軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

焦燥に駆られながら3

つんざかんばかりの轟音と強い光が、白いモクモク越しにも漏れ出てきて、女の子達が悲鳴を上げた。

わたしは上の女の子が赤ちゃんを落っことさないか警戒していたが、逆に庇うようにしていて、感心してしまった。

白狼君達も、少しは動揺しているようでビクビクと白いモクモクを眺めてはいたが、パニックになる事は無かった。

全滅させられたかな?

右手で出していた白いモクモクを消滅させる。

あれ?

避けられちゃったかな?

いや、そうでも無いかな?

半数近くのサーベルタイガー君の丸焦げた死体が転がっていて、五十メートルほど向こうに残りが立っていた。

残った彼らも直撃は避けたものの無傷、では無いようだ。

まあ当然か。

電流を通さない白いモクモクで囲ったこちら側はともかく、雨でびしょびしょの向こう側は、稲妻の電気が水たまりを伝って襲ってくるはずだ。

むしろ、少し体を痙攣させながらも、立ってこちらを睨んでいること自体、凄い事だ。

多分先頭に立っていたサーベルタイガー君だろう、忌々しそうに一吠えすると、仲間達と共に走り去っていった。

取りあえず、追っ払ったか。

「す、すごぉ~い!」

小さい女の子が目をキラキラさせながら言ってくれるが、わたしとしてはちょっと微妙な気分だ。

全滅させられなかったからではない。

”魔術”だからだ。

実はこの”魔術”、武器を使用するのと同様、その使用をママはお気に召さないのだ。

ママ曰く、”自力”ではない、とのことだ。

何故、”自力”で無いのか……。

その辺りの事を、ママは一生懸命説明してくれたんだけど、正直、難しすぎてほとんどの場合、聞き流すというか、寝流していたからよく分からない。

何にせよ、わたしが 魔術(これ) を使うのを嫌がるのだ。

だけど、わたしは安全が良い。

より遠くから広く攻撃できるなら出来るようになりたい!

と、一生懸命説得して、何とかエルフのお姉さんに教わる許可を得ることが出来た。

許してくれたのは多分、そんなことを言い出したのがわたしだけで、しかも、他の兄姉より体が凄く小さかったからだと思う。

それでも、練習しているわたしを見るママは、本当に嫌そうな顔をしていた。

なので、褒められてもそれを思い出してしまうのだ。

いや、そんなことは今は良いか。

わたしは急いで女の子たちの服を洗濯する。

すると、白狼のリーダーが近寄ってきた。

え?

サーベルタイガー君も食べて良いか?

どうぞ、ご 随意(ずいい) にしてください。

すると、白狼のリーダーがうぁおおん! と遠吠えを上げた。

女の子達が驚いて「ひぃ!」と漏らす。

大丈夫、大丈夫!

安心させつつ、洗濯物を乾燥させていると、白狼君達がわらわらとやってきた。

中には子供も混じっている。

一族全員で残さず食べようと言う強い意志を感じた。

まあ、良いけど。

こちらに近づいてくる子もいたけど、リーダーが吠えると離れていった。

なかなかの、統率力だね。

まずは赤ちゃんの体をしっかりと拭き、服を着せる。

赤ちゃん、温かくなったからか、寝てる。

幸先良い!

赤ちゃんを左手に持った状態で下の女の子、そして、上の女の子と浴槽から出すと同時にタオルで包み、白いモクモクで覆った地面に置く。

そして、服を着せ、靴を履かせる。

上の女の子に赤ちゃんを渡すと、使用したタオルを乾燥させる。

浴槽からお湯を抜くと同時に、その底でぐったりとしている女の子達のお母さんをタオルで拭き、服を着せる。

ビリビリで、服として機能していない……。

仕方がない。

上半身と下半身をタオルで縛る。

靴も、何かあった時用に履かせる。

そして、門番のジェームズさんが貸してくれたコートを着せる。

まあ、人前に出る訳じゃないから、これで良いかな。

女の子達のお母さんを背負うと、「二人とも、わたしのそばに」と指示する。

上の女の子が左に、下の女の子を右に立たせると、しゃがむ。

右手で白いモクモクを出すと、それぞれの女の子、その膝下に回るように延ばした。

そして、「そこに座って」と指示を出す。

戸惑いながら座ったのを確認すると、全員、持ち上げる形で立ち上がる。

上の女の子が「だ、大丈夫なんですか!?」と赤ちゃんをぎゅっと抱きしめながら訊ねてくるけど、ぜんぜん大丈夫だ。

「四人とも、軽いから大丈夫!」とにっこり微笑んでおいた。

でも、問題はそこじゃない。

女の子達を持ち上げるために使っているモクモクをさらに延ばし、傘とする。

浴室で使っている左手のモクモクは、何かあった時のためにフリーにしておきたい。

そうすると……。

荷車は諦めるしかないかぁ。

浴室にしている白いモクモクを解除する。

屋根が無くなり、雨が傘にしているモクモクに当たる。

さほど大きく出来なかったので、雨水が少し、体に当たっている。

左手のモクモクで荷車を掴むと、近くにあった木の陰に置く。

ケーキの甘い匂いが漂うそれだ。

長時間、置いておいて無事とは思えないけど、一応、雨に濡れないための措置だ。

『じゃあ、わたし達は行くね』

とうぁおおん! と白狼君に挨拶をすると、家に向かって駆け始めた。

――

家に到着!

