軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ジャンル違い!?

門の周りは馬車の跡も、足跡もほとんど無かった。

冬ごもりの時期だから、まあ、当たり前か。

なんて思いつつ、門に向かい「ひゃぁ!」と声を上げた。

門番のジェームズさんがいたからだけど、いたからではない!

なんか、門番のジェームズさん、やつれていて、顔色も青白かったからだ。

いや、門番のジェームズさん、マフィアものから、ゾンビ物にジャンルが変わっているよ!

「どどどうしたの!?

体調悪いの!?」

訊ねると、門番のジェームズさんは表情を変えないまま首を横に振った。

いや、本当に怖いから!

「ああ……。

サリーちゃん、久しぶりだね……」

声をかけられ視線を向けると、ジェームズさんほどでないけど、やつれた門番の若いお兄さんが力ない笑みを浮かべながら手を挙げていた。

しかも、他の門番さんも、似たような感じだった。

「え!?

なに!?

どうしたの!?」

驚くわたしに、門番のお兄さんが疲れたように言う。

「食料が……少なくってね。

いや、一応はあるんだけど、冬を越えるとなると……」

え!?

そんなに酷いことになってるの!?

わたしは背負っていた籠を下ろすと、「取りあえず、これ食べて!」と門番さん全員に、林檎を配った。

門番さん達全員、震える手でそれを受け取った。

……だけど、誰も食べない。

門番のお兄さんが言う。

「……これ、家に持って帰って良い?」

「え?」

「子供に……食べさせたいんだ」

えぇ~

もう、「うん……」としか言えなかった。

あまり詳しく話したがらなかったけど、どうやら、町全体でこんな感じらしい。

門番さん達は、わたしの籠や白大ネズミ君を見ながら、意を決したように言う。

「すまないが、もし出来れば食料を分けて欲しいんだ。

金は払う!」

「でも、これ、孤児院に持って行こうかと……」

と答えると、門番さん達、「あああ……」と苦悩に満ちた声を上げ、俯いちゃった。

そして、なんか、言いたくても言えないって感じで籠をチラチラ見ている。

すると、門番のジェームズさんがわたしの肩に手を置いた。

「すまん、行ってきてくれ……。

正直、孤児院の奴らは限界に近いんだ」

ギョっとするわたしに、先ほど渡した林檎を差し出してくる。

「すまんが、これも、孤児院に――」

「いやいやいや!

駄目だよ、ジェームズさん!

それは絶対にジェームズさんが食べて!

なんか、死んじゃいそうだよ!」

そして、渋るジェームズさんに「門番さんが倒れたら、誰が町を守るの!」と言って、無理矢理食べさせた。

厳つい顔のジェームズさん、一口食べると涙をこぼしてた。

一体、いつから食べてないの!?

――

「おい!

肉の一欠片も無駄にするなよ!」

「はい!」

などと言いつつ、解体所の職員さんが白大ネズミ君を解体していく。

目がギラついていて、ちょっと怖い。

そんな様子を横目で見つつ、解体所の所長グラハムさんに言う。

「グラハムさんもやせたね」

あんなに丸い体型だった解体所の所長グラハムさんだったけど、半分になったんじゃないかって思うほどやせていた。

急激にやせたからか、皮がだぶついているところが、すごく痛々しい。

だけど、解体所の所長グラハムさんは「ガッハッハ!」と快活に笑う。

「他の皆とは違って、蓄えがあったからな。

ずいぶん助かってるぞ!」

「いやいや、そういうもんじゃないよね!」

「心配無用じゃ!」なんて言ってるけど、心配しないわけにはいかないでしょう!

小声で訊ねる。

「冬ごもり前に大量に狩ったお肉はどうしたの?」

すると、解体所の所長グラハムさんとは違う声が返事をした。

「一応、まだあるが、ずいぶん目減りした。

正直、あれがなければ貧民層の多くが命を落としていただろうなぁ」

後ろを振り向くと、組合長のアーロンさんが渋い顔で立っていた。

解体所の所長グラハムさんが職員さんに呼ばれて離れていったので、代わりに組合長のアーロンさんから話を聞くことにする。

相変わらずマッチョなおじいさんだけど、やっぱり食事を余り取っていないのか顔色は良くない。

「孤児院に食料を持って行ってくれたらしいな。

すまんな。

気にはなりつつも、どうしてもそこまで手が回らなくて、な」

「まあ、そうだよね」

解体所に白大ネズミ君を置いた後、急いで孤児院に行ってきたんだけど、想像以上に酷かった。

子供達――いや、職員の人たち含めて全員、飢餓状態だった。

寝込む子や、病気にかかった子もいて、それこそ地獄のような有様だ。

そんな状態を放っておく訳にも行かず、食べ物を職員さんに渡した後、全員に体力回復魔法をかけて回った。

根本的な解決にはならないかもだけど、いくらか元気が出てきたのか、皆、涙を流しながらお礼を言ってきた。

そういうの、慣れていないから、逃げるように解体所まで戻って来ちゃったよ。

声を落としながら訊ねる。

「そんなに、持ってかれたの?」

それに対して、組合長のアーロンさんも声を落として答える。

「ああ、しかも一律でな」

「一律?」

「金持ちも貧民、大人も子供も同じだけな」

「え!?」

「裕福な者にとってすら、少なくないんだ。

貧困層はほとんど何も無い状態で冬ごもりになったことだろう」

酷い!

