軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

食糧不足が現実味を帯びてきた?

町の門に到着!

いつものように、門番のジェームズさんを見て「ひゃ!」と悲鳴を上げてしまった後「こんにちは」と挨拶をしつつ通り抜ける。

今日は窓ガラスを買うだけだったのに、まずは冒険者組合の解体場に向かう。

あの時、の 弱(じゃく) 水牛君だけど、軟弱にも、先頭の一頭だけでなく後ろにいた五頭の首もコキリと折れていた。

逃げていった 弱(じゃく) 水牛君達はともかく、もう死んでしまった彼らを放置するのも勿体ないので、先頭の一頭を含む三頭を荷車に乗せて持ってきたのだ。

残り三頭は、まあ、ちゃっかりさんの白狼君達にあげることに。

あの子ら、そのうち、わたしがいないと狩りができなくなりそうで、ちょっと心配だ。

そんなことを思っている内に、解体所に到着する。

解体所の所長グラハムさんはいるかな?

と思いつつ、入り口を開けると、大きなおじいちゃんは組合長のアーロンさんとなにやら難しそうな顔で話し合ってた。

忙しいのかな?

まあ、他の職員さんに渡せばいいかな?

などと思いつつ、荷車を中に入れていると二人がこちらに気づいた。

「おう、サリー!

今日は何を狩ってきた?」

と組合長のアーロンさんが近寄ってきたので、「 弱(じゃく) 水牛君」と荷車の覆いを外した。

「 弱(じゃく) 水牛君?」

と同じく近寄ってきた解体所の所長グラハムさんが小首を捻っていたけど、荷車の中を見て「おお、 大鎧牛(おおよろいうし) じゃな!」と何故か少し嬉しそうにする。

「そんな名前なの?」と訊ねると、解体所の所長グラハムさんは頷く。

「そうじゃ。

巨体な上にこの堅い皮からそのようにいわれている……。

この一体は特に大きいのう。

一体一体強い上に群れて行動するので、ミスリル蜥蜴ほどではないにしても、狩るのは中々難しい魔獣なのだが……」

「勝手に突っ込んで来たから、ゴンと首を折ったよ」

「?

ああ、岩を背に立って、自爆を誘ったのか。

中々、良い手じゃな」

いや、突っ込んできたのを殴ったんだけど……。

まあ、いいかな?

「冬ごもりの準備があるから、早く買い取って!

あ、でもお肉はいくらかは持って帰るよ!」

と解体所の所長グラハムさんを急かす。

「分かった分かった」と言いながら、解体所の所長グラハムさんが準備をし始めると、組合長のアーロンさんが声をかけてきた。

「サリー、ちょっと相談したいことがあるんだが」

「相談?」

「ああ」

とムキムキおじいちゃんな組合長さんが少し言いづらそうにする。

「この、 大鎧牛(おおよろいうし) の肉だが、すべて売って欲しいんだ」

「ん?

全て……」

ちょっと考える。

せっかく狩ったんだから、肉食系女子(意味違い)なシャーロットちゃんの為にも持って帰ろうと思ったんだけど……。

まあ、絶対に必要という訳でも無い。

「別に良いけど、なんかあるの?」

組合長のアーロンさんが声を落としながら「ここだけの話にしてくれ」と言いつつ話し始める。

「実はこの冬、食糧不足になる可能性が高いんだ」

そういえば、ケーキ屋さんでもそんなこと言ってたなぁ。

わたしもアーロンさんに倣って声を落とす。

「戦争があるんだっけ?

でも、これから冬だって言うのにそんなのあるの?」

「あほうな時期に、あほうな戦争を行うというあほうな話など、歴史上枚挙にいとまがない。

とはいえ、戦争を行うのはこの国ではない。

海を隔てた大陸の国だ」

「ん?

どういうこと?」

「その国は兵糧として使いたいのだろう。

高く買ってくれるんだ」

なるほど、この国で戦争を行うんじゃないなら、多少は安心かな。

食料の値段が上がるのも、不満ではあるけど”需要と供給”の問題で仕方がない部分もある。

……あれ?

んんん?

「徴集されるって――」聞いたんだけど? と続けたかったんだけど、組合長のアーロンさんに口を塞がれた。

組合長のアーロンさんが険しい顔で言う。

「余計なことを口にするな。

その辺りはかなり”きな臭い”話もある。

他国のせいで食料品の値段が上がっている。

とりあえずは、それでいい。

分かったな」

わたしが顔をひきつらせつつもコクコクと頷くと、手を離してくれた。

「サリー、出来れば冬までにいくらか狩ってきて欲しい。

出来るだけ、肉が多い奴をだ」

「でも」徴集されたら意味なくない? という言葉の裏側を読んだのか、組合長のアーロンさんは頷く。

「大丈夫だ。

その辺りはこちらで行う」

何か、抜け道でもあるのかな?