妖精ちゃん達が何かワラワラ寄ってくるが「ごめん! 退いて!」と追っ払って、家に入る。

妖精姫ちゃんが慌てて近寄って来た。

姫ちゃんには一応、説明しておかなくちゃ。

「魔獣に襲われている人たちを助けたの」

視線の端にケーキを食べる準備万端のテーブルを見て、楽しみにしてたんだろうな~と少し罪悪感が湧く。

「ごめん、荷物置いて来ちゃった」

妖精姫ちゃんは気にしないで、というようにニッコリ微笑む。

そして、妖精メイドちゃん達に指示を出す。

タオルとかを用意したり、暖炉に薪を入れて部屋を暖めたりしてくれる。

妖精姫ちゃん、優しいし頼りになる!

上のお姉ちゃんが恐る恐る訊ねてくる。

「あ、あのう……。

彼女たちは?」

「妖精ちゃん」

「よ、妖精、ですか?……」

……勝手に妖精ちゃんとか言っているけど、ひょっとしたら違うのかも。

でも、今はそんなことはどうでも良い。

「詳しい話は後」

お母さんと赤ちゃんをゴロゴロルームに寝かせる。

手芸妖精のおばあちゃんが 綿(わた) を入れて作ってくれていた枕と掛け布団を持ってきて、被せてあげる。

そして、体力回復魔法をかけてあげる。

青白に戻ってしまった二人の顔に、血の気が戻り始める。

よし!

女の子達がケルちゃんを見て、「首が三つある!」とか言って驚いたから「大丈夫大丈夫」と紹介してあげたりしていると、妖精メイドのサクラちゃんが大きな籠を持ってきた。

ん?

ああ、赤ちゃんを入れるのね。

その中には柔らかな布が布団のように詰められていて、その中に一番小さい妹ちゃんを入れる。

視線に気づくと、女の子達がこちらを心配そうに向いていたので、靴を脱いで上がるように言う。

土足厳禁な場所に慣れていないからか、上のお姉ちゃんは不可思議そうにしたけど、「この部屋は大きな寝台みたいなものなの」と言うと、納得したように頷いた。

ん?

え?

靴が脱げない?

この二人、やっぱり凄いお嬢様なのでは……。

手伝ってあげてから、はたと気づく。

そういえば、お母さんの靴も脱がさなくては。

ゴロゴロルームに上がると、お母さんの足から靴を脱がせる。

すると、その振動で目が覚めたのか、「……ここは?」という声が聞こえてきた。

女の子達が「お母様!」「おかぁ~様!」と側に寄る。

そして、二人ともお母さんにすがりつき泣き始めた。

そんな二人の後ろからのぞき込むようにしつつ、「大丈夫?」と声を掛けた。

お母さんは困惑気味に、「え、ええ……」と言う。

そして、「あのう、もう一人の――」と言うので、「一番下の子はここ」と赤ちゃんを籠ごと寄せてあげると、お母さんは体を起こし「あ、ああ……」と眉を寄せ、ポロポロと涙をこぼし始めた。

そんな、お母さんに他の娘二人が体を寄せている。

凄く良いシーンで、胸も温まるけれど、自分がちょっと場違いな気にもなる。

ちょっと、離れていた方がよいかな?

なんて思っていると、気持ちが落ち着いてきたのか、お母さんがわたしに視線を向けてきた。

「あのう……あなたは?」

わたしが答える前に、上の女の子が言う。

「お母様、この方がわたくし達を助けてくださったのです」

下の子も嬉しそうに言う。

「凄いの!

魔獣もやっつけたし、お母様の傷も治しちゃったの!」

「まあ、本当に!?」

お母さんは目を丸くしている。

まあ、わたしみたいな女の子――流石に信じられないよね。

下の子が「ピカァ! とかして凄かったの!」なんて一生懸命褒めてくれるから、なんだか恥ずかしくなっちゃった。

わたしがモジモジしてると、お母さんがにっこり微笑みながら「助けてくださって、ありがとうございます」と丁寧に頭を下げてくれた。

女の子達も、一緒にするからなんだかこそばゆくなって「大したこと無い」と手を振っておいた。