軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

67、聖女と昼食

話をしているとすぐ食堂に到着し、三人は中へ入った。するとサシャが興奮したように瞳を輝かせる。

「おおっ、今日は唐揚げがあるっすね!」

「え、匂いだけで分かるんですか?」

マルティナが驚いて問いかけると、サシャはグッと親指を持ち上げた。

「もちろんっす」

「それは凄いな。俺には揚げ物があるだろうぐらいしか分からない」

「ちょっと違うんっすよ。唐揚げの時はこう鼻の奥にガツンときて、とんかつの時はドンってきて、野菜あげてる時はピリッとしますよね!」

サシャの感覚的な説明に、マルティナとロランは遠い目をした。

「うん、何一つ分からないな」

「私もです」

「え〜、本当っすか? これ騎士団の同僚にも分かんないって言われたんすけど、全然違いますよ」

「凄い特殊能力ですね」

列に並んでいた三人はそれぞれお盆を持って、好きな料理を取りながら話を続ける。

「実家が食堂でもやってるのか?」

「いえ、うちは商会です。あっ、でもそれが理由なんすかね? 香辛料とか色々扱ってて、父さんに匂いだけでいい香辛料を判別できるようになれ! って子供の頃から厳しく修行させられたんです」

過去を思い出しているのか嫌そうな表情を浮かべたサシャに、マルティナは少し親近感を抱く。

「私も実家は古着屋なんですけど、子供の頃から服の繕いとかはやってましたね」

「おおっ、古着屋なんすね。実家が店とかやってると大変ですよね〜。あっ、おばちゃん! 唐揚げ倍にしてもらっていい?」

「はいはい、ちょっと待ってね」

サシャは話を中断させ、手にした唐揚げの皿を奥の厨房にいる女性に向けて差し出した。まず食欲優先のサシャに、マルティナとロランは苦笑いだ。

そうしてそれぞれ好きな料理を取ったところで食堂を見回すと、マルティナの視界に手を振るハルカが映った。サシャの声が大きかったからか、すでにこちらに気づいていたようだ。

ハルカの両隣にソフィアンとフローランが座っていて、前三つの席は空いている。他国から派遣されたハルカの側近や護衛は、六人分の席のさらに周りに散っているらしい。

三人はハルカたちの下に向かい、マルティナが声を掛けた。

「ハルカ、お待たせ。この席に座っていいの?」

「うん。マルティナのために空けておいたの。護衛は二人って聞いてたから三席にしたんだけど、合ってて良かった」

「ありがとう。失礼します」

マルティナはソフィアンとフローランに頭を下げてから、ハルカの向かいの席に腰掛けた。ロランが右隣でソフィアンの向かい、サシャが左隣でフローランの向かいだ。

「副団長、お疲れ様です!」

サシャは元気良く挨拶をすると、さっそく大量に盛ってもらった唐揚げに勢いよくかぶりつく。そんなサシャをフローランは眉間に皺を寄せて見つめながら、上品にフォークとナイフを動かした。

「今日はナディアさんとシルヴァンさんはいないのかな」

ハルカがそう言って周囲を見回すと、ロランが答える。

「二人はまだ仕事にキリが付かなくて、もう少し後で来るらしい」

「そうなんですね。お二人ともまたお話ししたいです」

「それなら明日は二人も連れてこよう」

「本当ですか! ありがとうございます」

ハルカが頬を緩めたのを見て、マルティナも笑顔になった。それから今日の訓練についての話を聞きながら食事を進めていると、ふとハルカが手元の唐揚げに視線を落とす。

「どうしたの?」

「あのさ……少しわがままかもしれないんだけど、食堂にお米の選択肢も増やしてもらう事ってできないのかな。お米もあるってメイドさんに教えてもらったの」

「ハルカはお米が好きなの?」

「そう。日本の主食はお米だったんだ。この世界の食事はどれも美味しくて文句はないんだけど、日本の味が恋しくもなってきて……」

そう言って寂しげな表情を浮かべたハルカに、マルティナは張り切って頷いた。

「私が要望として伝えておくよ。王宮ではお米よりもパンを食べることが多いけど、お米料理も普通にあるからね」

「本当! ありがとう」

花が綻ぶように笑ったハルカに、マルティナはふと気になったことを尋ねてみる。

「他にも日本にあってここにはない料理があるの?」

「うん、まだ私が見てないだけかもしれないけど、たくさんあるよ」

「そうなんだ。例えばどんなもの?」

「うーん、醤油や味噌を使った味付けのものはほとんどないかな。あとはお漬物とか魚介類も。それから麺もまだ見てないね」

次々とハルカが口にした言葉に、マルティナをはじめとして皆が首を傾げた。

「ショウユ、ミソ、オツケモノって初めて聞いたっす。もしかして俺の知らない美味しいものの可能性が!」

「私も初めて聞いたよ。魚介類と麺は分かったけど」

「そうなんだ。じゃあ、こっちにはないのかな……」

諦めるような笑みを浮かべたハルカを見て、マルティナの闘志に火がついた。

(なんとかして、似た味でもいいから探したい……!)

「どんな味なのか教えてくれる?」

マルティナの問いかけに、ハルカは記憶を探るように視線を上げて考え込んだ。