作品タイトル不明
Dランクダンジョン
(えへへ、影山さんが言っている推しって、きっと、私のことだよね……)
会った時に配信を見ていたと言っていたし、気絶したし、引退に落ち込んでいたタイミングもバッチリ合う。
(つ、つまりそれって、私のことを……きゃ~~~~、ダメだよ、影山さん! 私達、まだ会ったばかりなのに! いやん、いやん!)
「朝日ちゃん。敵は見えるかな」
(でもでも、どうしてもって言われたらどうしよう!? 私、私――)
「もしもし」
「はっ!? ななな、なに?」
「ネオ・ファンタジア支給の高性能ドローン2台だし、高いところにいる方で、敵が見えていたら教えてほしい」
「ごごご、ごめんなさい! えっと、えっと、あれ、画面どれだっけ」
『大丈夫か』
『なんかポンコツ感が……』
『ドローンもパワーアップしてるのね』
『画質がすごい上がっている』
『私ならもっと完璧にオペレーターするのに……』
『デート気分ね、この女』
『そもそも、男のオペレーターにすればいいのに。なんで女?』
「すいません……がんばります……」
(う、浮かれている場合じゃなかった)
今はダンジョン攻略。
命がかかっている現場だ。
ソロで危険の多い影山のサポートをおろそかにしてはいけない。
あと、女性視聴者と思われるコメントの圧が、怖い。
「えっと、10時方向にワイルドボアが3体。ちょうど丘を登った先にいるよ」
「この先で鉢合わせか……」
ウォールブレイカーを手に、警戒しつつ丘を上がる。
『え、いくの?』
『3体だよ? Dランクモンスターだよ?』
『ためらいなくて草』
「もちろん、慎重にはいきます」
『慎重(※前へ進みながら)』
『本当なら、Dランクダンジョンへ潜ること自体が無茶なレベルなのに』
『ネオファンのわりには、頭悪そうだな。舐めていると死ぬぞ』
『なんか湧いてきたな』
『戦闘始まったら、掌返すのが目に浮かぶ……』
様々な意見が短時間で飛び交う。
(これが大手所属の配信か……)
そんなことを思いつつ、丘を上がりきる。
斜面に、3体のワイルドボアがうろついていた。
黒い皮膚。大きな頭。口元からは象牙のような鋭い牙が伸びている。
3体とも、一斉に影山へ気づく。
「グルルルルッッッ!!!」
唸り声を上げながら、ドスドスドス! と地響きを立てながら突進。
影山は透視スキルを起動し、もっとも近いワイルドボアへと距離を詰めた。
ワイルドボアの動きは路上を走る車のように早く、それでいて重量感もあって迫力がある。
当たったら、鋭い牙のダメージもある。
レベルの低い影山は、当たるわけにはいかない。
(頭部に大ダメージ付与……いける!)
ワイルドボアの頭部の青白い線に――金色の刃を、一閃。
そして近くの、もう1体の頭部にも素早くウォールブレイカーを振り上げた。
「グルァ!?」
ワイルドボアの頭部に切れ込みが入る。
たったそれだけ。
致命傷となるほどの、深い傷ではない。
それなのに……2体のワイルドボアは、まるで魂を抜かれたかのように倒れた。
後ろの方にいたワイルドボアが足を止める。
「……」
鼻息を荒くして、ジリジリと後ずさりながら影山を観察。
両者の間合いは3メートル。
(む。突っ込んでくれた方が、楽だったのに)
透視スキルの短い時間が切れる。
青く光っていた影山の瞳が、元に戻る。
しかしそれが、透視スキル解除の証だとは、ワイルドボアは思わない。
ただ、仲間の2体を瞬殺したという事実が、警戒をさせた。
影山は素早く、マガジンを切り替える。
「――カートリッジ、スイッチ」
ベーシックマガジンから、ショットガンマガジンへ。
「グオオォ!」
ワイルドボアが突進する。
影山はウォールブレイカーをまっすぐに構える。
トリガーを引いた。
パァァァァンっ! という弾ける音共に、魔力の散弾銃が前へ飛び出した。
マガジンの中でもっとも反動が大きいので、腕が上へ大きく振り上がる。
そして勢いよく飛び出した小さな魔力の弾丸は、ワイルドボアの全身へダメージを負わせた。
「ギィィィィ!?」
ワイルドボアが悲鳴のような大声を上げる。
ひるんだところへ、接近してウォールブレイカーを側面へ向け一閃。
ワイルドボアは倒れ、魔石へと変わった。
そしてシステム音が、レベルアップを告げる。
『――影山 光のLVが6へ上昇しました。HP+8 MP+4 攻撃+2 防御+3 魔力+2 精神+3 俊敏+8』
影山 光 LV5→6
HP 46→54
MP 13→17
攻撃 8→10
防御 11→14
魔力 9→11
精神 10→13
俊敏 36→44