軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

初めての掘り

ギルドの建物で借りてきたスコップを手に、ダンジョンへ入る。

ほかに借りたのは、土を入れる土嚢袋だ。

ほかにもダンジョンへと入ろうという人はいるが、誰もがモンスターと戦うための装備を整えている中でも、僕の姿はかなり変だと思う。

剣も防具も持たず、スコップ一本。

どう見ても場違いだ。

すれ違う人などが「え、なにこいつ?」という顔で視線を送ってくる。

が、そんな目線もさほど気にはならない。

なぜなら、昨日一昨日も似たようなものだったからだ。

手袋をつけただけの普通の服を着てダンジョンに入るのは、探索者からすればおかしな姿に見えるらしく、実際に何度か話しかけられたこともある。

そんなこんなで、他人の視線を気にせずにダンジョンへと入り、昨日まで殴っていた壁の位置までやってきた。

今日はこれまでと違ってダンジョンの壁を殴らずに掘ることが目的だ。

大きなスコップは全体が金属でできており、しっかりしている。

作業中に壊して弁償、なんて心配もせずに済みそうだ。

「よっと」

記念すべき最初の一掘りは特に思い入れもなく行われた。

平たく広がり、先端部分が少し薄く鋭さが付いたスコップの先を壁へと押し当てて力を入れる。

ダンジョンの土を回収するのに、壁を掘ることにしたのは、単純にそのほうが掘りやすそうだと思ったからだ。

多くの人やモンスターが通ることとなるダンジョンの地面、あるいは床は硬い。

それよりは、そこまで固められていなさそうな土壁のほうが掘りやすいだろうという考えだった。

ガキン、と鈍い音が響いた。

想像していた“ザクッ”ではない。

思っていた以上に壁は硬かった。

スコップの先は壁にめり込んで刺さるものの、手の力だけですっと土をかき出して回収するようなことはできそうにもない。

さっきは手の力だけでスコップの先端を壁に押し当てたが、それでは全然力が足りなかったみたいだ。

「よいしょ」

そこで、壁に刺さったスコップの平らな面で先端とは反対側の少し厚みがある部分に足を当てて体重をかけた。

僕はそこまで体重が重たいわけではないのだけれど、それでも先っぽがめり込んでいたスコップが体重をかけたことでより深く刺さる。

そんなふうに何度も足裏をスコップに押し当てながら、乗り上げるように体重をかけてスコップを推し進めていく。

「これは思ってたよりも大変かもなぁ」

正直、穴掘りをなめていたかもしれない。

適当にしばらくやれば土なんて回収できると思っていた。

が、壁にスコップをめり込ませて、さらに、てこの原理で土をかき出す作業は思いのほか重労働だった。

それを何度も繰り返さなければ軍手すら買えないということに今さらながら気づいた。

どうしよう。

やめるなら早いうちだぞ、という考えが頭によぎる。

だけど、すぐにやめたらダンジョンの入り口にいる監視員のおじさんに笑われてしまいそうだ。

そんなことが頭に浮かぶ。

なので、さすがにそれはできない。

僕は意地でも土を集めてお金に変えてやろうと、スコップを握りなおした。

たとえ今日一日で袋一つ分しか集まらなくてもいい。

僕は、掘る。