軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ダンジョンと魔力

宿題を終わらせた僕は、今日もダンジョンへやってきて穴を掘る。

これまでと同じように、ダンジョンの入り口から少し入ったモンスターの出ない場所で壁にスコップを突き立てる。

一応、これまでにいろいろと試しているが、ダンジョンの壁は「ここなら土が柔らかく掘りやすい」というような、はっきりした場所の違いはなさそうだった。

どこもだいたい同じような固さで、ザックザクと掘れるものではなく、体重をかけて少しずつ掘り進める感じになる。

なので、数時間頑張ってもあまり大きな穴にはならない。

が、それでも土嚢袋で一袋以上の土を回収しているのは間違いない。

だというのに――

昨日掘った穴は、きれいさっぱり消えている。

誰かが埋め戻したとか、そういうことではなく、僕が穴を掘る前の状態へと元通りになっている。

不思議だ。

ダンジョンというのはこういう不思議な場所なんだそうだ。

穴を掘っても一定時間が経過すると元の状態に戻るし、例えばダンジョン内で 索者(シーカー) がモンスターに負けたとき、その人の体や荷物はダンジョンに取り込まれてしまうという話もある。

そして、それが起こるのはダンジョンが外の世界とは違って、魔力が満ちているからだ、というのが理由だそうだ。

ダンジョン内には魔力があり、モンスターなんかはその魔力を餌に動き回っているんじゃないかとダンジョン研究者たちはそう言っているらしい。

そして、その魔力は人間にも影響を及ぼす。

ダンジョンに入り活動する 探索者(シーカー) も人によって程度の違いはあれども魔力を使えるのだそうだ。

というか、そうじゃないと人を襲ってくるモンスターと戦えないと思う。

ダンジョン内で魔力を使って体を強化し、その力でモンスターと戦い、戦利品を得るのが 探索者(シーカー) なのだ。

つまり、人は魔力を使えば現実にはできないような超人的なこともできるようになる可能性があるということ。

で、そこに目を付けた人がいる。

それは、僕がよく見るショート動画のイケメンムキムキお兄さんを含めた筋トレ界隈の人たちだ。

筋トレ界隈の中で最近ひそかなブームになっているダンジョンバー。

そして、そのダンジョンバーを最も有効活用する方法が、ダンジョン内で筋トレするというやり方だそうだ。

ダンジョンに入り、なんとかして魔力を使えるようになれれば、ダンジョン内で外よりも力を発揮できるようになる。

それはあくまでもダンジョンの中でのことに限るのだけれど、人間の体というのは、一度でも経験したことは、まったく経験していない状態とは別物になるらしい。

つまり、筋トレ界隈ではダンジョンに入り、魔力を感じながらそれを使って肉体を強化し筋トレすることで、自身が持つ筋肉に「本当はこれくらい力を出せるのが当たり前なんだぞ」と錯覚させる手法が広がっているのだそうだ。

勘違いであっても筋肉ができると思えば、それはダンジョン外でもできる可能性があり、実際にその効果があるらしいとのこと。

まあ、要するに、僕はそのショート動画を見てこう思ったわけだ。

魔力を使って肉体強化をしてみたい、と。

そんなわけで、今日の僕はスコップで穴を掘りながら、魔力とやらを、どうにかして感じ取れないかを考えながら体を動かし続けた。