軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

きれいな体

「スーちゃん、隠れてないで出てきて」

浴室から姿を消したスーちゃん。

慌てて湯船から飛び出して体ごとぐるっと一周回して見回してもスーちゃんの姿が見えない。

もしかして、窓から外に出てしまったんだろうか。

そう思って浴室の窓を見ても開いていない。

どこにいったのか、まさかスーちゃんがいなくなっちゃったのかとひどく不安になる。

ひょっとしたら、このお風呂場にはスーちゃんにとっての危険物があったのではないか?

例えば浴室のカビ殺しの洗剤なんかがスライムにとっては劇薬で、まるで塩をかけたナメクジみたいにしぼんしまったらどうしよう。

僕が心配のあまり想像を膨らませていた時。

足元で変化が訪れた。

浴室の床にある水が流れる排水管の蓋。

その蓋の隙間から、スーちゃんがヌルっと出てきたのだ。

「だ、大丈夫か、スーちゃん? もしかして、間違って水に流されて一緒に排水されたのか?」

排水管から出てきたスーちゃんを慌てて掴み上げ、様子を観察する。

だが、僕の質問にスーちゃんは肯定するような動きはなにもしない。

ということは、事故で流されてしまったというわけじゃないってことかな?

「確認なんだけど、スーちゃんは自分からこの排水の管の中に入って行ったの?」

僕がそう聞くとスーちゃんがフルフルと震える。

答えはイエスということだ。

「それは僕がお風呂場の掃除を頼んだから?」

再び、スーちゃんが震える。

やはりそうか。

僕にとってはお風呂掃除は浴室内だけのことだった。

だが、スライムのスーちゃんにしてみれば水が流れる隙間のある蓋がしてあるだけの配管は、お風呂場とつながっている一つの空間という認識になるのかもしれない。

気になったので、その蓋を開けて排水管の中を見る。

今までまじまじと見たことはないけれど、こういうのって多分管の中は汚れが側面についているものなんじゃないだろうか。

だが、見える範囲でそういった汚れは一つもない。

おそらくだけど、見えない範囲までもがスーちゃんによってゴミ・汚れを食べられてきれいになっているんじゃないだろうか。

ちょっと気になったので、手でつかんでいるスーちゃんのにおいを嗅ぐ。

……よかった。

どぶ臭いにおいがしたらどうしようかと思ったけれど、全然そういうにおいはない。

スーちゃんの体を目視で確認しても汚れは一切なく、ついさっきボディーソープで体を洗ってあげた後となにも変わらない状態に思える。

それはそれで、洗った意味があるのかということにもなるのだが、いずれにせよスーちゃんの体は汚れひとつない清潔なものだとわかる。

「よかった。スーちゃんが水と一緒に流されたのかと思ったよ。無事でなにより。でもさ、スーちゃん。この管の中って汚れがすごかったんじゃないの? もしそういう汚いものを食べるのがいやだったらわざわざ食べなくてもいいし、僕に教えてほしいな」

僕がスーちゃんの体を目線の高さに持ったまま、そう告げる。

だが、スーちゃんは汚れを食べるのを嫌だという反応を示さなかった。

僕の勘違いじゃなければ、スーちゃんにとってはたいていのものは食べられるし、嫌いではないのだろう。

カビ殺しの洗剤すら食べるのを拒否したりはせず、実際に試すときれいに食べてしまっていた。

なら、もっと頼んじゃうかな?

家の掃除はスーちゃんに頼むと劇的にきれいになりすぎるので、やりすぎ注意だけど、配管内であればどれだけ汚れを食べても誰も気が付かないだろう。

それにいくら汚い汚れを食べても清潔な体を維持できるのであれば、スーちゃんにもトイレ掃除を頼めるかもしれない。

実はちょっとそのことを考えていたのだけれど、嫌がらないかなとか、汚れが付いたままだとちょっとな、と思ってためらっていた。

が、今回のことで全く汚れなく、家にある汚れを食べてくれるスーちゃんのすごさを改めて知ることになった。

そこで、僕は人目につかない範囲のお掃除を、家族が寝静まった後にやってもらうようスーちゃんに頼んだのだった。