軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

212 喰らい尽くす獣

「Sランク魔物、ケルベロスの魔石だと……?」

部下の発言を聞き、尾形はまず訝しそうに表情を歪めた。

しかしすぐ、先日に冥獣ダンジョンが 迷宮崩壊(ダンジョン・コラプス) を起こしたことを思い出した。

どうやらその時の魔石が冒険者ギルドの手に渡っていたらしい。

その貴重さと魔力量の多さから非売品とされていたが、【 無敵の(パーフェクト) 超越者(・カイザー) 】が持つ伝手を使い見事に入手したようだった。

加えて、レベル60000のリヴァイアサンの魔石が10個以上。

状況を理解した、尾形は思わず笑みを零す。

「よくやった! これだけの魔石があれば、私のレベルアップ効率は格段に上昇するだろう!」

この様子なら、本当に一か月と経たず100000レベルを超えることも可能かもしれない。

そんなことを考えていると、ちょうどそのタイミングでゲージの色が黄から青に戻った。

「よし、時間が過ぎたな! さあ、今すぐケルベロスの魔石を台座に嵌めろ!」

意気揚々と指示を出す尾形。

それに反応したのは、先ほどからこのギミックエリアにいた部下の一人だった。

「い、いきなりケルベロスの魔石を使うんですか?」

「何だ? 何か文句があるのか?」

「い、いえ、決してそういうわけではないのですが……ここのように、レベルに応じた仕掛けが存在するギミックエリアの場合、低レベルから順に試していく決まりですから、リヴァイアサンの物を先に使った方がいいと思いまして」

その忠告を聞いた尾形は、不満げにフンと鼻を鳴らす。

「ギミックならとっくに分かっているではないか。レベル100000の魔石を嵌めたところで、出現するのはせいぜい70000~80000のキマイラだろう。その程度の魔物に、この私がやられるとでも言いたいのか?」

「そ、そんなつもりでは……」

「もういい。邪魔だ、どけ」

強引に部下を押した尾形は、ゆっくりと台座に近づいていく。

そして自らの手でケルベロスの魔石を嵌めこんだ。

直後、まだ一つしか魔石を投入していないにもかかわらず、ゲージが一瞬で赤に染まった。

『一定量の魔石投入を確認しました』

『エクストラボス、【イクシード・キマイラ】が出現します』

同時に放たれる眩い光。

それが収まった時、そこにはイクシード・キマイラが出現していた。

ただしこれまでと違う点が一つ。

そのイクシード・キマイラは、 三(・) つ(・) の(・) 頭(・) を(・) 有(・) し(・) て(・) い(・) た(・) 。

「なっ……!」

「なんて禍々しさなんだ!」

ただならぬ気配に圧倒される部下たち。

そんな中で、尾形だけは落ち着いていた。

「ほう、投入した魔石によってこれだけ形態が変わることもあるのか。大方ケルベロスを模したものだろう。さて、肝心のレベルは……」

鑑定を使用する尾形。

するとそこには『討伐推奨レベル:75000』と記載されていた。

「ほれ見ろ、私の言った通りではないか! このくらいなら90000レベル越えの私の敵ではない。さあ、燃え尽き――」

「グガァァァアアアアア!」

「――ッ!?」

尾形が得意の炎魔法を放とうとした、その瞬間だった。

イクシード・キマイラが凄まじい速度で、風を切りながら迫ってくる。

咄嗟に前方へ結界を生み出す尾形だったが――

「がはっ!」

三つのうち、一つの頭による突進が命中。

イクシード・キマイラの勢いを殺しきることはできず、後方へ吹き飛ばされた。

尾形はダメージを受けた腹を抑えながら、慌てて姿勢を整える。

「ごほっ、ごほっ! チッ、少し動きが速いからといって調子に乗りおって! 私たちのステータス差の前には、この程度屁でもないわ!」

両者のレベル差は17000以上。

尾形は魔法使いタイプの冒険者だが、それだけのレベル差があれば耐久力もかなり高く、事実として大したダメージにはなっていなかった。

この様子なら魔法を何回か直撃させただけ倒せるはずだと考えた尾形は、追撃を警戒しながら反撃の機会を窺う。

しかし、ここで尾形にとって一つの誤算があった。

なんと、イクシード・キマイラは尾形に追撃を仕掛けてこなかったのだ。

その代わり――

「うわあああああ! 来るなあああああ!」

「助けてください、尾形さん!」

「いやああああああああ!」

ギミックエリア全体に響き渡る部下たちの悲鳴。

驚くことにイクシード・キマイラは尾形を吹き飛ばした後、部下たちに狙いを変えていたのだ。

「何だと!?」

その光景を前にし、尾形は混乱に陥った。

部下たちはあくまで尾形がこの場に連れてきたサポート役であり、レベルは最高でも30000とそこまで高くはない。

イクシード・キマイラにとっては取るに足らない相手であり、自分より優先して攻撃する必要があるとは思えなかった。

――そう。

ここに来てまだ、尾形は理解できていなかった。

レベルに応じた仕掛けがあるギミックエリアの検証を慎重に進めなければならない理由。

それは、どこかの一線を基準として行動が大きく変化することがあるからだ。

そして現在。

66600レベルを突破し、一つの特性を得たイクシード・キマイラは、ある狙いを持って部下たちを狙っていた。

その狙いとは、すなわち――

「……待て。貴様、何をするつもりだ!?」

イクシード・キマイラは部下たちに行動不能となるダメージを与えた後、その懐から数々の魔石を取り出した。

当然、その中には強力なリヴァイサンの魔石も含まれている。

警戒する尾形の前で、イクシードキマイラは迷うことなく三つの口で そ(・) の(・) 全(・) て(・) を(・) 呑(・) み(・) 込(・) ん(・) だ(・) 。

それと同時に、イクシード・キマイラの体が激しく脈動を繰り返す。

「……まさか!」

最悪の事態を想定した尾形は、慌てて途中まで進めていた詠唱を再開した。

そしてありったけの魔力を込めた一撃を放つ。

「燃え尽きろ、プロミネンス・バーストォ!」

それは炎属性の最上級魔法、プロミネンス・バースト。

75000レベルの相手なら、間違いなく一撃で討伐できるだけの威力を有していた。

しかし――

「ガルゥァァァァァァァ!!!」

――咆哮。

ただそれ一つだけで、尾形が放った渾身の魔法はかき消された。

「そんな、馬鹿な……!」

戸惑いと共に、尾形はなんとか再び鑑定を使用する。

そしてそこに書かれている内容を見て、思わず言葉を失った。

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【ジオ・イクシード】

・討伐推奨レベル:100000

・エクストラボス:合獣ダンジョン

・合成魔獣イクシード・キマイラの進化個体。

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それは尾形にとって初めて対峙することとなる、 Sランクの魔物(最強の敵) だった。