軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

大蟻さんの話を聞く。

エルフのテュテュお姉さんと共に、食料庫に移動する。

葡萄に関しては、お酒用にするかどうかは別にして、いくらか育てた。

久しぶりに、食べたいしね。

テュテュお姉さんは「お酒はほら、健康に良いのよ! 長生きするのよ!」などと言っているが、スルーした。

エルフがさらに長生きをするためとか、どうなんだろう?

いや、もちろん、テュテュお姉さんには長く生きて欲しいけど、なんというか、微妙な気持ちになるんだよねぇ。

人数分収穫した葡萄と長ネギを左手から出した白いモクモク箱に入れ、運ぶ。

食料庫に入ると、イメルダちゃんがいた。

暖房器具のない食料庫は冷えるからかコートを羽織っていて、メモを片手に何か確認している。

そのそばには、妖精メイドの黒バラちゃんがお手伝いをしているようだった。

「イメルダちゃん、どうしたの?」

と訊ねると、こちらに視線を向けつつ答えてくれる。

「テュテュさんがいらっしゃったでしょう?

まあ、大丈夫だとは思うけど、念のために在庫を確認しているの」

「そうなんだ!」

流石、宰相様!

細やかな部分にも抜かりない!

エルフのテュテュお姉さんは、食料庫の中をぐるりと見渡しながら、少々、呆れたように言う。

「それにしても、人数に対して多すぎない?

下手すると、夏までこもっていられそうね」

まあ、そうなんだけどね。

「初めての冬ごもりって事もあったし、町で食糧問題があったりして、念のために多めに準備しておいたの」

「食糧問題?」

とテュテュお姉さんが訝しげに訊ねてくるので、説明する。

聞き終えたテュテュお姉さんは、少し困った顔をしながら「なるほどねぇ」と言いつつ、棚に視線を走らせる。

「あら?

砂糖?」

目線の先には大きめの壷があり、イメルダちゃんの字で”砂糖”とかかれた木札が置かれていた。

「そうだよ」と答えると、テュテュお姉さんは苦笑する。

「あなたのお母さん、結局、 砂糖大根(てんさい) の種を持たせたのね」

「違うよ!

蟻さんが持ってきてくれたの」

「蟻さん?」

よく分からないと言う顔をしたので、大蟻さんの事を説明する。

エルフのテュテュお姉さんは少し呆れたように言う。

「大蟻相手に、育てた果物と種を交換ねぇ~

凄いこと考えるわね」

「いや、考えるというか、向こうから求められたというか……」

あれ、最初は蟻さんが落とした林檎――その種から育てた物を上げたわけだから、わたしが始めたことになるのかな?

まあ、いいけど。

「結構良い種を持ってきてくれるから、重宝してるよ」

「そうなのね……。

確かに、彼らは巣を地下深く、そして、広大なほど広げているから、色んな土地から種をもってくるだろうし、良い手だとは思うけど……」

「蟻さんの巣って、そんなに大きいの?」

「海を越えた大陸まで広がっているって話よ」

「海を越えて!?」

この辺りの地理とかよく分からないけど、とにかく凄そうだという事は分かった。

イメルダちゃんも「凄いですね」と目を丸くしているし、間違いないだろう。

エルフのテュテュお姉さんが続ける。

「まあ、あなたなら大丈夫だと思うけど、気を付けなさいね。

彼ら、したたかに自分たちの利益を求めるところがあるから」

「そうなの?」と訊ねつつも、そんな感じがするなぁ~と思ってしまう自分がいる。

エルフのテュテュお姉さんは頷きつつ言う。

「他者を使うのにも躊躇が無いというか……。

ある農家のおじいさんなんか、怪我をした大蟻を助けたんだけど……。

そのお礼にか、大蟻の仲間達が畑に水を撒いたり世話をしてくれる様になったらしいの。

そんな様子に、最初は魔獣と警戒していた村人達も、次第にほのぼのとした心で見守るようになっていたんだけど……。

ある時、いつの間にか収穫間近の麦や野菜が根こそぎ奪われていたらしいの。

その農家のおじいさんの所だけでなく、村中のほとんどがね」

「うわぁ~」

「それは……酷いですね」

わたしとイメルダちゃんが顔をしかめながらの感想に、エルフのテュテュお姉さんは苦笑する。

「そうよね。

唯一、助かったのは、人との交流をほとんどしない、他人をいっさい信じようとしない、嫌われ者のおじいさんだけだったらしいわ。

それを聞いて、”現実はお話より過酷”だと思ったものよ」

”他者を信じてはいけない”という教訓しか得られないなんて、嫌なお話だ。

「まあ、何万匹来ようがサリーの敵ではないだろうし、そもそも、ここには結界があるから、大丈夫だとは思うけど……。

油断しないようにね。

大蟻は、自分たちのためならどんな事でもやりかねない所があるから」

「うん、そうする」

わたしが頷くと、イメルダちゃんが胸を張りながら言う。

「大丈夫です!

わたしがいるうちは油断もしませんし、サリーさんにさせません!」

そんなイメルダちゃんに、エルフのテュテュお姉さんは口元をほころばせる。

「あら、なかなか頼りになる子ね」

テュテュお姉さんの褒め言葉に、イメルダちゃんは顔を赤めながら「いえ、それほどでも」とか照れている。

可愛い!

「凄く頼りになって、しかも愛らしい、我が国の宰相様なんだよ!」

とわたしが自慢をすると、エルフのテュテュお姉さんは「宰相?」と不思議そうにする。

あれ?

