軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

共同作戦、最終日!1

朝!

起きた!

今日は狩りをする最終日だ!

朝のあれこれの準備を終え、ご飯を食べてから出発の準備をする!

帽子よし、 尻尾(ベルト) よし、荷車よし!

見送りに来てくれた皆に手を振り、出発だ!

森を走り、小川を越えて、草原に出て……。

白狼君達が併走してきた。

もう、この子達は!

仕方がないなぁ。

『明日、狩りに付き合って上げるから、今日は帰りなさい!』

うぉうぉうぉん! と言うと、悲しげに吠えつつも諦めてくれた。

あ、でも物作り妖精のおじいちゃん達と製鉄に挑戦しなくちゃならないんだった。

昨日、物作り妖精のおじいちゃんが身振り手振りで伝えてきたんだけど、我が家の改装の他に、大木の内装等でも人員を取られてしまっているとのことだった。

なので、今から冬ごもりまでに製鉄所を作るのは無理とのことだった。

ただ、鍛冶場は出来ているので、製鉄された鉄があれば、大丈夫とのこと。

白いモクモクで製鉄が出来れば問題ないし、最悪、町で購入するってのも有りか。

そこら辺は、狩が終わってから考えることとなっていたんだけど……。

ま、まあ、今日にしても、明日にしても、狩だけなら午前中だけで終わるだろうし、午後にやれば良いよね。

そんなことをもんもんと考えている内に、冒険者組合が作った基地に到着する。

顔見知りになった組合の人に挨拶をしつつ、中に進んでいく。

あ、赤鷲の団の皆を発見!

「おはよう」と挨拶をしつつ近寄っていった。

「おう!」

「おはよう!」

「サリーちゃん、おはよう!」

とライアンさん、マークさん、アナさんそれぞれが手を振って挨拶してくれた。

赤鷲の団団長のライアンさんが言う。

「サリー、今日は頼んだぞ」

「うん」

冬ごもりについて、少し四人で話をする。

いつもはお金を貯めるぐらいしかしてなかったけど、今年は色々ときな臭いって事で、念のために保存食も準備しているとのことだった。

赤鷲の団団長のライアンさんが辺りを気にしつつ、声を落とす。

「いざという時は、助けてもらえると助かる」

赤鷲の団の皆はわたしの植物育成魔法の事を知っているから、そのことだろう。

「うん、困ったら言って。

一応、お肉も干し肉にする予定分を渡せると思うよ」

「助かる。

俺たちだけなら、よほどの事がなければ大丈夫だと思うけど、周りにはちょっと不安な人もいるからな」

ああ、自分たちのことじゃないのか。

そうなると、結構な量が必要になるのかな?

籠もっている時も、魔力が余っている分は生産に回すのも良いかもしれない。

赤鷲の団と話をしていると、他の団も集まってくる。

巨熊の団、小白鳥の団、火蜥蜴の団……。

同い年冒険者のアンティ君も来たので手を振ると、何かそわそわした感じで頷き返してきた。

あれかな?

女の子と何かするのが恥ずかしいと思う年頃なのかな?

まあいいけど。

赤鷲の団団長のライアンさんが皆に聞こえる声量で言う。

「皆そろったな。

じゃあ、共同作戦について改めて説明する」

赤鷲の団のアナさんとマークさんが木の板をそれぞれの団に渡していった。

赤鷲の団団長のライアンさんが続ける。

「作戦は前に話した通りだ。

赤大鹿(あかおおしか) の縄張りに対して、 赤鷲(俺たち) が町側から外に向かって追い払う形に奇襲をする。

逃げる 赤大鹿(あかおおしか) を他の団や参加者が迎撃する。

そんな所だ。

前にも話した通り、 赤大鹿(あかおおしか) の数は多い。

それに、群れの長を含む雄達は強敵だ。

雄に関しては、俺たち赤鷲の団で極力減らすつもりだが、十分、注意してくれ。

殲滅する必要はない。

余裕を持って狩れるものだけ叩くように」

その後、赤鷲の団団長のライアンさんは木の板に書かれた待機場所や諸注意について、細かく話していく。

こういう場には初めて来たのでよく分かんないけど、なんだか凄くしっかりしている様に見えた。

ライアンさん、やんちゃ系先輩かと思いきや、キャプテン系先輩だったのね。

感心しながら話を聞いていると、小白鳥の団団長のヘルミさんが片手を軽く挙げた。

「サリーちゃんはどこに行くの?

何だったら、わたしらと一緒にいる?」

あ、そういえば、わたしの配置場所、聞いてないや。

赤鷲の団団長のライアンさんは首を横に振る。

「いや、サリーは俺たちと行く」

巨熊の団団長のラスムスさんが心配そうに眉を寄せる。

「サリーちゃんはまだ、冒険者になって数日しかたっていないだろう?

雄を狙うお前達と一緒に行くのは危険すぎないか?」

ん?

