軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

体の一部

平日の早朝からダンジョンへと向かい、マイスコップで土を掘る。

本当に、自分でもなにがそんなに楽しいのかと思うくらいハマっている。

今日も 超集中(ゾーン) をしながら、ひたすらに掘り続けた。

体の声を聞きながら、スコップを操って土を掘る。

これまでは、肉体の力を最大限引き出すにはどう動くべきかを考えながら修正していたい。

ショート動画で見た人の動きはあくまでも参考にするだけで、実際に掘るのは僕の肉体だ。

大人の動きを子どもの僕がそのまま真似しても完璧な動きにはならない。

だからこそ、今の自分の体に合った動きを模索し続ける。

だが、その中で不満も感じていた。

スコップを振り下ろして突き立てるときに、もう少しだけでも力が入れられたら。

あるいは、スコップに足をかけて、てこの原理で掘り起こすときに、もう少し足に力を入れられたら。

今の肉体で一番いい動きができていると感じていても、それでもさらにパワーが欲しくなる。

そういうもどかしさが時々出てきた。

きっと、動きの最適化が進んできたからじゃないだろうか。

今の肉体で一番いいであろう動きができているからこそ、もっと力があればさらにいい働きができるのにと高望みをしてしまっている。

どうにかできないものだろうか。

力が付くのを待つしかないのだろうか。

僕はまだまだ成長中だ。

毎日体を動かして、よくご飯を食べている。

だから、きっとそのうちもっと筋肉がついてパワーを出せる体になっているはず。

だが、それではあまりにも気の長い話になってしまう。

もっと、短期間で力を出すことはできないのだろうか。

いや、できるはずだ。

その方法とは、やはり魔力の扱いにあると思う。

魔力は、お腹のあたりに生まれるポカポカしたエネルギーだ。

それを全身に広げてやるだけでも 肉体強化(フィジカルブースト) ができるようになった。

そして、さらにその魔力を体外に漏れ出ないようにすることで 超集中(ゾーン) の状態になり、肉体能力もそれ以前より上がったと思う。

ならば、次のステップにいけるんじゃないだろうか。

どういう原理かは全く分からないけれど、スーちゃんに体外から漏れ出た魔力を食べてもらうことが僕の体にとっては非常に大きな影響を与えている。

キーワードは魔力の漏出を防ぐこと。

肉体を包み込むようにして維持することで、その肉体の力を引き出すことができるということ。

であれば、それは体だけに留まらないのではないだろうか。

今、僕は魔力が漏出しないように 超集中(ゾーン) を行っている。

それでも、実際には魔力は漏れ出ている。

矛盾しているようであるけれどそうじゃない。

実は今、僕は体外に魔力を送り出しているからだ。

マイスコップだ。

僕は以前から採掘力向上のために、ダンジョン産の鉄を使用したマイスコップに魔力を送り込んでいた。

そうすることで、実際に採掘力が上がり、土を掘れる量は変わっている。

それは間違いなく、成果が出ていると言えるだろう。

もう一歩進むためには、そこにもさらに気を配るべきではないかと考えた。

これまでは、僕の手のひらから魔力をスコップへと送り込み、それで満足していた。

しかし、それでは足りない気がする。

送り込んだ魔力をスコップから漏らさない。

それだけでも足りないように思う。

イメージだ。

もっと最高の状態をイメージしよう。

そうだ。

僕の持つスコップは土を掘るための道具だけれど、ただの道具なんかじゃない。

僕の手足となって働く、僕の体の一部じゃないか。

ギルド建物で借りた他人のスコップなんかじゃなく、貯金をはたいて買った大切な僕の一部なのだ。

こいつは僕の体の一部であり、僕の手とつながっている。

なら、手のひらから魔力を送るだけで終わるのはおかしいはずだ。

繋がっていなければならない。

僕の体とスコップは僕の魔力で一体となっていなければおかしい。

だって、これは僕の一部なのだから。

僕の手から魔力が流れスコップへと向かうのはこれまでと同じだけれど、その流れは一方向ではなく循環する。

手から流れた魔力は乱れたり途絶えたりすることなくスコップの柄から刃先の金属部分を巡り、そして一定の濃度・密度のまま僕の肉体へと戻り、目減りすることもない。

まるで、自分の腕がそのまま伸びたみたいに、スコップの先の感触が伝わってくる。

そんなイメージをする。

これまでの 超集中(ゾーン) をスコップも込みでイメージして行う。

僕はそんなイメージをしながら魔力を操りつつ、土を掘った。

明らかに、これまでの倍以上のペースで穴が広がっていく。

その結果、平日の朝という短時間ながら、これまで以上の土を掘ることができた。

もちろん、その土を通学前にすべてギルド建物に搬入するのに苦労することとなった。

……やりすぎたかもしれない、と少しだけ後悔したけれど、充実感を感じながら学校に向かうことができたのだった。