作品タイトル不明
第105話 束の間の休日
冠月(ケテル) (八月に相当)二日。
職人街のルクスが所有する屋敷、昔は魔法使いの屋敷と呼ばれていたのだが、今は元帥が住んでいるということで、こっそり元帥の屋敷と呼ばれている。
卒業したルクスとラエティティアとバートは屋敷で過ごすようになって、束の間の休日を楽しんでいた。アランとクラーラも夏休みなので、休日を楽しんでいる。
バートは運命の人を探すんだ!と言って王都にいる美少女を探したりしている。
一方、ルクスとラエティティアは、庭にあるガゼボでお茶を楽しんだり、談話室で一緒に本を読んだり、デートを楽しんだり、といちゃいちゃしていた。
アランとクラーラも概ねいちゃいちゃしていた。アランが振り回されている感は否めないが。
今日も、ルクスとラエティティアはガゼボにやってきた。
「やっぱり、外は暑くなってきましたけど、このガゼボはルカ君が作った冷風魔導具のお陰で涼しいですね」
ルクスが作った冷風魔導具は勿論特許申請済だ。
「うん、結界魔導具と一緒に使わないと威力が半減するのがネックだけどね」
「逆を言えば結界魔導具さえあれば、涼しいということです。胸を張ってくださいませ、ルカ君」
「うん、ありがとう、ティア」
ここ数カ月でルクスは背が十㎝程伸びて百五十五㎝になった。ラエティティアよりも数センチ高くなったのだが、ラエティティアと目線にあまり差はない。
もっと身長を伸ばしたいので、ルクスはなるべく牛乳を飲むようにしている。
ガゼボでも、ルクスがアイテムボックスから出したのは、牛乳と紅茶だった。
紅茶はラエティティア用だ。牛乳は勿論、ルクスが飲む。
「……牛乳を飲むと何か良い効果があるのですか?」
「骨が丈夫になるらしいよ」
ルクスは背を伸ばしたいから、と言わなかった。男のプライドが邪魔をしたから。
「まあ!そうなんですね……私も飲んだ方が良いでしょうか?」
「んー、自分の好きな飲み物を飲んだ方が良いよ」
「まあ、ということはルカ君は牛乳がお好きということですか?」
「あ、ま、まあね」
ルクスは動揺した。一応牛乳も好きだが、どちらかと言えば、紅茶や珈琲が好きだった。
「その、紅茶と珈琲も好きだよ?けど、最近は牛乳の気分だったんだ」
「そうなんですね、ふふ、ルカ君って意外と気分屋なのですか?」
「そう、かもね?」
二人は笑い合った。
晴れた空の下、暑さが気になる気候を魔導具でものともしない二人の楽しそうな笑い声が美しい庭に響いた。
爽やかな夏風が庭木の木の葉を舞い上げ、どこか彼方へと運んでいった。
その木の葉はやがて馬車の荷台に落ち、遥か遠くの地にある大きな神殿にやってきた。
木の葉は荷台から落ち、小鳥が木の葉を咥えた。小鳥は飛び、神殿の開け放たれた窓に木の葉を置いて羽ばたいて行った。
木の葉はやがて、祈りの間にいた、少女の元に降りて行った。木の葉に気付いた少女は手に取ってみた。
瑞々しい木の葉を、自然の恵みの一つだと感じた少女は、果物などの供物が置かれた祭壇に捧げ、祈った。
神々の祝福が大地へと降り注ぎ、神々の栄光が現わされるように、と。
─ 第3章 少年少女よ、大志を抱け 了 ─