のいる方へ、S級冒険者たちは『黒の聖騎士』率いる【奈落の黒兵団】の方へというように二手に分かれ、それぞれが城壁の外へと向かっていた。

「おい、ネム! いい加減起きねぇか! お前がいなきゃ『結界』の補強できねぇだろうが!」

「ん~……?」

オーヴァルに揺さぶられ、ネムは目をこすりながら目を覚ました。

「ふぁ~……何~……? まだ眠いんだけど~……」

「この戦いが終わればいくらでも寝かしてやるから。とにかく、元々ここに張ってた『結界』を補強してくれ」

「ん~……よく分かんないけど~……は~い……」

ネムは未だに眠そうにしながら、腰に提げていた杖を取り出して上空に掲げた。

「ふぁ~……もともとはアルちゃんのために張ってた『結界』なんだけどなぁ~……あ、そう言えば……こっちに戻って来てからアルちゃん見てないけど~……どうしてるんだろ~? この『結界』から出たら危ないし~……まだいるのかな~?」

「おい、考えるのは後にしろ!」

「はいはい、分かったよ~……『結界術:魔除けの層』~」

オーヴァルに引きずられた状態でネムは魔法を唱えた。

瞬間、上空に掲げていた杖から、青白い光が空へと飛んでいく。

その光は上空で弾け、王都テルベール自体を覆った。

――――ネム・ドルミール。

彼女は『眠り姫』の異名で知られるS級冒険者であり、このテルベールではまた違う意味で有名であった。

それは、テルベールを包む『結界』にある。

実は彼女とアルトリアは友人であり、アルトリアの不幸体質を何とかするために色々調べたりしていた。

そして、アルトリアの不幸体質を何とか抑える結界をテルベールに張ることによって、テルベールは今までアルトリアの不幸体質の被害を受けていなかったのだ。

「よし、よくやった! んじゃあこのまま――――」

「Zzz」

「寝るの早ぇよ! まだ魔物が残ってんだから寝るんじゃねぇ!」

「む! あそこに可憐なお嬢さんが!? お嬢さん! 一緒に熱い一夜を――――」

「おいユリーネ!? テメェどこ行くつもりだよ!? だあああっ! ユースト、お前苦労してたんだなぁ!?」

自由すぎるS級冒険者たちを制御するだけで、オーヴァルは疲れていた。

それでも何とか『黒の聖騎士』がいるところまでやって来ると、そこでは『雷女帝』であるエレミナを中心に、魔物との激戦が繰り広げられていた。

「おいおい……こうしてみると絶望的だな……」

思わずと言った様子でオーヴァルが呟く中、エレミナは目の前のドラゴンと対峙していた。

「本当にS級の魔物しかいないようね……【ブレイド・ドラゴン】なんて久々に見たわよ?」

「グオオオオオオオオッ!」

エレミナが対峙する魔物は全身から鋭い刃を生やした、異形のドラゴンである【ブレイド・ドラゴン】だった。

その刃一つ一つが腕利きの鍛冶師が打った剣と遜色ない切れ味を誇り、ドラゴン系統ゆえの魔力の高さから、それぞれの刃に魔法を纏わせて攻撃することもあった。

だが――――。

「残念ね、私との相性は最悪よ?」

エレミナはそう言うと、右腕をブレイド・ドラゴンに向けて突き出した。

「『雷極槍』」

エレミナの腕から大量の雷の槍が出現するとそのまま一つの束になり、極大な一本の雷の槍が出来上がっていた。

それは、校内対抗戦でアグノスに対し、ロベルトが全力で生み出したモノよりもさらに大きかった。

生み出された雷の槍は、ブレイド・ドラゴンが認識できない速度で飛翔し、その刃の体をいとも容易く貫いた。

「グガアアアアアアアアアアッ!」

貫かれたブレイド・ドラゴンは全身に雷が走り、感電して黒煙を上げながら倒れた。

その様子を見ていたオーヴァルが、呆れたように言う。

「あそこまで強い王妃ってのは、世界中探してもいねぇだろうな」

「そうですね……さて、エレミナ様にだけ戦わせるわけにはいきません。私も行きましょう」

すると扇子で口元を隠しながら優雅な足取りでコーネリアが前に出る。

「本来ならば、こうして倒されることもなく静かに過ごせたでしょうに……」

どこか憐れむような表情で目の前の魔物の群れを見つめるコーネリアは、細い指先を魔物の群れに向けた。

「せめて、大地に還して差し上げましょう」

