軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

197、協力要請と嬉しい再会

そんな話をした日から数日後。シルヴァンとナディアの予想通り、マルティナに霊峰探索軍への参加要請が来た。しかし強制ではなくマルティナの意思が尊重され、その安全は最大限に守られる形だ。

マルティナはもちろん断る理由もなく、すぐにその要請に応じた。早急に準備をして現在は、霊峰探索軍が拠点としている街に向かっているところだ。

「ランバート様たちが一緒に行動してくださるなら、より安心できますね」

馬車に揺られながら、マルティナはそう告げた。

マルティナが活動しやすいようにという配慮で、ランバート率いるラクサリア王国の騎士団がマルティナに付くことになったのだ。霊峰探索の最前線を、マルティナとラクサリア王国の騎士たち、そして他の国の精鋭騎士たちで進むことになる。

「ああ、俺たちも連携しやすいから助かるな」

「皆の戦い方も分かってるから楽っすね!」

向かいの席に腰掛けているロランとサシャは明るい表情だ。やはり危険な場所に赴くのであれば、信頼できる同行者は必須なのだろう。

「そろそろ着くでしょうか」

「あと一時間ぐらいか?」

「結構大きな街なんすよね」

「はい。その街の中と、あとは周辺に天幕などを張って拠点としているそうです」

霊峰探索軍に所属する騎士たちが全員街に入れるわけもなく、基本的には天幕での生活だ。しかし順番で数日ごとに街に泊まるようにしていて、騎士たちの疲労が溜まらないように工夫されている。

「ハルカは今どの辺にいるんですかね……」

馬車の窓を眺めながらマルティナが何気なく呟くと、ロランが地図を取り出した。

「確か今はこの辺りにいるんじゃなかったか?」

その場所は霊峰探索軍の拠点からは馬で数日ほど離れた場所だ。

「まあ、浄化の旅は予定通りに進まないだろうから、もう少しこっちかもしれないが」

「瘴気溜まりを消滅して回るのって、想像するだけでめちゃくちゃ大変っすもんね……本当にありがたいっす」

サシャの言葉に何度も頷きながら、マルティナはロランが改めて指差した辺りを眺めた。そこはさっきの場所よりも拠点から遠いところだ。

(ハルカと会いたいけど、難しいかな……)

同じ国にいるのに、忙しくて会う時間が取れない二人である。シュン……と落ち込んでしまったマルティナに、ロランが励ますように言った。

「まだ俺たちはしばらくサディール王国にいるだろうし、ハルカだって一度は王都に寄るだろ。その時に王都にいれば会えるはずだ」

「そう、ですよね。ハルカの浄化の旅の進行度を聞いて、王都に寄るときに私も戻れるように相談してみます」

「それがいいな」

そうして話がまとまったところで、まだ遠くだが霊峰探索軍の拠点が見えてくる。街の外壁の周りにたくさんの天幕が張られ、ちょっとした市場のような活気が見てとれた。

「凄いですね……やっぱり数が多いと壮観です」

「かなりの人数が参加してるからな」

「まだ浄化が終わってない国からも、少数ずつは騎士が派遣されてるっすからね」

馬車が天幕の間を通って街に近づき、外門の前で一度止まったところで――マルティナの目に、衝撃の人物が飛び込んできた。

「え、ちょ、ちょっと降りますっ!」

突然叫んで立ち上がったマルティナに、ロランとサシャが慌てて続く。

「おい、どうしたんだ?」

「何かあったんすか? 危ないことはダメっすよ?」

「ハルカの姿が見えて……!」

そう告げたマルティナに、ロランとサシャは顔を見合わせてから、マルティナを止めようとするのではなく馬車を降りるのを手伝った。マルティナは地面に降り立つと、ハルカがいた馬車の反対側に回り込んで――。