赤鷲の団団長のライアンさんが倒せるぐらいの偽鹿さん程度なら、わたし、平気だけどなぁ。

あ、でもわたしみたいな女の子だと、心配されて当たり前か。

そんなことを思っていると、赤鷲の団団長のライアンさんが手を振る。

「俺たちがいれば大丈夫だ。

それにサリーには――」

「まさか、立場を利用して、サリーを口説こうとしてるのか!?」

同い年冒険者のアンティ君の怒気の籠もった発言に、ライアンさんは「はぁ?」と変な顔をする。

そこに、小白鳥の団団長のヘルミさんがニヤニヤ笑いながら追随する。

「あ~

サリーちゃん、可愛いからねぇ~」

ヘルミさん、明らかにからかってるなぁ。

まあ、今世のわたし、自分で言うのもなんだが可愛い。

とはいえ、わたしは前世でいえば中学一年くらい。

ライアンさんは高校卒業したぐらいのお兄さんだ。

当然、対象外だろう。

……大きな胸が大好きっぽいしね。

ただ、そうだなぁ。

一応、言っておこうかな?

「ごめん。

わたし、弱い男の人は対象外なの」

「告白してもないのに、振る 体(てい) で何、酷いこと言ってるんだ!」

皆から大爆笑が起こる。

小白鳥の団団長のヘルミさんなんか、笑い過ぎの涙目で「サリーちゃん、ライアンが弱いとかどんだけ強ければいいのよ!」とわたしの肩をバンバン叩いてきた。

ライアンさん、弱いもん。

お兄ちゃん達とまではいかないけど、せめて、わたしよりは強くないとね。

――

皆が配置に向かった後、しばらくして、赤鷲の団団長のライアンさんが座っていた岩から立ち上がると「そろそろ行くか」と言った。

それに合わせて、わたし達も立ち上がる。

あの後、赤鷲の団団長のライアンさんが「サリーは魔法が出来るんだ!」と言ったことで、他の団の皆は納得し、わたしは赤鷲の団の皆と行動することになった。

赤鷲の団団長のライアンさんが言う。

「お前なら大丈夫だと思うけど、今の主はかなりの巨躯で凶暴らしい。

気をつけろよ」

「うん」

わたしとライアンさんを先頭に進む。

しばらく森の中を進むと、奥に開けた場所が見えてきた。

ふむ。

結構な数、いるね。

五十匹ぐらいかな?

のんびりと、草を 食(は) む姿が見えた。

お、あの大きいのがボスかな?

中央付近で、雌鹿さん達に囲まれている、一際大きい鹿さんがいた。

鹿ってしなやかな体格をしているイメージがあったけど、体だけでいえばバッファローみたいなごつさがあった。

肩高は三メートルくらいかな?

赤茶けた毛皮に、平たく巨大な角、鹿とは思えない厳ついお顔――そんな彼はこちらに気づいたのだろうか、一瞥した後……。

馬鹿にしたように鼻で笑った。

周りにいる雌も、近くに控える雄も、冒険者が近くにいるのに警戒する様子すらなく、無視をしていた。

やれるもんなら、やってみろという様子だった。

ふむ。

ちらりと視線を向けると、赤鷲の団団長のライアンさんの顔がひきつっていた。

「ば、馬鹿な……。

デカいとは聞いていたけど、あそこまでとは……」

「やばくない?」

「だ、大丈夫?」

赤鷲の団団長のライアンさんの言葉に、マークさん、アナさんも続ける。

えぇ~

情けないなぁ。

大きいといっても、わたしの知っている鹿さんに比べたら一回り以上は小さいし、そもそも、縄張りに一歩踏み入れただけで、狂ったように突撃してくるほど凶暴だった。

それに比べたら、前世の奈良鹿にも劣るほど温いじゃない?

仕方がないなぁ。

わたしは後込みする皆をそのままに、さっさと前に進む。

赤鷲の団団長のライアンさんの「お、おい、大丈夫なのか?」などという情けない声が聞こえてきたけど、振り返らないまま手を振った。

このサイズでビビってたら、 ワイバーン(偽竜君) が来たら失神しちゃうんじゃないかなぁ。

やっぱり、ライアンさんは対象外だ!

向こうだってそうかもだけど。

偽鹿ボス君、近づくわたしなど無視して、雌鹿といちゃいちゃし始めた。

ふふふ……。

別に構わないよ。

あなたが警戒しようが、シカトしようが、結果は同じなんだから。

鹿さんはあんなに美味しかったから、あなたもきっと美味しいよね。

ケリーお姉ちゃんが大好きな鹿さん鍋を思いだし、口の中に唾液が溢れてきた。

シャーロットちゃんと食べる鹿鍋、とっても楽しいだろうなぁ。

なんて、思っていたのが良くなかった。

殺気が漏れてしまったのか、それとも、近づいたことで実力差に気づいてしまったのか……。

偽鹿ボス君は突然、ビクっと震えてこちらを見て、そして、逃げた!

雌も子分も置き去りに、一目散に逃げる。

「あ!

待て!」

白いモクモクを伸ばすも、偽鹿ボス君、巧みに逃げるから別の雄鹿を捕まえてしまう。

「この!」

振り回して、その雄鹿の首をへし折る。

「サリー!

待ち伏せ組が危険だ!

少なくとも奴は逃すな!」

後ろから赤鷲の団団長のライアンさんの声が聞こえる。

むろん、逃がす気はない!

右足で地面を蹴る。

一歩、二歩、三歩!

ジャンプしたわたしは、偽鹿ボス君の延髄に、「てい!」と蹴りをねじ込んだ。