軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

大麦を沢山作ろう!2

『絶ぇ~対、負けたくない事がぁ~ある~♪

ほらぁ~行こぉ~う♪』

不意に口をついたのは、前世で良く見た魔法少女のオープニング曲だ。

しかも、現世でない言葉、日本語のものだ。

『負ぁ~けちゃいけない事がぁ~ある~♪

勇気ぃ~振り絞ってぇ~♪』

タイトルすらまともに思い出せないのに、 魔法少女(その子) 達の顔すらうっすらとしか思い出せないのに……。

『皆の夢ぇ~や希望ぉ~幸せのためぇ~~♪』

どころか、前世の両親の顔も、自分の顔も、自分の名前さえもほとんど覚えていないのに……。

なぜか分からないけど、その歌も、歌詞も、思い出せる。

なんだか不思議で、ちょっと面白かった。

『わたし、拳を強く握るの!

殴れ! 殴れ! 殴れ! 邪魔するものは皆、殴れぇ~♪』

ええぇ~!?

乱暴すぎるでしょう!?

あれ?

魔法少女ものアニメで合ってるよね!?

大昔の格闘アニメじゃないよね!?

なんか、自信が無くなってきちゃった……。

そんなことで頭を悩ませていると、突然横から「サリーちゃん!」と声をかけられた。

視線を向けると、ヴェロニカお母さんが心配そうに眉を寄せている。

「え?

どうしたの?」

「どうしたのじゃないわよ!」

声がした方を向くと、寝間着姿のイメルダちゃんが眉を怒らせながらも心配そうにこちらを見ていた。

「サリーさん、顔真っ青よ!

それに、わたくし達が近くで声をかけても全く気づかないし!」

あれ?

集中しすぎて気づかなかったのかな?

周りを見渡せば、辺りを飛び回る妖精姫ちゃんやサクラちゃんをはじめとする妖精ちゃん達が心配そうにこちらを見ていた。

あっちゃぁ~

やらかしてしまったようだ。

「心配かけてごめん。

大丈夫だよ」

それに対して、イメルダちゃんが目を三角にしながら怒鳴る。

「大丈夫じゃないわよ!

もう休みなさい!」

「えぇ~

でも、袋詰めとか――」

「もう良いから、早く!」

えぇ~

妖精姫ちゃんも、後はこちらでやっておくから、というジェスチャーをしてくる。

……わたしって、そんなに酷い顔をしてる?

イメルダちゃんに急かされ、一歩下がる。

あれ?

ふらりとよろめき、慌てて右手から白いモクモクを出そうとして――出ない?

ヴェロニカお母さんが抱きしめるように支えてくれる。

あぁ~これはちょっと 拙(まず) い。

魔力が完全に欠乏してる。

ヴェロニカお母さんに支えられつつ、自室まで何とか戻ってくる。

ここまで魔力を使い切ったのは、ママの修行以来だ。

そう認識すると、頭がグルグル揺れる感じがして、気分が悪くなってきた。

イメルダちゃんがプリプリ怒りながらする――魔力の欠乏は命に関わる等のお説教も、頭に入ってこない。

「サリーお姉さま、どうしたの?」

いつの間に来たのか、寝間着に着替えたシャーロットちゃんが部屋の入り口から心配そうに訊ねてくる。

いけない!

シャーロットちゃんに心配をかける。

わたしはぐっと力を入れると、ニッコリ微笑みかける。

「大丈夫、ちょっと疲れただけ」

「そうなの?」

シャーロットちゃんがこちらに近づきながら「顔色が悪いけど」と言ってくる。

あ~駄目だなぁ~

妹ちゃんに心配をかけるなんて、お姉様失格だなぁ。

「一晩寝れば、大丈夫だよ。

シャーロットちゃんも、もう寝る?」

「うん、寝る」

と嬉しそうにベッドに乗ると、定位置に移動する。

わたしが寝間着に着替えていると、ヴェロニカお母さんがイメルダちゃんに「あなたも、もう休んだら?」と言い、イメルダちゃんも「そうします」と答えている。

三人が入り終えると、ヴェロニカお母さんが「お休み、イメルダ、シャーロット」と言いつつ頬に触れている。

そして、「お休み、サリーちゃん」とわたしにまでやってくる。

「いや、わたしはいらないんだけど」とジト目で見るも、手をわたしの頬に置いたまま、ヴェロニカお母さんは「必要でしょう」とニッコリ微笑む。

そして、囁くように「無茶をするんだから」と言い離れていく。

……ヴェロニカお母さんの手はちょっとだけ冷たく、でも気持ち良かった。

照明を落としてくれたようで、部屋の中が柔らかな闇に包まれる。

シャーロットちゃんがいつものように抱きついてくる。

髪を洗ったのか、リンスの匂いが鼻をくすぐる。

シルク婦人さんにやって貰ったのかな?

