作品タイトル不明
オーバーフロー
「おおー。まじか。政府が認めているってことは、僕の仮説は妄想じゃなかったってことだよね。すごいな」
これまでは魔石はエネルギーとして見られることが多かった。
魔石から取り出せる魔力を動力に活用したり、あるいは魔石とダンジョンで採れる鉱物を使って魔導モーターを作ったり。
基本的には文明の利器を使うために、あるいは作るために使用するものというのが一般的なイメージだったと思う。
厳密にいえばもっといろんな活用法があっただろうし、研究もされていたはずだ。
だが、これまでは一切そんな情報がなかった地脈の存在とその乱れ、再生に魔石が使用できるというのだ。
ネット内の陰謀論好きな連中は、これは今まで政府がひた隠しにしてきたことだとか、あるいは政府がダンジョンから得られる利益のために人為的に地脈を乱れさせてきたんだとか、いろんなことを書き込んでいる。
流れ込んでくる情報を見ているだけだとなにが正しいのかわからなくなる。
ただ一つ言えることは、僕にはアースソナーがあり、地脈の存在とその影響はおそらく政府の見解が間違ってはいないだろうということだった。
陰謀論的な意見も面白いかもしれないが、現実問題として地脈は乱れ、壊れかけている。
これは魔石を活用すれば再生させられることも体験してきている。
だからこそ、気になる。
政府の発表の中でも、僕が全然知らなかった情報について。
寺社仏閣に魔石を捧げるとスキルが手に入る。
これは本当の話なんだろうか?
少なくとも僕はスキルなるものを手にしていない。
というか、手に入ったとしたらそれをすぐに自身で認識できるものなんだろうか?
頭の中でピンポーン! と音でもなって、「スキルを取得しました」みたいなアナウンスでも流れるとかでもしないとわからない気がするんだが。
気になったので、スキルについて情報を漁っていく。
といっても、インターネットで見つかる情報は、どれを信じていいのかわからない。
信憑性の薄い書き込みばかりで、真相は全く掴めなかった。
だが、もしかするとこれは関係あるのかもなというのがあった。
それは、現時点ではスキルを得られる寺社仏閣があるのは東京くらいじゃないのか? という意見だ。
その根拠が政府の存在だ。
日本政府が魔石を捧げて地脈を再生し、スタンピードを予防しようとしたときにまずどこの地域でそれをするかを考えると、絶対に東京一択だろうということ。
政治の中心だし、皇居もある。
人口も国内最大で、都市開発による地脈の乱れも最も大きいだろう。
東京を優先するというのは理解できる。
ダンジョンのない地方でそんなことをする意味はないしね。
なので、国は全国で集めた魔石を東京で使用した。
きっと東京にある各ダンジョンの近くの寺社仏閣で魔石を奉納したんだろう。
そして、その時に捧げた魔石が過剰だった、のかもしれない。
地脈が再生する以上にたくさんの魔力をそれらの寺社仏閣に捧げたことで、なんらかの不思議パワーが働いてスキルを得られるようになったのではないか。
僕はこれを見て、「ありえるかも」と感じた。
実際に、日本全国で 探索者(シーカー) が近所の神社などで魔石を捧げたけどなにもなかったという人と、なんか力が付いたかも、という人がいる。
そして、それは東京かそれ以外かで差があるみたいだ――そんなことを言う人もいる。
なるほど。
過剰なくらいに魔石を渡すのがいいのか。
確かに僕は自宅から行ける範囲で可能な限り地脈を再生させてきたけど、アースソナーを使いながらやっていたので「地脈が再生された」と感じたら別の場所へと移っていた。
オーバーフローするくらいにやらないとだめだったのか。
……試してみる価値はあるかもしれない。
あのお地蔵さんにでも魔石を捧げに行こうかな?
ネットサーフィンで調べられることを調べ切った僕は、そんなことを考えていた。