作品タイトル不明
何事も無い、いつもの一日1
朝、起きた!
……温もりが足りない。
ベッドから上半身を起こすも、いつも、胸とか腰にへばりついてきていたシャーロットちゃんがいない。
視線をベッドの上に向けると、ケルちゃんぬいぐるみに抱きつき、スヤスヤと眠る妹ちゃんの姿が見えた。
くっ!
望んだこととはいえ、寂しい!
さらに、視線を奥に向けると、フェンリルぬいぐるみに抱きついて眠るイメルダちゃんの姿が!
昨日の夜はあんなに「わたくしには必要ないわよ!」などと言っていたのに、フェンリルぬいぐるみに顔を押し当てて眠るその表情は、どこか、嬉しそうに見える。
可愛い!
ベッドからそっと抜け出し、寝間着から着替える。
そして、部屋から出るとここ最近お馴染みになった、ケルちゃんダイビングを受ける!
でも、その動き、すでに見切った!
「うおりゃ!」と飛びついてきたケルちゃんの勢いを受け流し、ゴロンと転がす!
と、ケルちゃんの背中が壁にぶつかり、ゴンッ! っと音を立てる。
あ、しまった……。
台所から顔をのぞかせたシルク婦人さんに、無表情のままじっと見つめられてしまった。
決まりが悪く、謝罪をする。
「あ、あのう……。
ごめんなさい……」
その瞬間、後ろからモコモコしたものにのしかかられる。
「あ!?
こら!」
わたしが謝っているのに、ケルちゃんが嬉しそうに「がうがう!」いいながら飛びついてきたのだ。
「待った、待った!」とケルちゃんを宥めていると、シルク婦人さんに冷たく「外で」と言われてしまった。
暴れるなら外でってことね!
ごめんなさい!
ケルちゃんを外に出してあげようと玄関から出る。
吹雪(ふぶ) くってほどではないにしても、大粒の雪が降り注いでいる。
う~ん。
「今日はやめとこうね」
って言うも、ケルちゃん、お構いなしに飛び出ていった。
えぇ~
ま、まあ、結界から出なければ大丈夫かな?
家の中に戻ると、妖精メイドのサクラちゃんが飛んできたので「今日もがんばろう!」と拳を突き上げたら、ニコニコ顔で倣ってくれた。
ほんと、可愛すぎるんだけど!?
ほんわかしていると、ゴロゴロルームから、寝間着にカーディガン姿のヴェロニカお母さんが顔を出した。
「サリーちゃんおはよう」
ニコニコ顔のヴェロニカお母さんに「うん、おはよう!」と返す。
「大丈夫?」と問われるので「大丈夫だよ!」と返した。
昨日のハリソン衛兵長さんの件の一部始終は、ヴェロニカお母さんにだけ話した。
そのことで、ちょっと心配をかけてしまったようだ。
ちなみに、あの結末は妹ちゃん達にはキツすぎるので、無事、大麦を配れたことのみ伝えておいた。
「今日は一日、妖精ちゃん達用の揚げパンを作らないといけないから、そちらの方が大変!」
と話しつつ、台所に向かう。
籠と壷を受け取り、降りてきたスライムのルルリンを肩に乗せて、飼育小屋に移動する。
生意気ヒヨコが突っかかってきたけど軽く 往(い) なし、外に出たそうな山羊さん夫妻に「今日は雪だから、またね」と宥めたりしつつ、卵と乳を頂く。
戻ってから、シルク婦人さんにそれらを渡していると、妖精ちゃんの集団が飛んできた。
ん?
ああ、揚げパンね。
朝ご飯の後で準備するから。
え?
ジャム?
はいはい、用意するから。
そんな風に会話をしつつ、食料庫に向かう。
とりあえずは、朝ご飯分のみを取り出す。
最近、ケルちゃんの食べる量が増えてきているから、お肉の減りが凄いなぁ。
まあ、今回の冬籠もり分でいえば、まだまだ大丈夫だとは思うけど、ちょっと追加で補充することも考えた方がよいかな?
狩りかな?
狩りをするかな!?
冬だから相手は限られるけど、全くいないわけではない。
やってやろうか! などと気合いを入れていると、視線を感じる。
ん?
そちらを見ると、妖精姫ちゃんがわたしの視線の高さで空中 浮揚(ふよう) をしつつ、こちらをじっと見つめていた。
「どうしたの?」
と訊ねると、にっこりとしつつ首を横に振る。
ん?
揚げパンには砂糖をいっぱいかけて欲しい?
しょうがない姫ちゃんだなぁ。
指で姫ちゃんの頬を優しく突っつくと、妖精姫ちゃんはわたしの方に飛んで来て、頭に触った。
え?
頭を撫でているのかな?
わたしの疑問を解消せず、妖精姫ちゃんはすぐに離れて飛んでいってしまう。
何だったんだろう?
食料庫から戻り、シルク婦人さんに食材を渡していると、寝間着から着替えたイメルダちゃんがやってきた。
イメルダちゃんに「フェンリルぬいぐるみの抱き心地はどうだった?」ってからかい半分で訊ねたら、口を尖らせつつも、ちょっと恥ずかしそうに「柔らかくて良かったわ」と答えてくれた。
何、この愛らしいの権化は!?
「可愛すぎる!」と抱きついたら「ひゃ!?」と声を上げた後「だから、勝手に抱きつかないって言ってるでしょう!」とぺちっ! と頬を叩かれた。
「イメルダちゃんの愛らしさが、わたしを狂わせるの!」
「訳の分からないことを、大声で言わない!」
そんな事をやっていると、シャーロットちゃんが妖精メイドのウメちゃんと共にやってくる。
「サリーお姉さまぁ~
今日もお出かけする?」
「今日はしないかな?
揚げパンを作んないといけないし、雪も降ってるし」
雪が降っていなければ、揚げパンを作り終えた後、町の様子を覗きに行こうかなと思っていたけど……。
天候が崩れたら困るしね。
いや、別に多少吹雪いていても、問題ないと言えばそうなんだけど、絶対に心配かけることになるからね。
自粛自粛ってことで。
わたしの返答に、シャーロットちゃんは嬉しそうにする。
「じゃあ、今日はサリーお姉さまと遊ぶ!」
「ふふふ、そうだね。
揚げパンを作り終えたら、遊ぼうか?」
「うん!」
揚げパンを摘みながら出来るゲーム、何かあったかな?
あ、ゲームと言えば、前世知識チートお約束のあれが有るじゃない!
リバーシ!
売れまくって億万長者とかになれちゃったりして!
ちょっと、物作り妖精のおじいちゃんに見本として作って貰おう!
朝ご飯を食べた後、洗濯を手早く終えて、揚げパンづくりの準備を始める!
中央の部屋(食堂) にて沢山の小麦やら塩やらを準備していると、イメルダちゃんが近づいてくる。
「わたくしも、手伝おうか?」
「ん?
そうだなぁ……」
パンづくりはわたしの白いモクモクを使う予定だからお願いできないし、揚げる作業も慣れていない女の子がするのはちょっと怖いかな?
あ、でも、小麦とかの材料を計るのを手伝って貰うのも有りかな?
基本的にわたし、分量は白いモクモクの器から何となくで計っている。
ただ、冬ごもり直前頃、シルク婦人さんにわたしが作るパンの作り方などを説明した時に、必要だろうということでそれと同じぐらいの木製コップを物作り妖精のおじいちゃんに作って貰ってたのだ。
それを使って計量をしてくれれば、わたしは別の作業をすることが出来る。
そのことを言うと、イメルダちゃんは「任せておいて!」と力強く頷いてくれた。