軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

72 視線

「いい解決策がある。技能模倣の実験も兼ねて、試してみよう」

華に向けてそう言った俺が何をしようとしているのか、勘のいい方々ならもうお察しだろう。

そう、隠蔽のスキルをコピーさせて使わせようと考えたのだ。

隠蔽はスキルを書き換える、ただそれだけのスキルである。

そのため俺が保有している隠蔽はLV1(MAX)だし、MPも使用しない。

この状況にはお誂え向きだ。

このスキルなら、華の 技能模倣(ストック) でコピーできるはず。

俺の考えを聞いた華は、すぐに実行に移す。

「分かった、やってみるね――技能模倣」

俺に手に触れながらそう唱えると、華は驚いたように目を見開いた。

「成功した! 『隠蔽LV1をコピーしました』だって、お兄ちゃん!」

「よし、やったな。それじゃ次は自分のスキル欄から技能模倣を隠すんだが、そのやり方はと……」

その後、俺は華に隠蔽の使い方を教え、無事に技能模倣を隠すことはできた。

さて、となると残る問題は……

「身体強化、魔力操作、魔力上昇についてどうするかだな。初期獲得スキルが3つあるのはよくあることだけど、問題はレベルなんだよな……3、3、5ときたか。どれもかなり高い」

「そうなんだ。じゃ、全部レベル1にしちゃえば問題ないかな?」

「それならまあ、普通の範疇かな」

「ならそうしちゃおう!」

すぐさま決断し、華は残りのスキルもLV1に書き換えた。

これで全ての準備を終えたことになる。

「よし、それじゃそろそろ皆のもとに戻るか。くれぐれも隠蔽を使ったことは誰にも話すなよ。俺が隠蔽を保有していることもな」

「了解……あれ? でも、なんでお兄ちゃんはこんなスキル持ってたの? 普通、自分にも隠したいことがないとこんなスキル手に入れたりしないよね?」

「……それについてはまた今度、ゆっくりと話すよ。色々と落ち着いたころにな」

「ふーん、ならいいんだけど……」

思ったよりもあっさりと納得してくれる華。

そんな彼女の反応に、ほっと胸を撫で下ろしたその瞬間だった。

「――――ッ」

形容しがたい違和感を覚え、咄嗟に周囲を見渡す。

しかし周りには何もない。

「突然どうしたの、お兄ちゃん」

「……いや、なんでもない」

気のせいだったのだろう。

そう結論を下し、これ以上気にしないことにした。

その後、俺と華は集まっている皆のもとに向かうのだった。

俺と華がステータス獲得後もゆっくり話していたせいか、もうほとんどの学生が魔物を討伐し終えているようだった。

大袈裟に喜んでいる者もいれば、深く悲しんでいる者もいる。

華が隠蔽を施したステータスを片桐に見せると、数秒で軽く確認された後、ステータス獲得おめでとうと言われていた。

心配していたわけじゃないが、あっさりと確認は終わったみたいだ。

その後、全員が魔物を討伐し終え、ダンジョンの外に出る。

そこまで来ると、片桐は皆に向けて言った。

「今回ステータスを獲得された方については、数週間後にありますダンジョン内演習にも参加していただきます。今回のスライムとは違い、戦闘力のある魔物を相手にどのように戦うのか、ダンジョン内ではどのような点に気を付けるべきかを学ぶ実践演習となります。それを終えるまでは皆さんの保有している冒険者資格は仮のものとなります。冒険者歴が1年以上の者と一緒になら構いませんが、自分だけでダンジョンに入ることは禁止されていますのでご注意ください。それでは、本日はお疲れさまでした」

これで今日は解散となった。

俺と華はその場から離れていく。

「お疲れ、華。改めてステータス獲得おめでとう」

「えへへ、ありがと。あ、ならなら、ご褒美に何かプレゼントして!」

「ん? ああ、いいぞ。この後都心にでも寄るか。あ、せっかくだしディナーにも行こうぜ」

「あ、あれ? 半分は冗談のつもりだったんだけど。ていうか、お兄ちゃん最近お金遣い荒くない? 大丈夫なの?」

「心配するな、最近はかなり稼いでるからな。お前の欲しい物を買ってやるくらいは余裕だよ」

「……そっかっ。じゃあ、お言葉に甘えるね!」

「おう。あ、それから華はまた実践演習でダンジョンに潜らなきゃいけないみたいだけど、今の話を聞くに、その演習より前でも付き添いさえいればダンジョンに入っていいんだよな? 集団だと教えてもらえる内容にも限界があるだろうし、華さえよかったら俺が付き合うぞ」

「ほんと? ならお願いしようかな……そうだ!」

何かを思いついたのか、華はスマホを取り出し連絡用アプリを開いていた。

またプライバシーの侵害と言われる恐れがあったので、さっと視線を逸らしておく。

なんにせよ、今日が華にとって良い結果に終わったのなら何よりだ。

そんなことを考えながら、俺と華は真っ直ぐ歩いていく。

だから、この時の俺は気付くことができなかった。

遠く離れた背後から、俺と華に視線を向ける者が存在していたことを。