軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

正誤判定

「佑馬、明日はゴミの日だから自分の部屋を掃除して朝にゴミ出しができるようにしておいてね」

晩御飯をモリモリ食べて、ごちそうさまを言って部屋に戻る。

そのときに、お母さんがそう言ってきた。

いつも、自分の部屋くらいは自分で掃除しなさいと言われている。

ただ、僕が掃除した後に部屋に入ってきて、まだできていないじゃないの、なんて言われたこともあり、それで喧嘩したこともある。

掃除ってめんどくさいよね。

掃除機でホコリを吸い取ってもすぐにまたホコリが出てくるんだし、やってもやっても終わりがない。

僕の家は一軒家だ。

部屋や廊下に段差があるのでロボット掃除機が使いにくいから、買わないとお母さんが言っていたことがある。

だけど、僕はいつも掃除を全部勝手にやってくれるロボットが欲しいと思っていた。

「……スーちゃんってこういうホコリとかゴミも食べる?」

全自動掃除ロボットが欲しいと思っていたところで、ふと気が付いた。

そういえば、今の僕にはダンジョンバーの包み紙やビニールの袋、それにお弁当のプラスチックの蓋すらも食べてしまう相棒がそばにいることに。

スライムのスーちゃんの大好物は僕の魔力だろうけれど、魔力のないものもなんでも食べてくれる。

であれば、ゴミも食べてくれるんじゃないだろうか?

最初はスーちゃんにゴミを食べさせるのはどうだろうと思っていたけど、本人……というか本スライム? が嫌がらないのであれば、積極的に食べてもらいたい。

……どうだろう。

……あれ?

スーちゃんが、動かない。

いつもならすぐに反応するのに。

僕の問いかけに、いつもすぐに肯定の合図でプルプルするスーちゃんだが、今は不思議と動きを止めたままだ。

ゴミはやっぱり嫌なんだろうか。

そう思ったが、どうやらちょっと様子が違う感じがする。

「あ、そうか。もしかしてゴミの定義がわからないって感じかな? 僕が許可したもの以外を食べたらダメだって言ったけど、ゴミがどれかわからないから何を食べていいか理解できないってこと?」

僕がそう聞くとスーちゃんがプルプルと動いて返事をする。

賢い。

僕が言ったことを守るだけじゃなく、別のお願いには定義があいまいだと感じて安請け合いしないのはかなり賢いスライムだと思う。

偉いぞ、スーちゃん。

「えっとね、ゴミっていうのはこういう床にあるホコリとか糸くずとかそういうのでね。……意外と説明が難しいな。まさか一つひとつを手に取ってどれがゴミでどれがゴミじゃないかを説明しなきゃいけない感じになるのか?」

僕にとってはゴミといえばゴミだ。

理屈抜きで理解できる。

だけど、それを言語化してスーちゃんに説明するのが思ったよりも難しかった。

床の上に散らばっているもの、なんて指定してもそれが正しいかどうかはわからない。

なぜなら床の上にあるものとして、例えばベッドや机、椅子なんかも含まれるからだ。

それらをゴミと認識されて食べられてしまったら大変だ。

そんな大きなものじゃなくても、本とかスマホなんかが食べられたらさすがに困る。

また、以前にこぼしたジュースの跡なんかも取れるなら取ってもらいたいけれど、床そのものを食べられても困るしな。

ゴミについての詳細な説明を僕がするのは難しい。

だが、僕にはごみの定義を正確に説明することができなくても、スーちゃんのおかげで解決した。

スーちゃんが何かを取り込んだら、一つひとつ僕に確認してきたのだ。

例えば、床の上にある椅子に体を引っ付けて食べる前に僕のほうを見てくる、……そんな意思が伝わってきた。

僕はそれを見て、いいよ、とかそれは駄目、とか判定する。

どうしてここまで意思が通じるんだろうか。

よくわからない。

が、通じているのは確かだと思う。

こうしてスーちゃんは僕の部屋のすべてのものを必ず一度は取り込んでいき、確認してきた。

その都度僕はゴミとしての正誤判定を行う。

その結果、いつも僕が自分で掃除するよりも圧倒的に部屋がきれいになった。

床には髪の毛ひとつ落ちておらず、しかもカベの上のほうにある段差に積もったホコリや窓の汚れすらもきれいになった。

床の上のシミどころか、壁や天井の壁紙の汚れまでもがきれいになり、天井のライトやエアコンの上部のふき取りにくいところにも一つもホコリがない。

あまりにきれいな部屋になり、まるで新しい部屋にでも引っ越ししたかのような錯覚さえ起こるくらいに見違えるほどになった部屋で、僕は気持ちよく勉強に取り組み、その後就寝することとなった。