そう言った瞬間魔物の群れを囲むように、周囲の大地が腐食していった。

「朽ちて、沈みなさい。『腐海』」

腐食した大地はやがて魔物の群れの足元にまで及び、腐った地面は底なし沼へと姿を変えた。

「ガアアアッ……ガ、ガガ――――」

「ギエエエエエ! ギエ、ギギ――――」

「ゴオオオオオ、オオ、オ――――」

魔物たちは必死に抜け出そうと足掻くが、動けば動くほど沼へと沈んでいき、最後は完全に沈んで沈黙した。

さっきまで沼と化していた大地は元通りとなり、すべてを見届けたコーネリアは扇子を閉じる。

「来世は、平穏に過ごせるといいですね」

コーネリア・アルノルディ。

彼女は世界で唯一の『腐属性魔法』を操る存在であり、その魔法と貴族であることから【貴腐人】の異名を持っていた。

「はぁ……ホモン様たちはこの場にいないようですし……向こうにいるのかしら?」

……決して、その道の人だから【貴腐人】と呼ばれているわけではない……と思いたい。

コーネリアが魔物の群れを一掃する中、同じS級冒険者であるユリーネはすさまじい速度で魔物を斬り倒していた。

「まったく……貴様らのせいで満足にナンパもできんではないか……!」

魔物と戦う動機は不純であるものの、その実力は確かであり、今も確実に魔物の数を減らしている。

「この街だけで、一体どれほどの女性がいると思ってる!? それを襲うなど……神が許しても私が許さん!」

ユリーネはその場で大きく跳躍すると、剣を上空に掲げた。

「吹き荒れろ――――【 百合斬(ひゃくごうざん) 】!」

すると、ユリーネの持つ剣を中心にどこからか出現した花びらが集まった。

そして、その花びらを纏った剣を勢いよく振り下ろすと、花びらとは思えない鋭い刃となって、周囲の魔物に降り注いだ。

『ギャアアアアアアア!』

「うるさい! 黙って死ね!」

『ギャ、ギャア!? ギャ――――』

理不尽な理由で断末魔すら上げることを許されず、魔物は消えていった。

ユリーネ・レズィ。

まるで百合のように可憐に斬り伏せるその姿から、『百合の剣士』の異名を持つ彼女。

……それが今となってはある意味での『百合の剣士』になってしまったのは、残念と言うほかない。

「んー……ちょくちょく見たことねぇ魔物が混じってんナ……」

超巨大なアフロ頭を掻きながらアフロスはそう言った。

そんなアフロスに向かって、一体の魔物が突っ込んで来る。

「ん? アイツは……」

アフロスにめがけて突っ込んできたのは、S級の魔物の中でもトップクラスの防御力を誇る【ガーディアン・ドラゴン】だった。

その鱗は並大抵の武器では傷一つ付かず、この場にいるS級冒険者の中ではユリーネやガルガンドとは相性が悪い魔物だった。

「グオオオオオ!」

「ふぅ……コイツ、確かメチャクチャ硬いんだっけナ~……」

面倒だと言わんばかりにため息を吐くアフロスをよそに、ガーディアン・ドラゴンはその防御力を活かした突進を繰り出してきた。

このまま激突すれば、いくらS級冒険者であろうと無事ではいられないような危険な突進なのだが、アフロスに焦った様子はない。

「ま、結局いつも通りなんだけどナ」

アフロスとガーディアン・ドラゴンが激突するといったところで、アフロスは急に頭を下げた。

その結果、必然的にアフロスの超巨大アフロにガーディアン・ドラゴンが突っ込むことになり――――。

「ん、入ったナ」

何と、ガーディアン・ドラゴンはそのままアフロに飲み込まれていった。

そして何事もなかったかのように頭を上げると、アフロスは自分のアフロ頭に手を突っ込み、何かを掴むとそのまま手を抜き出す。

「よっと……やっぱりソコソコデカいナ」

出てきたのは、先ほどまで対峙していたガーディアン・ドラゴンの骨だった。

「戦うのは面倒だガ、素材が集まるのは嬉しいんだよネ」

そう言うと、鼻歌でも歌いだしそうな雰囲気で次々と魔物をアフロの中に収納しては、骨だけにして取り出していく。

アフロス・ディノワール。

未開の地や魔境と呼ばれる場所を開拓する冒険者でありながら、その謎過ぎるアフロから『魔境』という異名を与えられた珍しい冒険者だった。

「ガルガンドはいかなくていいのか?」