聞かない方が――良いよね。

組合長のアーロンさんは続ける。

「特に何も考える必要はない。

今まで通り、狩ってきたものをここに持ってきてくれればな。

で、出来れば肉は全て売って欲しい――ということだ」

「うん……。

うちの冬籠もりの準備に支障が出ない程度なら良いよ」

「それで構わない。

あと、仮に門兵や衛兵などに理不尽な形で食料を奪われても抵抗はしてくれるな。

その時は、わしに報告してくれ」

組合長のアーロンさんが「取り返せるかどうかは分からんがな……」と苦しそうな顔で言うのを見て、本当に怖いことになりそうだと実感した。

冬籠もりの期間は極力、町に近づかない方が良いかなぁ。

どちらにしても、ここら辺は雪がかなり降るらしいからこれないだろうし……。

うん、そうしよう。

――

解体所を出ると冒険者組合に向かう。

組合長のアーロンさんから、受付嬢のハルベラさんに顔を見せるよう言われたからだ。

因みに、窓ガラスは砂糖と同じく冒険者組合の方で買ってくれるとのこと。

それなりに高額だから、嗜好品の砂糖ほどでは無いにしても目立つとのことだった。

「普段ならともかく、今は極力目立たない方が良い。

特にお前みたいな小娘はな」

と言われてしまっては是非も無い。

お願いすることにした。

ただ、前回とは違って手数料は不要とのこと。

要するに、”お肉よろしく”って事だろう。

まあ、 弱(じゃく) クマさん辺りを五頭ぐらい持って行けば良いよね。

ん?

あれは……。

赤鷲の団の皆が、冒険者組合の前に立っていた。

今日は三人揃っている。

……。

向こうもこちらに気づいたらしく、手を振ってきたので振り返す。

そして、側まで行くと訊ねる。

「何か、二人ともげっそりしてる?」

わたしの問いに、赤鷲の団の男性陣が苦笑した。

いや、だって二人とも顔色が悪いし、目の下にクマがあるし。

赤鷲の団団長のライアンさんがため息を付く。

「聞いてると思うが、俺たち、何か変な病気にかかっちまったみたいでな……。

大変だったんだ」

赤鷲の団のマークさんも「一時期なんて、寝台から出られなかったんだぜ」と言う。

「治ったの?」と訊ねると、赤鷲の団団長のライアンさんは少し笑みを浮かべた。

「ああ、何とかな!

ようやく、動けるようになった」

「じゃあじゃあ、やっぱりわたしのジャムが効いたの?」

と嬉しくなって訊ねたけど、何故か三人が苦い顔をする。

赤鷲の団のマークさんが頭を掻きながら言う。

「いや、くれたサリーちゃんにこんな事を言うのは凄く申し訳ないんだが……。

アナから食べさせて貰った後、俺、よく分からんけど失神した」

「え?

どうして!?」

「マークったら、白目剥いて倒れたのよ!

本当にビックリしたわ!」

「えええ!?」

何で!?

わたしだって、ヴェロニカお母さん達だって食べても平気だったのに!?

「普通の林檎ジャムだよ!」と言うと、赤鷲の団のアナさんは分かっているというように頷いて見せた。

「わたし、マークが食べる前に一口貰ったけど、普通に美味しいジャムだったわ。

だからこそ驚いちゃって」

えええ~

よく分からないなぁ。

赤鷲の団団長のライアンさんは「その話を聞いて、俺は食べなかった……」とブルブル震えているし、なんか、マークさん「記憶が定かでは無いが、恐るべき者の深淵を覗いた――いや、覗かれた気分だったぜ」なんて、現世で言う厨二病っぽい事言い出すし、何だかなぁ。

せっかく、美味しく出来た林檎ジャムだったのにぃ。

そんな、わたしの不満を感じ取ったのか、赤鷲の団団長のライアンさんはわたしの頭に手を置きながら「済まん。今は無理だが、次の機会は是非食べさせてくれ」と言いながら続ける。

「俺、甘い物は結構好きなんだ」

「あら、団長。

いつも”王妃様のお菓子”食べないじゃない」

赤鷲の団のアナさんの揶揄っぽい笑顔に、赤鷲の団団長のライアンさんが苦笑する。

「あんな馬鹿みたいに高い菓子を、毎回食べてるのはお前ぐらいだ!

いや、そんな話はもういい!」

赤鷲の団団長のライアンさんが真剣な顔になる。

「サリー、お前にちょっと手伝って欲しいことがあるんだ」

「手伝って欲しいこと?」

と訊ねると、赤鷲の団団長のライアンさんは重々しく頷いた。