軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第106話 迷宮都市で物件探し

荘厳な白亜の神殿には窓がいくつもある。天窓、祭壇上部の円窓、縦長窓などだ。

陽の光によって明るい神殿を、信者たちは解放感があって良いと言う者が多い。

だが、ある少女は違う感想を持っていた。

決して、この神殿から逃れられない少女は、まるで、鳥籠のようだ、と思っていた。

少女が鳥で、神殿が鳥籠。

飛び立とうとしても、足についた鎖で引き戻されてしまう。

それは、少女にとっては仕方のないことだった。

いつか、あの空を自由に飛ぶ鳥のように、飛び立てたら、と少女は願った。

願い続けていた。

迷宮都市ラビュリントゥスは北西部に位置する冒険者たちが集う都市だ。

冒険者たちだけでなく、冒険者向けに商品を売買する商人たちも多く集っており、北部の商業都市とも呼ばれることがある。

王都からは約二千キロあり、馬車で野営など含めると約三週間は掛かる距離だ。

ルクスはラエティティアとベネディクトゥス、ヘレナと共に約三週間掛けて馬車にて迷宮都市ラビュリントゥスにやってきた。

迷宮都市ラビュリントゥスで本格的に活動を始める下準備として、土地と家を購入するためだ。

ラビュリントゥスに着くと、まず、五mほどある城壁が目に入る。

中に入ると、どの建物も石造りや煉瓦造りなどで、木が一切使われていないことが分かる。

火災対策もあるだろうが、万が一スタンピードが起きたときの対策でもあるのだろう。恐らく気休め程度しかならないが。

なんせ、ラビュリントゥスの真ん中にダンジョンがあるのだから。

ダンジョンの周りにも城壁があり、高さは七mほどだ。この城壁はアダマンタイトが含まれていて、かなりの強度がある。過去に一度、スタンピードが起こり、甚大な被害が出たため、希少なアダマンタイトを使っている。

とはいえ、アダマンタイトが使われているのは、三mほどの高さまでらしい。

ラビュリントゥスの話をルクスたちにしてくれたのは、商人ギルドのラビュリントゥス支部不動産部の部長だった。

アルノー(王都の商人ギルド不動産部の部長)の紹介状を受付に見せるとあれよあれよと、応接室に案内され、不動産部の部長が 疾風(はやて) のごとくやってきたのだ。

「ラビュリントゥスには冒険者街区と商人街区および貴族街区がございますが、フォルティス様はどこに住まわれたいなどありますでしょうか?」

「冒険者街区ですね」

「かしこまりました。今、売りに出されている物件は三つございます。引退した冒険者の方が住まわれていた屋敷が二つと、冒険者向けのアパートだった屋敷ですね」

部長は各物件の間取り図を机の上に広げて説明する。

「引退した冒険者の方が住まわれていた屋敷は偶然にも隣り合っておりましてな。商人ギルドにも近いのですが、見に行かれますかな?」

「はい」

ルクスが見に行きたいというと、部長は二つの屋敷の資料や鍵を持って、ルクスたちを案内し、冒険者街区の屋敷に連れてきた。

「この二つの屋敷がそうですね」

「ふむ……部長さん、この二つの土地を繋げることってできますか?」

「……一応手続きをすれば可能ではございますが」

「じゃあ、二つとも買って、取り壊して、新しい大きな屋敷を建てようか。大金貨五十枚くらいで足りますか?」

「も、勿論でございます」

「じゃあ、部長さん、これ」

ルクスは不動産部部長に大金貨五十枚が入った革袋を渡した。

「もし足りなかったら教えて下さい」

「これで十分だと思います……」

「じゃあ、手続きと屋敷の取り壊し、よろしくお願いします。それと、設計図ができたら、この住所に連絡して欲しいです」

ルクスは王都の屋敷の住所が書かれた和紙を不動産部部長に渡した。

「か、かしこまりました……」

「じゃあ、俺たちはこれで失礼します」

ルクスはそう言って、ラエティティアと手を繋ぎ、ベネディクトゥスとヘレナと共に去っていった。

まるで、風のごとくあっという間に去っていったルクスたち。狐につままれたような顔をした不動産部部長は、手元にある大金貨五十枚を見て、現実だと、実感した。

これから忙しくなるぞ、と気合を入れて、不動産部部長は商人ギルドに戻った。

三週間ほど掛けて王都に戻ってきたルクスたち。

迷宮都市に家ができるまでは拠点を移動することができないため、しばし、暇な期間ができてしまう。

王都の近郊にあるダンジョンは廃坑ダンジョンくらいだ。廃坑ダンジョンは、もう攻略済と言っても過言ではないので、することがない。

「というわけで、王都を探険しようか」

「おお?なにがというわけなんだ?」

アランがツッコミを入れた。

「最近、みんな時間余ってるでしょ?つまり暇な時間があるなら、探険でもしようって話」

「ああ、なるほどな。良いんじゃないか?」

「私もさんせーい」

「僕も良いと思う」

アラン、クラーラ、バートが賛成した。

「ティアは?」

「ラエティティアちゃんなら、ヘレナさんと一緒に裁縫していたよ?」

「じゃあ、ティアを呼んでくるから、ちょっと待ってて」

ルクスはそう言って、ヘレナたちがいるだろう、織機が置いてある余った部屋を改装した裁縫部屋にやってきた。

「あら、ルクス君、いらっしゃい」

ヘレナがルクスを迎えた。

「まあ、ルカ君、どうしたのですか?」

ヘレナの隣で裁縫をしていたラエティティアも気づき、ルクスに聞く。

「実は、これから王都を探険しようと思っていて、ティアにも参加してもらいたいんです」

「構いませんよ。よかったら、この服を着ていただけませんか?」

「これは?」

「冒険用に動きやすく改良した服ですの。差し上げますから、着ていただいて感想いただけたら嬉しいですわ」

「……作成するの大変ですよね?お代をお支払いします」

「あら、大丈夫ですよ、そんなに手間ではありませんでしたし」

「それでも、受け取ってください。新しい布とか買うのに必要でしょうし」

「……分かりました。ありがたく頂戴しますね」

ヘレナは金貨五枚を受け取った。ルクスは受け取った服を一旦アイテムボックスに入れた。

「じゃあ、ティア、行こうか」

「はい!」

ルクスとラエティティアは手を繋いで談話室に向かった。