「あ? 人型の魔物がいねぇからな。俺はパスだ」

「お前……相変わらずブレねぇな……とはいえ、この様子じゃ俺たちの出番はなさそうだな」

ガルガンドとオーヴァルは目の前の光景を眺めながら、そんなことを話していた。

事実、エレミナ、コーネリア、ユリーネ、アフロスの四人に加え、『黒の聖騎士』率いる【奈落の黒兵団】もいるため、魔物が全滅するのも時間の問題だった。

このように、S級冒険者は主に変態たちで構成されながらも、その実力は確かにあるのだった。

◆◇◆

「これは……」

「……確かに数だけで見れば絶望的だな……」

『剣騎士』ルイエス率いる【剣聖の戦乙女】がいる方へと来ていた魔族軍の面々。

彼らは城壁の外に出て、そこに押し寄せる魔物の数に絶句していた。

だが、ルイエスや【剣聖の戦乙女】の頑張りもあって、城壁付近への魔物の接近は許していなかった。

その光景を眺めながら、レイヤはゼロスに訊いた。

「それで……どう? 何とか言うこと聞かせられそう?」

「……無理だな。我々魔族軍の管轄にない魔物ばかりだ。それに、どうやら理性も失ってるようだ……」

魔族軍は魔物も多数所属、または配下にしている。

そのため、魔物の種類によっては強制的な命令で動きを止めることもできたのだが、襲い掛かって来る魔物の種類を見て、ゼロスは無理だと判断した。

「まどろっこしいな。んなことしねぇでも殺せばいいんだろ?」

欠伸をしながらゾルアはそう言うと、ゾルアの体を『闇』が覆った。

闇を纏ったゾルアは、真紅の瞳を魔物の群れに向ける。

「貫け」

すると、ゾルアの体を纏う闇の一部が鋭い槍のようになり、一気に魔物の群れを襲った。

闇の槍は途中で枝分かれしては数を増やし、どんどん魔物の群れを殲滅していく。

「おら、何ボサッとしてやがんだ? テメェらも戦いやがれ」

「……お前の言葉に従うのは不本意だが、そうだな」

そう言った瞬間、ゼロスは禍々しい魔力を噴出させた。

「数が数だ。俺には魔力の限界があるが、貴様は大丈夫だろうな?」

「ハッ! テメェと違って、俺は魔力を消費しねぇからな。だが、一人でこの数は無理だ。せいぜい少ない魔力で消し飛ばせよ」

「言われるまでもない」

ゼロスは両腕を前に掲げると、禍々しい魔力は両腕を伝って最終的に両掌に収束した。

「『消滅砲』」

両掌に収束した魔力が一気に解放され、凄まじい力の奔流が魔物の群れを包み込む。

ゼロスの魔法に当たった魔物は、その存在を保つ事が出来ず、完全に消滅していった。

「テメェの勝手だが、飛ばし過ぎて早々にくたばんじゃねぇぞ?」

「誰の心配をしている? 貴様こそ、油断して死ぬなよ?」

そんなやり取りをしながら、二人はどんどん魔物の数を減らしていった。

「……相変わらず化物みたいな二人よね……」

「そうであるな……で、どうするのだ? 吾輩たちも行くか?」

「もし行くのであれば、護りの薄いところに行きましょ? この大きな城壁を護りきるのは無理があるでしょうし……」

残されたレイヤたちは、ゼロスたちの戦いを眺めながらそんなことを話す。

「そうね……護りの薄いところで私たちも頑張りましょう」

レイヤがそう決断し、移動を開始しようとしたそのときだった。

「――――なかなかやるな」

「ッ! 誰!?」

突然聞こえた声に、レイヤたちは周囲を見渡す。

すると、いつの間にか城壁の上に一人の男性が立っていた。

「アナタは……」

「……そうだな。一応名乗らせてもらおう。俺はロディアス。【魔神教団】の使徒だ」

「……使徒、ね……」

ロディアスと名乗った男は、どこか気配の掴みにくい存在だった。

右目が隠れるほどに伸ばされた紫の髪と、その間から覗く鋭い視線がレイヤたち射貫く。

「その使徒様が何の用かしら?」

「……レスターのヤツから聞いているだろう。俺たちの目的はただ一つ。魔神様の復活だけだ」

「そう……そんなアナタがここにいるってことは……」

レイヤの視線が鋭くなると同時に、背後にいるリアレッタとウルスの視線も鋭くなった。

「……お前たちの察している通り、排除しに来たのだ」

「なら……やられる前にやってやるわよ……!」

レイヤは炎を纏い、ロディアスめがけて突っ込んで行く。