「ハルカ!」

マルティナの言葉に、炊事場のように整備されている場所で何やら騎士と話をしていたハルカが、驚いたように顔を上げた。

そしてマルティナを視界に映すと、嬉しそうに破顔してマルティナに駆け寄る。

「マルティナ! まさか本当に会えるなんて!」

「どうしたの? なんでここに?」

マルティナがハルカと手を取って喜び合いながら問いかけると、ハルカはイタズラな笑みを浮かべて言った。

「ふふっ、マルティナと会えるかなと思って寄ってみたの。早く会いたいと思って張り切っちゃった。そしたら着いた翌日にマルティナが来るなんて!」

「凄い偶然……!」

幸運に喜んでから、マルティナはふと疑問に思って首を傾げる。

「でもなんでここの拠点に来たの? 私がここに来ることって、ハルカたちは知らないと思うんだけど……」

マルティナが霊峰探索軍に参加することが決まったのは、まだ最近のことなのだ。さすがにハルカたちまで情報が届くには早すぎた。

「それはもちろん、マルティナだからだよ? そのうち霊峰探索軍に参加することになってそうかなと思って。ここで会えなかったら王都に行くつもりだったけどね」

そんなハルカの言葉に、マルティナは苦笑を浮かべてしまう。

「凄いねハルカ、そこまで読まれてたなんて」

「ふふふっ、友達だもん」

「そうだよね。友達……というより親友だもんね」

ハルカの言葉に嬉しくなったマルティナがそう告げると、ハルカは瞳を輝かせて年相応な無邪気な笑みを見せた。

「うん!」

そんなマルティナとハルカのことを周囲にいた騎士たちがなんだか微笑ましげな瞳で見つめていると、その中にいたソフィアンが適当なタイミングで一歩前に出る。

「マルティナ、久しぶりだね」

「ソフィアン様! お久しぶりです。フローラン様もお会いできて嬉しいです」

挨拶にロランとサシャも加わり一通り再会を喜んだところで、マルティナは気になっていたことを聞いた。

「ハルカはいつまでここにいられるの?」

「一週間はいられる予定だよ。せっかくだから少し休息も兼ねようかって話になったの」

「じゃあ、しばらく一緒にいられるね!」

ハルカと何日も共にいられることが、マルティナはとても嬉しく頬が緩んでしまう。

「うん。マルティナは霊峰探索軍に参加するの?」

「そう。霊峰探索の最前線で私の知識が役立つからって。頑張ってくるよ」

拳を握りしめてそう言ったマルティナに、ハルカは少しだけ考え込んでから笑顔で告げる。

「じゃあ、わたしもマルティナと一緒に霊峰の最前線に行こうかな。わたしがいたら早く探索が進むかもしれないでしょ? それにマルティナのことも心配だから」

ハルカのその提案は、マルティナにとって嬉しい以外の何物でもなかった。霊峰に入っている間はハルカと離れなければいけないところを、ずっと一緒にいられるのだ。さらにハルカの存在によって霊峰探索のスピードが上がることは事実だろう。

しかし同時に、探索に参加していてはハルカは休めないのではないかという懸念もマルティナの中に生じる。

「凄く嬉しいんだけど、ハルカは浄化の旅で疲れてるだろうし、ちゃんと休んだ方が……」

悩みながらも最終的にはそう言ったが、ハルカは即座に首を横に振った。

「ううん、全然大丈夫。わたしこの世界に来て力を得たからなのか、かなり体が丈夫になった気がするんだよね。それにマルティナと一緒の方が楽しいから」

そこまで言われてしまえば、マルティナはそれ以上強固に反対することはできなかった。

「じゃあ、一緒に霊峰探索しようか」

「うんっ」

とても嬉しそうなハルカの表情に、マルティナも嬉しくなる。

それからソフィアンたちの許可を得て、さらに皆でランバートたちの下に向かって霊峰探索軍との挨拶と、さらにハルカの同行の許可ももらい、さっそく翌日からマルティナとハルカたちを加えての霊峰探索が行われることになった。

その日の夜はハルカとの再会にそわそわしていたが、明日からの霊峰探索のために、早めに眠りについた。