「そんなことをしたら、死んじゃうよ!

領主様は何考えてるの!?」

「……一応、金銭が無くても食料の配給は行うといっているが」

「え?

そうなの?」

それなら安心――って様子が組合長のアーロンさんから感じられない。

「代わりに、自分で払うこととなる。

つまり、奴隷になれって事だ」

「!?」

奴隷!?

なんか、前世でも昔はあったらしいし、WEB小説の定番でもあるけど……。

身近な――しかも、愛着がわいてきたこの町で聞くと、すごくショックだ。

「前と前々の領主様は厳格だけど、こういう時にはかならず、手を差し伸べて下さったのじゃが……」

と組合長のアーロンさんは苦々しく呟いた。

「じゃあ、狩りをするしかないね!

冬でも魔獣なら、いくらかいるでしょう?」

食べ物さえ有れば、問題ないはず! そんな気持ちで言ったわたしの言葉を、組合長のアーロンさんが苦悩するように眉を寄せる。

「狩りも今は難しい。

この辺りは冬になると”あれ”が現れるからな」

組合長のアーロンさんの視線の先には白大ネズミ君がいた。

「あぁ~

白大ネズミ君ね」

わたしも苦笑してしまう。

白大ネズミ君はフェンリル一家にとっては弱いけど、曲がりなりにもママの洞窟近辺ですら生き残ったネズミだ。

弱(じゃく) クマさん程度で大騒ぎしているようだと、厳しいか。

「お前が言う白大ネズミ? この地域では” 地獄(じごく) ネズミ”というのだが、昔から冬になると、この辺りを荒らし回るんだ。

この町が塀で囲まれているのも、あいつら対策と言われている。

……因みに、お前は”あれ”をどうやって狩ったんだ?

奴らは何百匹もの集団で行動しているはずなんだが」

「隠れてやり過ごしつつ、転んだのを捕まえた」

「なるほどなぁ。

だが、お前ならともかく、他の者で有れば命がいくつ有っても足りないやり方だな。

流石に、そのようなことはさせられない」

「わたしが狩ってこようか?

まともにやり合うのは流石に嫌だけど、少しずつ削るのなら、構わないよ」

そう提案するも、組合長のアーロンさんは苦い顔をする。

「一匹、二匹ならともかく、何匹もとなるとやはり目立つ。

それに、 地獄(じごく) ネズミもあと二週間ほどでどこかへ行くから、そこまで無理をする必要はない」

「ああ、そうなんだ」

まあ、冬のこの辺りだと、大して食料も無さそうだしね。

「もし手伝ってもらえるなら、”その後の奴”でお願いしたい」

「その後の奴?」

「聞いてないか?

大白猿だ」

「あぁ、ハルベラさんが言ってた奴か。

けが人が出るって」

「そうだ。

奴らも集団で、しかも、悪知恵の働くやっかいな魔獣だが、 地獄(じごく) ネズミほどではない。

そちらに集中した方がいい。

普段は頭痛の種ではあるが、どうやら今年は奴らの肉がこの町の明暗を分けそうだ」

「え、猿なんだよね?

食べるの?」

いや、前世でも猿を食べる人もいたらしいから、異世界たるこの町でも食用にしてもおかしくはないんだけど……。

わたしはちょっと、お断りしたいなぁ。

なんて思っていると、組合長のアーロンさんは血走った目で睨んできた。

「飢え死にするよりはマシだろう?

それに、貴族は絶対に食わんのだ、むしろ、都合が良いと思わんか?」

「あ、はい……」

言ってることは全くの正論だけど、ごめんなさい!

しばらく、この町でお肉料理は食べません!

「あ、でもその前に、うちにある食料をいくらか持ってくるよ。

焼け石に水かもしれないけど」

「ありがたいが、無理せんで良いぞ?

まずは、お前や家族の分が優先だからな」

「うん、大丈夫!

話をあらかじめ聞いていたから、余裕はあるの」

わたしの場合、植物育成魔法があるしね。

すると、組合長のアーロンさんが頷く。

「そうか、それなら良い。

とても助かる。

……その時は、わしの所に持ってこい。

お前が配ると、問題になる恐れもあるからな」

「うん」

そのほうが、わたしも助かる。

「あと、前にも言ったが、高価なものを買う時はわしに言え。

今はほんの少しでも、お前を目立たせたくない」

「うん。

あ、ハサミは高価?

髪を切るものなんだけど」

すると、組合長のアーロンさんは何故か苦笑しつつも、買ってきてくれると約束してくれた。