軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

全身運動

「手で持って運ぶよりはいいけど、手押し車に土を載せすぎるのも駄目なんだな」

一輪の手押し車――通称、猫車に土嚢袋を積み、ダンジョンの外へ運ぶ。

これが想像以上に難しい。

土嚢袋一つであればそこまでではないのだけれど、土嚢袋を重ねるほど重量はマシ、同時に重心も高くなる。

当然、バランスは一気にシビアになる。

腕にずしりと重さが乗る。

少し気を抜けば、すぐにバランスを持っていかれる。

重くて重心の高い手押し車を押して移動しようとすると、すぐに左右へと大きく振られ、さっきも土嚢袋を床にぶちまけたばかりだ。

不幸中の幸いにも袋が破けたり、口がほどけて土がこぼれたりしなかったが、幸先はあまりよくない。

「……三袋くらいが限界かもな。やっぱり何回か往復するのは必要か。頑張ろう」

あまりに土嚢袋を載せすぎると失敗するということが分かったので、失敗しない量を見極めて乗せることにする。

それでも三袋。

かなり重く、バランスも崩れやすい。

一度でも大きく崩せば土の重みで支えきれなくなるので、バランスに注意しながら、慎重に押していく。

……これ、今までと違うところが筋肉痛になるかもな。

手押し車を押しているとそう感じた。

スコップで穴を掘り始めたときにも体は全身が筋肉痛になってしまった。

今は少し慣れて、筋肉痛も出にくくなっているが、重たい手押し車をバランスを崩さずに押して移動するというのは、スコップで穴を掘るのとはまた違った筋肉を使っているように感じる。

しかも、重さのあるものを支えながら移動し続けるために、体幹がしっかり使われている気がした。

これまで使っていなかった筋肉を酷使することになれば、新しい筋肉痛がくるのは間違いない。

だが、そう考えると逆に僕はうれしくなってしまった。

それは、見方を変えれば今まで鍛えられていなかったところをうまく鍛えられているということになるんじゃないだろうか。

スコップで穴掘りも十分に全身運動だと思うけれど、手押し車での重量物の運搬も別種の全身運動として、しっかり筋トレになっている。

これはこれで、悪くない。

金も稼げて、体も鍛えられる――一石二鳥だ。

なんだかんだで、僕もショート動画のイケメンムキムキお兄さんの影響を受けているのかもしれない。

筋肉痛になるかもしれない筋トレができる。

そう考えると大変な作業も意味のあるものに思えてくるからだ。

これは、いい運動になるだろうと確信を持ちながら、僕はその後手押し車を押しながらダンジョン内とギルド建物を何往復もして集めた土をお小遣いに変えた。