作品タイトル不明
ため池作りと雷魚君の料理!
「ねえねえ、おじいちゃん。
じょうろって分かる?
水を撒く道具なんだけど」
おじいちゃんは小首を捻る。
なので、白いモクモクを前世で見たじょうろ型にして、実際水も出して見せた。
素材は……。
前世のはプラスチックとかブリキ? だっけ……。
鉄は流石にさびが酷いよね。
あ、そういえば、銅のものも有ったんだっけ?
その辺りを説明すると、興味深げに見てきたおじいちゃんは作ってみると身振り手振りをしてくれた。
ありがとう!
え?
そのためには銅の精錬が必要?
そろそろ、足りなくなった?
そういえば、製鉄所とか精錬所とか作りたいって言ってたけど、どうなったの?
え?
やる事がいっぱいあるから、今は不要?
白いモクモクで出来るんだから、それで良い?
ま、まあ、一応出来るといえばそうだけど……。
結構な魔力を使うから大変ではあるんだよ?
必要な物だろう?
まあ、そうだね……。
銅の精錬だけでなく、製鉄の約束までさせられてしまった。
あとは……。
あ、水くみ水車!
あれは使えないかな?
こちらも説明をすると、おじいちゃん、考えてみると身振り手振りをしてくれた。
頼もしい!
ため池予定地で物作り妖精のおじいちゃんと話をしていると、近衛兵士妖精の白雪ちゃんを連れたイメルダちゃんが「お帰り」と言いながら近寄ってきた。
頭には麦わら帽子を被っている。
もっと、お嬢様らしい帽子を想像していたので、ちょっと驚いたけど、オーソドックスなものにも関わらず、イメルダちゃんが被ると、なんとなくおしゃれアイテムに見えるのが不思議だ。
イメルダちゃんの後から、いつも物作り妖精のおじいちゃんと一緒にいる物作り妖精さん達が付いてきている。
そんな皆に、今からため池を作る事を話す。
イメルダちゃんが「大丈夫? 疲れてないの?」と心配されたけど、運んでくれたのはケルちゃんだし、全然問題ない!
そのことを話しつつ「やれる時に、さっさとやっちゃおう!」と言うと「そうね」と頷いてくれた。
わたしは両手から出した白いモクモクを使い、下書きされた線の内側をサクサク掘っていく。
広さは縦横五メートルぐらいだ。
地面がなんだか柔らかいから、サクサク進んでいく。
イメルダちゃんが「これぐらいで」と言うので、白いモクモクを解除しつつ訊ねる。
「もう少し掘っても良いんじゃない?」
深さは大体、わたしの膝上辺りだ。
だけど、イメルダちゃんは首を横に振る。
「あんまり深くすると、シャーロットとかが落ちて溺れたらいけないでしょう?
取りあえずはこれぐらいで様子を見ましょう」
それは確かにそうだね。
持ってきた粘土を白いモクモクで捏ねてみる。
正直これであってるのかよく分からないけど、物作り妖精のおじいちゃんがやれというのでやっておく。
そして、それを地面から壁へとしっかり塗っていく。
前世で工事をしているおじさんがセメントを塗る時にヘラっぽいものを使っていたのを思い出したので、白いモクモクで同じような物を作って行う。
物作り妖精のおじいちゃんが”もっと厚く”と指示してくるので、言われたとおりにする。
次に、地面を固める。
これは、ワイン作りの時に白いモクモクで葡萄を潰した要領で行っていく。
壁部分もトントン固めていく。
これぐらいで大丈夫?
はいはい、水を流すための土管用に、少し凹ませるのね。
え?
二つ付けるの?
あ、あふれそうになった水を排水する用か。
まだ、土管が完成していないので、木材を代用して刺しておく。
土管を通す溝も作っておこうかな?
と思ったけど、空に夕焼け色が混ざり始めた。
わたしや物作り妖精のおじいちゃんはともかく、イメルダちゃんの体力が心配だ。
責任感の強い宰相様に、家の中にいて良いよ? といっても、言う事を聞いてくれ無さそうだしね。
「今日の所はここまでにしておこうか?」
と声を掛けると、イメルダちゃんは少し疲れが見える顔ながらも、キリっとした顔で「そうしましょう」と頷いてくれた。
家に戻ると、シャーロットちゃんが「お帰りなさい!」と嬉しそうに駆け寄ってきてくれる。
そして、わたしのお腹に抱きついてきた。
ふふふ、可愛い!
「ただいまぁ~」
と言いつつ、軽くハグをすると、一緒に移動し、手を洗う。
籠やら帽子を部屋に置いて少し考える。
雷魚君の味見をしてみようかな?
味を確認するって意味もあるし、毒を持っていたら大変だしね。
この辺りは、エルフのテュテュお姉さんに教わっている。
フェンリル一家にとって毒もスパイスぐらいの認識だったのだが、いくら何でも人間であるわたしが同じ認識では危ないと、しっかり仕込まれたのである。
なので、舌で舐めれば微かな毒でも感知できるようになった。
もっとも、 コカトリス(鶏蛇君) を始めとして、毒を持っていても美味しい魔獣は、無視して食べたりしているけどね。
シャーロットちゃんがケルちゃんの所に行くのを見送りつつ、冷凍室に移動する。
近衛兵士妖精君が運び入れてくれた冷凍雷魚君の一匹を掴むと、胴をぶち切りにする。
毒見用なので、幅は五センチぐらいにした。
それを持って、台所に移動する。
晩ご飯の用意をしているシルク婦人さんに声を掛けた。
「シルク婦人さん、川で魚っぽいのを捕ってきたんだけど」
シルク婦人さんはこちらに視線を向けると「見た」と言った。
「近衛兵士妖精君達に見せて貰ったの?」
と確認すると、頷いてみせる。
近衛兵士妖精君達、あらかじめ、料理をするシルク婦人さんにも見せて置いたんだ。
なかなか、気が回る男子達だ!
「巨大川蛇頭」
「え?
巨大川蛇頭(きょだいかわへびあたま) っていうの?」
シルク婦人さんはこくりと頷く。
有名な魚なのかな?
「美味しい?」と訊ねると、婦人さんは再度頷く。
おお!
美味しいんだ!
早速、持ってきた雷魚君を解凍する。
どんな料理法が美味しいのかな?
「焼いても美味しい?」
と訊ねると、シルク婦人さんはこくりと頷く。
そして、解凍しているぶつ切り雷魚君を見て、眉を寄せる。
「え?
何かマズかった?」
と訊ねると、端的に「今度から、全部」と言った。
切り方が変だから、今度から全部持って来るようにって事かな?
戦力外にされた感じがして、少々切ない。
などとやっている内に解凍できたので、焼いてみる事に。
白いモクモクで――あ、シルク婦人さんがやるのね。
はい、よろしくお願いします。
シルク婦人さんはぶつ切り雷魚君の皮の部分を手早く外し、さらに切りそろえる。
塩コショウを両面にすり込む。
綺麗な布で水気を取って、小麦粉をまぶす。
そして……。
あれ?
冷えたままのフライパンの上に菜種油を塗り、雷魚君の切り身を置いた。
「温めなくて良いの?」
と訊ねると、シルク婦人さんは「固くなる」と端的に言った。
あ、そういえばWeb小説でなんかそんな話を聞いたことがあるかも。
コールド……スタートだっけ?
うっすらとしか覚えてないけど。
そんなことを考えている内に、シルク婦人さんは雷魚君を両面焼き、さらに、バターを投入する。
うわぁ~バターの甘い香りと魚の香ばしい香りが混ざり合って、凄く美味しそうな匂い!