テュテュお姉さん、独り立ちの試験のこと、知らないのかな?

「わたし、ママからここに国を作るように言われたんだよ」

「え?

国を?」

「うん」

やはり知らなかったようで、テュテュお姉さんは「え? そんな話だったっけ?」と呟きながら、小首を捻っている。

あ、正確には支配するようにだった。

でも、似たようなものだよね。

「だから、イメルダちゃんを宰相に迎えて、国づくりの真っ最中なの。

まあ、もちろん、本物ほど凄い感じには無理だけど、それなりのものにはしたいなぁ」

目標としては、ちょっとした村ぐらいに、かな?

イメルダちゃんも「春になったら、頑張らないとね!」と気合い十分だ!

不思議そうにしていたエルフのテュテュお姉さんだったけど「結局、この家が完成する前にシンホンへ旅に出ちゃったから、その後に話が変わったのかもしれないわね」といって納得していた。

そして、何故か目を輝かせながら言う。

「それよりも、サリー!

砂糖があるということは、何か美味しいお菓子とか、作ったりしてるの?」

「お菓子?

今のところ、ジャムとかぐらいかな?

あ、揚げパンは作ったけど……」

「わたし、何か変わったものが食べたいわ!」

「変わったもの……」

実はお菓子に関して、色々、作りたい物がある。

バターも完成させたしね。

ただ……。

「テュテュお姉さんは大人だから、甘い物は食べないんじゃないの?」

「……え?

どういうこと?」

よく分からないと言った顔で、聞き返してくる。

いやいや、何故?

「甘い物は子供が食べるもので、大人は食べないでしょう?」

「……はぁ?

待って!

ちょっと待って!

どこからそんな話、湧いてきたの!?」

「町の冒険者のお兄さんが言ってたの。

それに、わたしも思うよ!

大人が甘ったるい物を食べるなんて格好悪いって!

だから、我が国の国法でも禁止するつもりなの」

国王として素晴らしい発案をしたにも関わらず、何故かエルフのテュテュお姉さんは「あぁ~! あなた達は似たもの親子なのね!」と頭を抱える。

いやまあ、ママとわたしが似てるのは当たり前の話だけどね!

イメルダちゃんが何故か済まなそうに、「うちの母も、正そうとしているのですが、なかなか難しく……」などと言っている。

……いや、ヴェロニカお母さんは自分を子供と強弁してるだけだけどね。

わたし、あの人に関しては正直、大人としての振る舞いを求めるのを諦めているからね。

「とにかく、テュテュお姉さんも格好いい大人として、生きて貰いたいの!」

と、大好きなお姉さんへの愛のある提言に対して、テュテュお姉さんは「待ちなさい、ちょっと話し合いましょう!」とキリっとした顔で制止するように右手を前に出す。

えぇ~

「サリー、良い?

あなたが思う、その、甘い物を食べてはいけない大人とは年齢的に幾つのことなの?」

「ん?」

幾つだろう?

結婚してるぐらいかな?

前世で言うと、二十五歳ぐらい?

今世のこの世界だともう少し若いかな?

「二十歳ぐらい?」

そのように言うと、エルフのテュテュお姉さんは何故かニヤリと笑った。

そして、胸を張りながら言う。

「なら大丈夫ね!

エルフはなんといっても、”永遠の十六歳”って言われてるんだから!」

「いやいやいや!

おかしいよね!」

なに、前世の声優みたいな事を言ってるの!?

イメルダちゃんが少し遠い目をしながら「そういえば、そんな風にも言われるわね……」とか言っているから、本当の事なんだろうけど……。

「そもそも、お姉さん……。

今、幾つなの?」

「十六歳!」

「いや――」

エルフのテュテュお姉さん、両手を広げて力説する。

「よく見て!

十六歳!」

「……」

いやまあ、エルフのテュテュお姉さん、背は高いけど若々しいから、十六歳に見えなくもないけど……。

ママの昔の話にしょっちゅう出てくるから、下手をすると百年単位で生きてるよね?

それで良いの?

それに……。

「そうすると、お酒は飲めないんだけど大丈夫?」

そう訊ねると、さらに笑みを深くしながら頷く。

「よく聞きなさい!

多くの国で、飲酒が許されるのは十五歳からなの!

わたしは十六歳!

問題ないわ!」

……いや、そんな、キラキラした目で言われても。

しかも、「ねっ! いいでしょう! ねっ!」とか言いつつ、抱きついてくる。

う~ん、三児の母だけでなく、数百歳(推定)のエルフまでおかしくさせるのか!

甘味、恐るべし!

「もう、しょうがないなぁ」

というと、嬉しそうに「ありがとう!」と頬ずりしてくるテュテュお姉さんは、なんか可愛かった。

そんな風に思っていると、エルフのテュテュお姉さんは体を離しながら聞いてくる。

「因みになんだけど、あなたのお母さんは大人よね。

だったら、甘い物は送らないの?」

「うん」

「そう、まあ、しょうが無いわね」

「あ、でも一応、成長を示すって事で、ちょこっとは送ってるけど」

あんまり送りすぎると、ママは多分、困ってしまうだろうし。

それに対して、テュテュお姉さんはうんうん頷く。

「ならまあ、問題ないかしら。

それより、どんな甘い物を作るか、考えているの?」

「ん?

考えているけど……。

って、いやいや、まずは今晩のごはんを決めなくちゃ!」

あんまり遅くなると、シルク婦人さんに怒られちゃう!