軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

困った男子だなぁ~

広々とした平原を、地面を蹴り駆ける。

荷車を引いてないから、結構な速度が出ていた。

そのはずなのに、白狼君達、普通に付いてくるなぁ。

……どれ、どこまで付いてこれるか試してみるか。

踏みしめる足に力を入れ、駆ける。

お、まだ行けるかな?

さらに加速――まだ?

加速、加速!

ビュンビュン速度が上がり、周りの景色があっという間に後ろに流れる。

走っている 弱(じゃく) 水牛君――そんな彼らを後ろから追い抜く。

凄く驚いた顔でこちらを見てきた。

ふふふ、遅い遅い!

久しぶりの疾走、気持ちいい!

とはいえ、まだまだ行けるけど、そろそろ減速しようかな?

後ろを見ると、流石というか 白狼君(リーダー) は何とか付いてきているけど、他の子達は遅れ始めている。

下手をしたら、 逸(はぐ) れる子も出てしまいそうだ。

ん?

前方に大きな魔獣を発見する。

あ、珍しい!

ティラノサウルス君だ!

見た目、前世の図鑑で見たティラノサウルス――その首を覆うように棘が生えている彼は、ママの洞窟近辺で、時々見かけていた。

ママより二回りは大きい体格に、その巨体にしては素早い身のこなしと巨体に相応しいパワーの持ち主で、なかなか格好いい魔獣ではある。

……まあ、巨体にしては幾らか素早い程度であり、巨体通り程度のパワーしか無い、中途半端な魔獣とも言える。

クマさんら強者には遠く及ばず、 ワイバーン(偽竜君) どころか、下手をすると草食の鹿さんにすら遅れを取る始末であった。

なので、彼らをママの洞窟近辺で見る事はほとんど無かった。

さらに、彼らにとって不幸な事があった。

それは、 大きい(クー) 兄ちゃんが彼らの肉が好物だってことだ。

特に、彼らのステーキが大好きで、見つけたら喜々として追いかけ回していた。

そんな彼らのお肉、よく焼かされたなぁ。

まあ、美味しいと言えば、美味しいんだよね。

とにかく、堅いのを除けばだけど……。

何というか、極上の赤身をゴムより堅くした物というのが正しいか。

あれは流石にシャーロットちゃんにも食べさせられないかなぁ~

などと考えていると、後ろにいる 白狼君(リーダー) が「がうがう!」と吠えた。

え?

あれが食べたいの?

いや、別に構わないけどね。

何やら、偉そうに「ぐがぁ~ごぉぉ!」とか吠えているティラノサウルス君の、その首に駆ける勢いのまま蹴りをするのだった。

――

林に到着すると、 白狼君(リーダー) はもう一頭と共に、急いで帰っていった。

まあ、当然というか、あっさり狩れたティラノサウルス君は、ミスリルトカゲ君の代わりとして白狼君達に上げた。

一応、『ティラノサウルス君、凄く堅いよ』とがうがう教えてあげたけど、”問題ありません、主様!”というようにキラキラした目で「がうがう」吠えていた。

ただ、固さより前回同様、ロック鳥さんに奪われるので無いかと、過度なぐらいに警戒をしていた。

なので、一応、森の中まで運んであげた。

木々があれば上からかっさらうのも難しいだろうしね。

その手間賃代わりに一抱え分のお肉を頂いた。

ひょっとしたら、シルク婦人さんならこの固さを何とかしてくれるんでは無いか――そう期待しての事だ。

固さを抜きにしたら、美味しい肉だからね。

カチカチに凍らせた上に、何かあった時用に入れてあった大きい葉っぱや布で包み、籠の中に入れてある。

このまま、北東に行っても問題ないんだけど、一応、冒険者組合に行くため、町に向かう。

門の前にいた門番のジェームズさんに挨拶をしつつ中に入り、狩りに出るという巨熊の団に会ったので軽く雑談をした後、別れた。

冒険者組合まで歩いていると、その入り口の前に、なぜだか人垣が出来ていた。

冒険者の皆は何故か困った顔をしていて、「どうしたの?」と訊ねると、「いや、あれがな」と指さし教えてくれた。

入り口前に大型犬が、何故かあたかも仁王立ちをするかのように立ち塞がっていた。

キズナシ君だった。

その隣で、魔獣使いのエイダンさんが宥めるように声をかけている。

いや、何をしてるの?

わたしに気づいたキズナシ君が何やら”やっと来たか!”と言うように「がうぅ~がうがう!」と吠えた。

え?

わたしを待ってたの?

エイダンさんに視線を向けると、困った顔をした魔獣使いさんはこのように言う。

「ごめん、なんか キズナシ(こいつ) 、君の所の子に早く会いたいみたいで……」

えぇ~

ケルちゃんに会いたいから、こんな所で張っているの?

キズナシ君は”別に、会いたいとかじゃなく、先輩として、色々教えてやろうと~”と言うように、がうがう言っているけど、絶対、 ケルちゃん(女の子) を一目見ようと押しかけてきているよねぇ~

男子って奴は!

「まだ、魔道具が届いていないから、来れないよ?」

と頭を撫でてあげると、がっかりしたように項垂れてしまった。

そして、エイダンさんに「ほら、言った通りだろう? 皆の邪魔になるから、帰るぞ」と促され、とぼとぼ帰って行く。

いや、どんだけ楽しみにしてるのよ!

まあ、うちのケルちゃんは可愛いから、気持ちは分からなくも無いけどね!

冒険者の皆から「よく、あんな恐ろしい魔獣の頭を撫でられるな!」となにやら賞賛されつつ、組合に入る。

わたしに気づいた受付嬢のハルベラさんが、笑顔で手招きをしてくるので「こんにちは」と近づく。

「こんにちは、サリーちゃん。

キズナシ君は帰った?」

「うん、ケルちゃんはまだ来れないって話したら、項垂れて帰って行った」

「まあ、ふふふ!

本当に期待してるのね」

とハルベラさんは可笑しそうに笑う。

そして、続ける。

「センちゃん――だっけ、その子達の分はまだだけど、スライムの為の魔道具は明日ぐらいには届きそうよ」

「そうなの?」

正直、スライムのルルリン用の物は、そんなにすぐには必要ないんだけど……。

そんな事を思っている中、ハルベラさんの話は続く。

「スライムの様な首が無い魔獣でも大丈夫なように、籠の蓋に付ける形のものなの。

なので、首輪の時と同じく、籠の部分は組合で作ってもいいし、サリーちゃんがどこか別の所に頼んでも良いわよ。

勿論、作った籠をあらかじめ、組合に見せに来て貰う必要はあるけど」

「う~ん、お願いしようかな?」

物作り妖精のおじいちゃんだったらきちんとした物を作ってくれるだろうけど、作り直しって言われたら面倒くさいしね。

ハルベラさんに「どんな感じがいい?」と訊ねられたので「持ち運びやすいのがいいなぁ」と少し考える。

そして、思いつく。

「ねえ、背負う形に作れない?」

「大丈夫よ。

ルルリンちゃんの大きさは、これぐらいだったわよね。

出来合いの物に手直しをすれば良いと思うから、多分、明後日には出来るわ」

と言いつつ、ハルベラさんは木の板に羽ペンを走らせた。

その後、怪我人の治療をお願いされたので、ぱぱっと回復させた。

その時、組合長のアーロンさんを見かけたので、「北東の様子を見に行ってくる」とこっそり話す。

「大丈夫だとは思うが、気をつけていって来いよ」

「うん。

無理はしない」

そして、組合の建物から出ると、門の外に向かった。