「レイヤ、サポートするわね! 『ウィンド・ジェット』!」

リアレッタの唱えた魔法によってレイヤは加速した。

「……ふむ、珍しいな。フェニックスの魔族か」

「そうよ。だから、この炎で燃やし尽くしてあげるわ……!」

「フッ……それはどうかな?」

レイヤの加速した攻撃を、ロディアスは簡単に避けた。

「なっ!?」

「……俺は使徒の中でも戦闘をメインとする実戦部隊の一人だ。残念だが、その程度の攻撃ではかすり傷一つ付けられないぞ?」

「ならば、これはどうだ?」

すると、レイヤの攻撃を避けたロディアスの背後から、ウルスが体中に闘気を纏わせて飛び出した。

「『王鬼の一撃』!」

全身の闘気を右腕に集中させると、ウルスはロディアスに殴りかかる。

「……こちらは王鬼族か。面白い、力比べと行こう」

「何!?」

しかし、ロディアスはウルスの攻撃を避けることもせず、真っ向から殴り返した。

本来なら、怪力の持ち主である鬼族……それも王鬼族であるウルスの攻撃を受け止められる存在などほとんどいなかった。

だが、ロディアスはウルスの拳に自身の拳をぶつけることで、ウルスの攻撃を完全に相殺したのだ。

「吾輩の攻撃が……こうも簡単に……!」

「ウルス、下がって! 『魅惑の眼差し』!」

「……そしてサキュバスの女王か。魔族軍にはずいぶんと面白い面々がそろっているようだな」

リアレッタはサキュバス族の特徴でもある異性を魅了する術を使ったが、ロディアスには効果がなかった。

「そんな……」

「……どうした? まだ戦いは始まったばかりだが?」

「――――なら、これはどうでしょう?」

「!」

不意に、ロディアスの頭上から声が聞こえた。

その瞬間にロディアスはその場から飛び退くと、先ほどまでロディアスが立っていた位置に『剣騎士』ルイエスが剣を振り下ろしながら振って来たのだ。

「……お前は……」

「私ですか? 私はルイエス・バルゼ。『剣騎士』などと呼ばれてはいますが、そちらの方がご存じなのでは?」

「……なるほど、ウィンブルグ王国の二大騎士の一人か。片方はどうやら逆側で奮闘しているようだが……」

「ええ。『黒の聖騎士』ならば大丈夫でしょう。それに、S級冒険者の皆さまもそちらにいるようですし」

ルイエスの登場に驚くレイヤたちだが、すぐに体勢を立て直してロディアスから距離をとった。

「見たところ、アナタは妙な力をお持ちのようで……」

「……そこまで見抜くとはな。それで、どうする? 今度はお前が俺の相手をしてくれるのか?」

口調こそ変わらなかったがロディアスの雰囲気が一変し、全身から鋭い魔力が立ち上った。

「……すみません、そこの三人。お手伝い願えますか?」

「え?」

「……どうやら、あの方は私一人では荷が重いようで。出来れば手助けをしていただければ助かるのですが……」

そう言うルイエスの視線は厳しく、ロディアスを油断なく見つめていた。

「……ええ。分かったわ」

「ご協力、感謝いたします」

レイヤはルイエスの提案を受け入れ、リアレッタとウルスもそれぞれがロディアスを警戒しながら構えた。

「……四人が相手か。だが……いいだろう。かかってこい」

ロディアスの言葉を合図に、四人はいっせいに飛びかかるのだった。

◆◇◆

「さて、話してもらおうか?」

「……一体何が目的だったの?」

取り押さえられた状態のレスターとだらしない男を前にして、ランゼとルーティアは聞いた。

レスターの身はジェイドが、だらしない男はユーストが抑えているため、身動きが取れない。

だが、そんな状況であるにも関わらず、だらしない男は笑みを浮かべた。

「クックックックック……お前ら、俺らを抑えただけで勝ったつもりでいるのか?」

「何?」

「負け惜しみはやめた方がいいんじゃない? 今の君に出来ることなんてないんだからさ」

ユーストが首筋に当てていた剣を少し強めに押し当てながらそう言う。

しかし、男の態度が変わることはなかった。

「そうかもな。だが、【魔神教団】の使徒は俺たちだけじゃねぇ。魔神様が存在する限り、いくらでも現れる。それに、外では今ごろロディアスのヤツにお前らのお仲間はやられてるんじゃねぇか?」