温かい。

疲れているからか、意識がスーッと落ちていった。

――

朝、起きた!

今日もシャーロットちゃんがへばりついている。

昨日までなら、少々罪悪感を感じつつ、シャーロットちゃんをはがしていたけど、今日は問題ない!

いつものように、少しくすぐって拘束から抜ける。

そして、寂しそうに手を動かすシャーロットちゃんの腕の中に、スッとある物を差し込む。

ぬいぐるみである!

手芸妖精のおばあちゃんにお願いしたら、流石と言うべきか、すぐに作ってくれた!

しかも、ただのぬいぐるみではない!

フェンリル(ママ) の形をしたぬいぐるみである!

真っ白な狼型のそれは、見た目も格好いいし可愛いという素晴らしいもので、しかも抱き心地も最高という優れ物だ。

これなら、シャーロットちゃんも喜んでくれるはずだ!

国歌を口ずさみつつ、台所のシルク婦人さんに挨拶し、籠と壷を受け取る。

すると、ゴロゴロルームから寝間着姿にカーディガンを羽織ったヴェロニカお母さんが、心配そうに顔を出す。

「サリーちゃん、おはよう。

体調は大丈夫?」

「うん、もう大丈夫!」

魔力は一晩寝たら完全に回復していた。

試しに白いモクモクを出してみる。

うん、いつも通りだ。

ヴェロニカお母さんが「もう、無茶をしたら駄目よ」と注意してくる。

こればっかりは、完全にわたしが悪いので「うん、心配させてごめんなさい」と謝っておいた。

ケルちゃんが外に出たがったので、天気確認のついでに出して上げる。

うむ、晴天なり!

玄関から戻ると、天井から降りてきたスライムのルルリンを肩に乗せ、いつものように飛んできた妖精メイドのサクラちゃんと共に飼育小屋に行く。

ん?

またひよこ(推定雄)がわたしの足に突っかかってくる。

この男子系ひよこは……。

すると、わたしの肩にいたスライムのルルリンがビヨーンと降りていく。

それを見たひよこ(推定雄)は、ビクっと震えると雌の赤鶏さんの影に隠れる。

情けないなぁ。

卵を頂きつつ、餌をあげる。

次は山羊さん――ん?

何やら、山羊さん、わたしのお尻を鼻で突っついてくる。

え?

何?

外?

外に出たいの?

ああ、そういえば吹雪が止んでも、外に出して上げてなかったなぁ。

でも寒いよ?

え?

問題ない?

本当に?

山羊さんの搾った乳を入れた壺は、妖精メイドのサクラちゃんと数人の妖精ちゃん達が卵と共にシルク婦人さんの元に持って行ってくれた。

それを見送った後、外に直接出られる戸を開け、塞ぐように積もっている雪をかき分ける。

結界の外は、雪が結構な高さまで積もっているけど、特に正面の広場はケルちゃんが走り回ったお陰で、一応、踏み固められている。

そこまで、通るように白いモクモクで道を作る。

あ!

もう!

まだ途中なのに待ちきれなかったのか、山羊さん夫妻は「メー! メー!」と叫びながら凄い勢いでわたしの横をすり抜けていく。

そして、山羊さん、悪戯が成功したとでも言わんばかりのどや顔を、こちらに向けつつ走り去る。

もぉ~!

まあ、ストレスが溜まっていたってことかな?

これからは、定期的に出して上げないといけないかなぁ。

などと考えていると、凄い勢いで戻ってくる。

そして、わたしの背後に隠れる。

え?

どうしたの?

何か、凄く震えてるんだけど!

すると、山羊さん達がいた方から、真っ黒い物体が雪煙を上げながら駆けてくる。

ケルちゃんだった。

もう、三首とも嬉しそうに突っ込んでくる。

「待った!

待った!

山羊さんに絡むのは止めて上げて!」

両手を広げて止めようとすると、それに気づいたケルちゃん、嬉しそうに吠えながら飛びついてくる。

違う!

これは”おいで”のポーズじゃない!

だからといって、避ける訳にも行かず、すっかり大きくなったケルちゃんをなんとか受け止め――足が雪で滑って転んでしまった。

背中とお尻が冷たぁ~い!

もぉ~!

しかし、ケルちゃんはお構いなしに、わたしの顔を三首をしてペロペロ舐めてくるのだった。