軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

新たなる住人が三頭(?)

初め、中型サイズの黒犬が三頭いるのかと思った。

だけど、違った。

一つの体に首が三つあるんだ。

ケルベロス?

小さいから、子供かな?

怪我をしているようで、所々が鮮血で染まっている。

首の内、二つはぐったりとしているが、真ん中の一つは気丈にも白狼君達に歯茎を見せて威嚇している。

う~ん、子供かぁ。

これも、余り良くないことだろうけど、子供を見ると助けたくなるんだよなぁ。

わたしはケルベロス君と白狼君の間に立つ。

そして、白狼君のリーダーらしき彼にマンティコアを指さしながら言う。

『あっちがあるんだから、この子は見逃してあげて』

白狼君は言わんとすることが分かったのか、素直にマンティコアの方に向かっていき、その足にかぶりつく。

わたしはケルベロス君の前にしゃがむと、「大丈夫?」と手を伸ばした。

真ん中の首にガブっと噛みつかれた。

……。

なんかの映画のシーンでこんなのがあった気がする。

もっとも、本当に痛くない。

弱ってるからか、まだ幼いからか、甘噛みぐらいだ。

わたしが逆の手で撫でてやると、力つきたかのように口を離し、ぐったりとする。

……ママも生け贄として殺されそうなわたしを助けてくれた。

だったら、わたしがこの子を助けても、良いかな?

左手に魔力を集めて、この子の体を活性化させ、治癒能力を上げる。

治癒魔法だ。

わたしが使う植物成長魔法は、これを応用したものとなる。

ケルベロス君の傷が見る見る塞がっていく。

しかし……。

しばらくすると、その速度が遅くなり、ケルベロス君の三つの首、その呼吸が荒くなる。

治癒魔法は新陳代謝を上げて傷を癒す魔法だ。

なので、魔法を受ける者の体力も少なからず減る。

瀕死の人間がこれを受けると、傷が塞がっても力尽きてしまうことがあるらしい。

ただ、対応策はある。

わたしは右手をケルベロス君の首筋に当てて、そちらからも魔力を流す。

体力回復魔法だ。

肉体的疲労を回復する。

わたしの魔力をケルベロス君の体力に変換するのだ。

それを治療魔法の新陳代謝への干渉に使う。

傷が見る見る塞がっていき、毛が禿げてしまった箇所が見えるぐらいしか残っていない。

だけど、ケルベロス君が苦しそうなのは変わらない。

あれ?

この子、毒にも犯されてるかな?

マンティコアの尻尾はサソリみたいになっていて、その先には毒がある。

実は八歳ぐらいの時に、不覚にも腕に刺されたことがあった。

あれは痛かった。

腕が三倍ぐらいに腫れ上がり、ろくに動かすことが出来なかった。

ママは明日には治るって笑っていたけど、三日ぐらいは引かなかったなぁ。

四日目には元に戻ったけど。

そういえば、一週間後に遊びに来たエルフのお姉さんが「普通の”人”なら即死よ!」とか絶叫しながら騒ぎだし、何やら恐ろしいほど不味い薬を飲まされたりしたなぁ。

……念のために、あの薬草を飲ませて上げた方がいいかな?

確か、生えている所が近くにあったような。

わたしはケルベロス君を担ぐと、記憶を頼りに駆ける。

あったあった!

何枚か抜くと、右手で作り出した白いモクモクで挟むように掴む。

そして、白いモクモクの中でゴリゴリと魔力を動かし、すりつぶす。

それを、左手で作った白いモクモク(茶碗型)の上に乗せて、そこに魔法の水を注ぐ。

これで良し。

わたしはケルベロス君の真ん中の首にそれを持って行く。

すると、臭いを嗅いだ真ん中の首君が嫌がった。

薬だから!

飲めば楽になるから!

え? 別の首に?

仕方がないので、他の首に視線を向ける。

意識がないようで、ぐったりと目を瞑っている。

まあ、どれが飲んでも同じだよね。

右側の首の口を、白いモクモクで開き、薬を注ぎ込んだ。

右側の首の目がかっと見開かれ、首を振りながら暴れる。

それを、中央の首が一鳴きして黙らせた。

力関係は中央が上なのかな?