「バカなこと言うね。そのロディアスってのが誰だかは知らないけど、あれだけの戦力が向かって負けるわけないじゃないか」

「さてね……どう思おうが自由だぜ? だが、ロディアスは俺たちとは違って実戦部隊のヤツだ。殺されても文句言うんじゃねぇぞ?」

笑みを崩すことのない男の様子に、ランゼたちは顔を顰めた。

「……話がズレたが、お前らの目的を語ってもらおうか? もちろん、魔神とやらの復活について聞いてるんじゃねぇ。何故ここを襲撃したかを聞いてるんだ」

「ケッ! 誰がテメェらなんかに――――」

「ああ、そこにいる魔王の娘か、アンタの命が狙いだった」

「エドマンド!?」

レスターが隠そうとしたことを、同じように取り押さえられていたエドマンドと呼ばれた男がアッサリ答えたことで、レスターは驚きの声をあげた。

「おい、ずいぶんアッサリと答えるじゃねぇか」

「これくらい、俺が教えなくてもすぐに分かるもんだろ?」

「……じゃあ、なんで狙ったんだ?」

ランゼがそう言った瞬間、取り押さえてるジェイドやユーストから、凄まじい威圧感が放たれた。

だが、そんな威圧感を受けながらもエドマンドは気にした様子もなく笑う。

「クックックックック……何故狙ったか……ねぇ……」

「ん?」

エドマンドの反応がおかしいことに気付いたランゼだったが、そのときにはすでにエドマンドは動いていた。

「残念、まだ狙ってるんだよなぁ!?」

エドマンドが口を開くと、口内から短剣が出現した。

その短剣はランゼやルーティア自身に飛んでいくかと思われたが、なぜかルーティアの影に突き刺さった。

突然短剣を出現させたことで、ユーストは頭を思いっきりつかみ、地面に叩き付けた。

「……君、立場分かってるのかい?」

「ルーティア様! 大丈夫ですか!?」

ユーストが拘束を強める中、ジェイドがレスターを取り押さえながらそう尋ねたそのときだった。

「……っ……――――」

『!?』

ルーティアはその場に倒れた。

◆◇◆

「……他愛ない」

「クッ……!」

ロディアスは、目の前で這いつくばるルイエスやレイヤたちを見下ろしながらそう呟いた。

ロディアスの胸元には、以前誠一が戦ったデミオロスと同じ、邪悪な悪魔の描かれた紋章が浮かんでいる。

「……かの『剣騎士』と戦えるとあって、多少の期待をしていたのだが……期待はずれだったな」

地面に倒れ伏すレイヤたちを見て、魔物の相手をしていたゼロスや、【剣聖の戦乙女】の面々が悲鳴を上げるように叫んだ。

「レイヤ!」

「おいおい……何やられてやがんだッ!」

「ルイエス様!?」

「クッ! 貴様!」

魔物たちの相手をしていた面々も、すぐさまルイエスたちを助けようと動くが、倒しても倒しても湧き出てくる魔物に行き先をふさがれ、助けに行く事が出来ない。

その様子を無表情で見つめていたロディアスは、再び視線をルイエスたちに戻した。

「……残念だが、お前たちへの救援はないようだ」

「……そのようですね。ですが、私もただでやられるつもりはありません……!」

「……ほう?」

ルイエスは力を振り絞って立ち上がると、神速の一太刀を振るった。

「……確かに速く、受ければひとたまりもないだろうな……相手が俺でなければ」

「なっ!?」

ロディアスはそう言うと、その場から動くこともせず片手に持つナイフ一本でルイエスの攻撃を受け止めた。

「……さて、そろそろレスターたちの様子も見に行きたいのでな。ここでの戦いも終わりにしよう」

そう言った瞬間、一瞬にしてルイエスやレイヤたちの周辺にナイフが何本も浮かび上がる。

「……一息に殺してやろう」

「ルイエス様あああああっ!」

【剣聖の戦乙女】の誰かが、そう叫んだときだった。

「――――ふむ、ここが王都テルベールだと思っていたのだが……」

「っ!? ……誰だ?」

突然聞こえてきた声にロディアスはすぐさま反応していると、続いて魔物たちが謎の漆黒の槍に貫かれ、消し飛んでいった。

「これは……ゾルア、お前か?」

「……いや、この『闇』は俺のモノじゃねぇ」

「じゃあ一体誰が……」

ゾルアの出現させた『闇』とよく似たモノで、ゼロスは思わずゾルア自身に訊くも否定される。

その場にいる誰もが疑問符を浮かべていると、今度は違う声が聞こえてきた。

「――――まったく、誠一君の紹介で来てみれば、まさか同胞が襲われてるなんてねぇ……」

「……お前たちは……?」

圧倒的な存在感を放つ二人が、ゆっくりとした足取りでロディアスの前に現れた。

「――――ゼアノス・ゼフォード。ただの勇者の師匠だ」

「――――ルシウス・アルサーレ。ただの初代魔王だよ」

『それで――――』

「覚悟はいいか?」

「覚悟はいいかい?」

――――最強の援軍が、到着した。