軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

160、還元石のある場所へ

ハーディ王国での迷いの古代遺跡探索からラクサリア王国に戻り、数日後の早朝。

マルティナたちは地下の研究室から運んできた浄化石だろう巨石が本物かどうかを確かめるために、朝早くから王宮を出発していた。

「少し緊張しますね」

「これが本物かどうかで今後がかなり変わるからな」

「それに、あの巨石を設置して何が起きるのか分からないのが不安っすよね」

今回の確認はマルティナが中心となり、護衛のロランとサシャはもちろん同行している。マルティナは乗馬が苦手なため、今回は比較的近場ということもあり、二人と一緒に馬車移動だ。

「そうなんですよね。還元石を動かそうとした時に周りの木々が一気に枯れて生命力をなくしたのは、結構なトラウマです」

マルティナでなくとも、あの場にいてあの光景を忘れた者はいないだろう。しかし、マルティナは細部まではっきりと覚えているのだ。忘れられないとも言う。

全てを記憶できるということは、忘れられないことと同義である。普段のマルティナは上手く思考を切り替えて対応しているが、強烈な体験は脳裏にこびりついていた。

少しだけ唇を噛み締めたマルティナに、その心情を察してかロランが明るく告げる。

「今回は大丈夫だろ。巨石が本当に浄化石ならマイナスな現象は起こらないし、もし偽物なら何の反応もないはずだからな。そっちの検証は何度かしてるって聞いたぜ?」

還元石の真下にあり、その近くにも全く同じものがもう一つあった、拳大の白くて球状の宝石。これが還元石と浄化石の土台であると考えられ、浄化石が置かれるのだろう土台の調査は慎重に進められていたのだ。

その結果として、ほかの宝石や石など、何を置いても変化はないと分かっている。

ニッと口端を持ち上げたロランに、マルティナは自分でも驚くほど安心できた。

「そうですよね。浄化石だと願って今回の検証を行いましょう」

そんな話をしているうちに、馬車が森の中に入ったのに気づく。

還元石がある場所は森の中だったが、巨大な瘴気溜まりを消滅させる際にハルカが瘴気溜まりまでの木々を魔法で吹き飛ばしたため、これ幸いと還元石のある場所まで馬車で向かえるように道が整備されたのだ。

「もうシルヴァンとナディアは降りてるみたいだな」

「本当っすね。ランバート第一騎士団長も指示出してますから、騎士たちも持ち場についてるみたいっすよ」

今回はマルティナたちの他に、古代遺跡探索の仕事の延長としてアレット、記録係等の官吏としてナディア、シルヴァンを含めた数名の官吏たち、そしてランバート率いる騎士たちもこちらに来ていた。

馬車が止まったところで、マルティナたち三人はさっそく降りる。周囲を見張りの騎士が囲んでいたが、その隙間からよく見える還元石は以前と全く変わらないままだった。

マルティナがその様子を観察していると、さっそく駆け寄ってきてくれたのは瞳を輝かせたアレットだ。

「マルティナ!」

「アレットさん。なんだか楽しそうですね」

楽しそうなその表情に、マルティナも自然と笑顔になる。

「もちろんさ。あたしは遺跡探索が専門だけど、過去からの遺物を調べるのが好きなんだ。そしてこの還元石、それから浄化石も。マルティナの言ってたことが正しければ何千年も前から、もしかしたらこの世界ができた頃から存在してるものなんだろう? そんなの興奮するしかないよ!」

「確かに還元石と浄化石は、歴史って観点からでも異質ですね」

どんな力が働いているのか分からないが、とにかく劣化していないのだ。ずっと地面の中にあった還元石も、研究室に保管されていた浄化石だろう巨石も。

ひびや欠けが一つもなく、綺麗なままだった。地面に埋められており取り替えなんて想定されてなさそうなところから、永久的に作動するものだと想定できる。

もし還元石と浄化石が壊れるようなことがあれば、それは世界の終わりを意味するのかもしれない。

マルティナはそんなところまで考えてしまい、首を横に振った。それは考えても意味がないことだ。人々が神と呼ぶような存在、創造主に答えを聞くわけにもいかないのだから。

「今日はしっかり見学させてもらうつもりさ。あと、力仕事は何でも任せてくれ」

「本当ですか! とても助かります」

「遺跡じゃない場所じゃ、そこまで役に立てないからね。そのぐらいはやるよ」

そう言って力瘤を作るように腕を掲げたアレットは、さっそく周囲を見回した。

「どこが一番大変かな?」

「そうですね……やっぱり巨石の移動だと思います。向こうの手伝いを頼んでもいいですか?」

「もちろん」

「ありがとうございます。――ランバート様!」

マルティナが大きく手を上げながらランバートを呼ぶと、騎士たちに指示を出していたランバートはすぐこちらに気づく。そして足早にマルティナの下までやって来た。