ただ、残りを飲ませようとするも、右側の首は拒否する。

中央の首が言っても、これは聞かないようだ。

仕方がない。

次は左側の首に同様の方法で飲ませる。

右と同じく覚醒すると暴れる。

今回も、中央の首に黙らされた。

やっぱり、中央がリーダーなのかな?

わたしは白いモクモクの中の薬に目を落とした。

まだ、もう少し残っている。

視線をケルベロス君に向ける。

中央の首は澄ました顔で、左の首にさっさと飲め! とばかりに一鳴きした。

左右の首の視線は……中央に集まる。

まあ、公平にしないとね。

左右の首に押さえ込まれた中央の首、その口に薬を注いで上げた。

魚は手に入らなかったけど、ケルベロス君が我が 家(国) に来ることとなった。

新たなる仲間であるケルベロス君――やっぱりというか、揉めた。

中に入れると、例の悪役妖精が凄い剣幕で詰め寄ってきて、よく分からないことをギャアギャア喚きだしたのだ。

それに対して、ケルベロス君(中央)が目を尖らせて吠えるしで大変だった。

わたしとしては、ケルベロス君が悪役妖精を食べて手打ちでもよく、何やら叫ぶのに一生懸命すぎる奴を白いモクモク虫網で捕まえて、ケルベロス君に差し出そうとして、妖精メイドちゃん達に必死な形相で止められたりした。

だが、そんな騒動も妖精姫ちゃんの登場で終了する。

大樹から慌てて飛んできた妖精姫ちゃんが、吠えまくっているケルベロス君ににっこり微笑んだ。

途端、「キャウン!」と怯え始めたケルベロス君はわたしの膝裏に姿を隠すと、ついには体を小さく丸めてしまった。

次に、妖精姫ちゃんはわたしの虫網の中でギャアギャア叫びながらもがいていた悪役妖精のそばによると、にっこり微笑んだ。

あれだけ大言(推定)を吐いていた悪役妖精は、沈黙した。

よく見ると、体も表情もカチコチに硬直していた。

最後に、わたしの元に来て、上目遣い気味に瞳を潤ませた。

あざと可愛い!

だけど、そこが良い!

悪役妖精をアッサリ解放した。

そこまで終えた妖精姫ちゃんは、妖精ちゃん達を解散させた。

そして、悪役妖精の首根っこを掴んで連れて行く。

……。

足下に視線を向ける。

ケルベロス君の三つの首が、ガクガク震えながらわたしの足に絡みついている。

わたしは視線を妖精姫ちゃんに向ける。

あれ……?

ひょっとして、妖精姫ちゃんって強キャラ?

視線に気づいたのか、妖精姫ちゃんが振り向き、にっこり微笑んだ。

……まさかね。

あんなに可愛いのに、そんな事ってあり得ないよね。

妖精姫ちゃんは、可愛くて、一生懸命で、ちょっとあざとくって守ってあげたい、アイドルちゃんだもんね。

うんうん、気のせい気のせい!

――

ケルベロス君を家の中に入れて、ご飯と水をあげることにした。

余り食べていないのか、よく見ると肋が浮いていたからね。

お肉は生肉の方が好きかな? って思ったけど、弱っているみたいなのでとりあえず焼いてあげた。

そして、細かく切ったひとかけらを、手始めに真ん中の首に食べさせた。

揉めた。

激しく揉めた。

三つの首が噛みつきあったので、慌てて止めた。

この子らは、三つ同時に与えなくちゃ駄目のようだ。

白いモクモクを使い、三首、同じタイミングで食べさせる。

なかなか、面倒くさい子だなぁ。

次に、お風呂に入れる。

汚れが酷いので、実際のお風呂では無く、外で白いモクモクを浴槽型にしてお湯をため、そこに入れた。

ワシャワシャ。

ワシャワシャ。

……。

……ケルベロス君じゃなく、ケルベロスちゃんだった。

失礼しました。

初めは浸かるだけで水が黒くなっていたけど、石けんを使い何度も洗ってあげると綺麗でふさふさな毛並みになった。

初めのうちは嫌がってたケルベロスちゃんも、その完成にはまんざらでもなさそうな顔をしていた。

しかし、これ、三つの首にそれぞれ名前をつけないといけないのかな?

う~ん、考えておこう。